第34話「リッチナーン都市の誘惑」
──新たな旅の朝。
静かな陽の光が街道を照らす中、
リベル・アーツ一行は、広い石畳の道を進んでいた。
今回の旅から、ティアが加わった。
「村も落ち着いてきたし、一度、世間を見てみたくてさ」
「リベルさん。もしよかったら、俺も旅についていっていいかな?」
マネフエル村の修理屋として成功を収めたティアは、
仲間を雇って店を任せられるようになり、
次の一歩を求めて旅立つ決意を固めていた。
「もちろんだ。自由はまだ、広がりきってない」
「一緒に行こう」
リベルはそう言って笑った。
──数日後。
彼らがたどり着いたのは、
金と夢が渦巻く都市──リッチナーン。
広場には、煌びやかな魔導スクリーンが浮かび、
不思議な耳の長いキャラクターが大写しになっていた。
『ようこそ、夢の投資世界へ!』
『"もらえるだけで増える"!魔導配当システム、ついに開放!!』
『月利10%保証!?やらない理由、ありますか?』
「え……これ、マジなのか?」
ティオが食い入るように見つめていた。
ハルクも腕を組みながら、「いかにも怪しいな」と唸る。
だが群衆は大興奮。
ざわめきの中、中央ステージに現れたのは──
スーツをピッチリと着こなした、
耳の長い陽気な男だった。
目元にきらりと輝く宝石のモノクル。
手には“夢”と書かれた魔導書。
「みなさま〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
「ご存知!!夢と希望の跳ねる商会ッ!!!」
「**モラウサギ商会ッ!!**代表の!!」
「**ラビット・ポンジ!!!ですッ!!!!✨✨✨✨」
ドォォォォォン!!
爆音の魔導スピーカーとともに、
頭上には金色の花火が上がった。
「さあ、みなさんッ!!」
「月利10%の“魔導配当”で、あなたの資産が勝手に育つ!!」
「紹介すれば、紹介料も!ボーナスも!夢のリターンが止まらない!!」
ミーナが、絶句していた。
「……これ、完全に“配当で釣ってる”構造じゃない?」
リベルは、静かに言った。
「“仕組み”じゃなくて、“希望”で縛る投資だ。
これは投資じゃない。幻想だよ。」
その時、広場の隅で
うずくまっている若者の姿が目に入った。
「……騙された……全部……」
リベルが駆け寄ると、
青年は震える手で破れた書類を差し出した。
“魔導利回り保証契約書──支払未着”
「……オレたちは、まだ自由の旅の途中だ」
リベルは拳を握った。
「この都市で、“本物の増やす力”を伝える。
仕組みで増やす。時間で育てる。
地味だけど、確実な力を──」
こうして、
幻想の都市に現れた“地味な旅人たち”が、
静かに、新しい波を起こし始めた──。
【To be continued...】




