第174話 「人生に、学び直しは遅すぎない──簿記3級、はじめます」
──収支の記録をはじめ、帳簿月報を作った健太郎。
だが、数字を眺める中で、ある“もどかしさ”が湧き上がっていた。
(……これで本当に、オレ、ちゃんと理解できてるのか?)
クラウドワークスの収入。
Kindleの印税。
メルカリの売上。
Kyashの支払い履歴。
すべてマネーフォワードに連携し、数字は“見える化”されている。
だが、「仕訳」や「勘定科目」といった言葉の意味が、まだ曖昧だった。
(稼げるようになるほど、“わからないこと”が怖くなるんだな……)
◆
そんなある夜、リベシティの動画を見ていると、
“簿記3級のすすめ”というタイトルが目に入った。
「個人事業主にとって、簿記は“武器”になる」
「お金の流れを“理解できる言葉”にするのが簿記です」
「税理士に丸投げするにしても、最低限の理解は必要」
──その言葉が、胸に刺さった。
(そうだ。オレ、わかった“フリ”してただけだった)
自己投資は、“未来の自分への仕送り”だ──と、誰かが言っていた。
◆
健太郎は、書店へ向かい、
「スッキリわかる 日商簿記3級」のテキストと問題集を購入した。
そして、ノートにこう記した。
『リベシティ式・5つの力に「学ぶ力」を加える。
知らないことを放置せず、学び直すのが“大人の自由”だ。』
勉強は、簡単ではなかった。
「資産」「負債」「費用」「収益」──
見慣れない言葉が並び、最初は混乱の連続。
だが、Kindle出版やクラウドワークスで得た収入を
“売上”として仕訳してみると、ぐっと現実味が増した。
(あ、これってあの報酬だ。じゃあ、必要経費は“費用”になるんだ……!)
仕訳が“自分の人生”に結びついた瞬間だった。
◆
朝、ライティング。
昼、案件チェック。
夜、簿記の勉強。
そんな一日を過ごしながら、健太郎はふと思った。
「なんか、学生に戻ったみたいだな……でも、
今は“自分のために”勉強してるんだな」
大学受験のためでも、就職のためでもない。
“自分の生き方”のために、学び直している。
それが、不思議と誇らしかった。
◆
翌週、健太郎は「簿記3級ネット試験」の申込みを完了した。
試験日は、ちょうど1ヶ月後。
受験料は2,850円──今のオレには“意味ある投資”だ。
ノートに、こう記した。
『収入を得る力は、学ぶことで本物になる。
逃げずに数字と向き合う。その覚悟が、自由へのレールになる。』
健太郎は今日も、コツコツと前に進んでいる。