第4話「見えない鎖」
砂と風の荒野を抜けた先に──
ひとつの小さな村があった。
どこか違和感がある。
だが、近づくにつれて胸にざわつきが生まれる。
村人たちは、みなうつむき、
まるで生気を吸い取られたかのような顔をしていた。
子供たちでさえ、楽しそうに遊ぶ姿はない。
(ここは……何かがおかしい)
村の中央広場。
俺は、異様な光景を目にした。
──村人全員の手首に、薄く光る銀の鎖。
それはまるで、
目に見えない呪いのように、彼らを縛りつけていた。
「ようこそ……"鎖村"へ」
声をかけてきたのは、
疲れ切った目をした中年の男だった。
男は、ぽつりぽつりと語った。
村は、王国公認の「取り立てギルド」に支配されている。
初期融資→高額利子→永続的な支払いループ。
さらに、生活必需品も「ギルド契約」で定額引き落とされる仕組み。
村の誰も、疑問を持つことすらできない。
「……借りた金は返すもんだ。
そう刷り込まれてんだよ、俺たちは」
男の声は、乾いた砂みたいに虚ろだった。
俺は、拳を握った。
(違う……こんなの、違う!!)
「やれやれ、まだわかってないな、若者よ」
ふいに、軽やかな声が降ってきた。
振り向くと、金色に輝くカーペットに乗った、
白ローブの男──バリ師匠が、そこにいた。
「見えるか、リベル・アーツ」
バリ師匠は、村人たちの銀の鎖を指差した。
「これは単なる物理的な束縛ではない。
"思考"を縛るものだ」
バリ師匠は、静かに続けた。
「彼らはな、自らの意思で"奴隷"になったんだ。
無意識に、楽な道を選び、思考を止め、与えられるものだけで満足することに慣れた」
俺は、息を呑んだ。
(無意識に、縛られている……?)
バリ師匠は、俺の目を真っ直ぐに見つめた。
「だからこそ、お前に与えた"力"が必要なのだ」
ふわりと、師匠の手の中に五つの光球が現れる。
貯める力
稼ぐ力
増やす力
守る力
使う力
「まずは最初の力──貯める力だ」
バリ師匠は言う。
「貯めるとは、単に金をケチることではない。
"無駄を見抜き、排除し、己の力を蓄える"ことだ」
俺は、思わず拳を握った。
(無駄……俺に、それを見抜けるだろうか)
バリ師匠はにやりと笑った。
「心配するな。お前には既に芽がある。
あとは、行動あるのみだ」
師匠が指を鳴らすと、空中に無数の紙が舞った。
──それは、村人たちの借金契約書だった。
「まずは、これらを読み解け。
"鎖"を見抜く目を鍛えろ、リベル・アーツ!」
俺は、真剣な目で契約書を手に取った。
(自由を掴むために──
俺は、この村の"見えない鎖"を断ち切ってみせる!!)
ここから、俺の修行が始まる──!!
【To be continued...】