第173話 「脱・素人フリーランス。お金の管理と税金の話」
──それは、あるメッセージから始まった。
「これ、報酬合計が10万円超えてますけど、源泉徴収どうされてますか?」
──クラウドワークス上で受けた、クライアントからの質問だった。
(げっ……そうか、税金……)
副業を始めてからここまで、
「稼ぐこと」ばかりに集中していた健太郎は、
報酬明細や所得区分のことを、正直ほとんど気にしていなかった。
◆
その夜、健太郎はノートを開いた。
「脱・素人」へと進むには、“学び直し”が必要だ──そう痛感した。
検索窓に打ち込んだのは、
「フリーランス 確定申告 初めて」
「クラウドワークス 税金」
「雑所得 事業所得 違い」
次々と出てくる専門用語に、やや頭を抱えながらも、整理していく。
【ポイント整理】
・クラウドワークスの報酬は、基本「源泉徴収なし」
・副業収入が年間20万円を超えると、確定申告が必要
・支出(経費)を計上すれば、課税対象額を抑えられる
・帳簿づけをするなら、「開業届」と「青色申告承認申請書」も検討
(つまり……オレ、“フリーランス扱い”になる可能性あるんだ)
これまでの“副業”は、趣味の延長のように感じていた。
だが、報酬が10万円を超え、継続案件も増えている今──
“事業”として向き合わなければならない時期が来ていた。
◆
健太郎は、マネーフォワード MEで毎月の収支を記録しつつ、
「マネーフォワード クラウド確定申告」の無料プランも使い始めた。
Kyashアプリと連携させた収支データ、
メルカリの売上履歴、
Kindleの印税収入──
それらを「収入」として整理し、
Wi-Fi代やノートPC、取材用に使った書籍などを「経費」として分けていく。
(今までバラバラだったお金の流れが、一本に繋がっていく……)
◆
週末、健太郎はリベシティの「お金の大学・フリーランス編」を読み返した。
「事業所得として認められるには、継続性と計画性が必要です。
毎月の収支を記録し、帳簿に残すこと。これが“本気”の証です」
──なるほど。
稼ぎ方だけじゃなく、「残し方」「納め方」まで考えて、はじめて“独立”なんだ。
健太郎は、ノートにこう記した。
『副業は、稼いだ瞬間から“事業”になる。
書くだけじゃない。“数字と向き合う力”が、自由を加速させる。』
◆
月末。健太郎は、初めて「帳簿月報」を作成した。
・収入:78,500円
・経費:24,300円
・純利益:54,200円
税金の申告にはまだ早いが、
“数字として結果を残す”初めての一歩だった。
パソコンの画面を閉じると、
いつものようにノートに手を伸ばす。
『金を稼ぐことと、金を管理することは別物。
どちらも、“自由”には必要不可欠な力だ。』
健太郎は、今日も一歩、現実の自由に近づいていく。
【次回予告】
健太郎が“お金の流れ”に本気で向き合うため、
「日商簿記3級」に挑戦することを決意する物語です。
次回:「人生に、学び直しは遅すぎない──簿記3級、はじめます」