小話編「天国に一番近い場所──天領区との出会い」
──ホケマクリ村を離れて数日後。
俺たち、リベル・アーツ一行は、
旅の途中、
バリ師匠から、ある通行手形を渡された。
「お前たちにこれを授けよう!
これは、これから進む道の到達点と言っても居場所だ。」
バリ師匠から受け取ったのは、
天国に一番近い場所──天領区の通行手形。
「見てくるがいい、自由とは何かを!」
そう言い残して、バリ師匠は空高く消えていった…。
そして、
数週間かけて目的の場所にたどり着いた。
そこは、青く澄んだ空。
暖かい風。
笑顔あふれる人々。
まるで──
天国にでも来たかのような場所だった。
「ここが……天領区か」
俺は、しみじみと呟いた。
聞けば、天領区は、
「天国に一番近い場所」と呼ばれており。
人々は、みなお金に困らず、
自由に、楽しく、心豊かに暮らしている。
(──どうして、こんな場所が成り立つんだ?)
興味を抱いた俺たちは、村の中心へ向かった。
そこに、いた。
豪快に笑いながら、
小さな子供たちにコインの使い方を教えている、大柄な男。
髪は金色、瞳は鋭く、
でもどこか優しさに満ちている。
男は、
俺たちに気づくと、ニカッと笑った。
「おお、見ん顔やなぁ!旅のもんかいな!」
その関西弁に、俺たちは一瞬きょとんとした。
ハルクが小声で呟く。
「なんか、リラックスできる声やな……」
男は、親しげに手を差し出した。
「ワイは、リョウガや!
この天領区の区長さんやで!」
俺は、しっかりと手を握った。
「リベル・アーツです。……自由を探して、旅してます」
リョウガ区長は、
ニヤリと笑った。
「自由か……ええ言葉やな」
その後、リョウガ区長は、
広場のベンチに座りながら、
俺たちに天領区の秘密を教えてくれた。
天領区では、まず貯める力を全員が徹底的に身につけた
無駄な保険、ローン、固定費は徹底排除
さらに、稼ぐ力、増やす力、守る力、使う力──
5つすべてを地道に育てた
だから、
誰もお金に縛られることなく、
"自由な人生"を当たり前に楽しめるようになったのだと。
「──せやからな」
リョウガ区長は、目を細めて言った。
「この天領区、奇跡なんかやない。
地味ぃ〜〜な努力と、賢い選択の積み重ねの結果や」
「奇跡は、待つもんやない。
自分で掴むもんやで、リベルくん」
俺は、胸に刻んだ。
(──俺も、そんな場所を作りたい)
(自由を、本当に育てる世界を──)
立ち上がったリョウガ区長は、
俺たちに向かってニカッと笑い、こう言った。
「せやからこそ、忘れたらあかんで」
「──今日がいちばん若い日や!」
その言葉に、
俺たちは、思わず笑った。
そして、
再び新たな自由の種を蒔くため、
旅路へと踏み出した。
【To be continued…】