第172話 「初めての“チーム戦”。協業は成長のブースターになるか?」
──「よかったら、チームでやってみませんか?」
その一言は、何気ないZoom通話の終盤だった。
声をかけてきたのは、編集歴5年のアラサー男性・リュウジさん。
現在は副業ライターを束ねて、クライアントとやり取りする“ディレクター”として活動しているという。
「ひとつ、Webメディアの案件があって。
初心者向け金融系の記事で、チーム組んでやってるんです」
──メンバー構成はこんな感じだった。
・構成担当:ベテラン主婦ライター(構成力と読者目線に定評あり)
・執筆担当:2〜3名の初心者〜中堅ライター
・校正・入稿:リュウジさん(責任編集)
健太郎は、その「執筆枠」として誘われた。
◆
(やってみよう)
即答だった。
これまで、ひとりで抱え込んでいた“孤独”も、
たった数人の“チーム”に入ることで一気に変わる気がした。
案件テーマは「家計改善シリーズ」。
健太郎が今まで体験してきたこと──
通信費の見直し、保険の削減、生活防衛資金、家計簿アプリ、Kyash運用。
「それ、まさにウチの読者層が知りたいやつですよ」
リュウジさんは目を輝かせていた。
◆
健太郎は、与えられたテーマで記事を書く前に、
“構成案”という新たな壁にぶち当たった。
今まで、なんとなく「書きたいように書いて」いた。
だがチーム戦では、読者目線、導線設計、見出しの配置──
すべてが計算された“設計図”としての構成が求められる。
「構成の意図がズレると、執筆後に全部修正になっちゃうので……」
編集者の言葉が、プロの現場を物語っていた。
だが、健太郎は気づいた。
(これ、Kindleで学んだ“読ませる技術”と似てる)
・最初に興味を引く冒頭を書く
・読者の“知りたいこと”に寄り添って展開する
・最終的には「読んでよかった」と思わせる着地をする
それは、まさに“伝える技術”の実践だった。
◆
数日後、構成案がOKをもらい、執筆フェーズへ。
自分の得意分野──「家計簿アプリの使い方と運用事例」という記事。
執筆後、校正チームから返ってきたフィードバックには、
丁寧なコメントが並んでいた。
「実体験がリアルで良かったです!」
「文末の表現をいくつか統一しておきました」
「“Kyash”の説明に最新情報を加えておきました!」
(ああ……これが“チームで作る”ってことか)
ひとりでは気づけない。
だけど、誰かと組めば、もっと良くなる。
健太郎は、Slackでこんな感謝の言葉を残した。
『はじめての協業で、学びばかりでした。
皆さんと一緒に仕事ができて、本当に良かったです!』
その投稿には、すぐに4件の「スタンプ」と「ありがとう」の返信が返ってきた。
◆
夜。PCを閉じた健太郎は、深呼吸した。
会社員時代には決して味わえなかった、“誰かと支え合って進む”という感覚。
ノートに、こう記した。
『副業の世界にも、“チーム”はある。
個人で稼ぐ力の延長に、“共に作る”という喜びがある。』
クラウドワークスというプラットフォームを通じて、
健太郎は少しずつ“リアルな稼ぎ方”の奥行きを掴み始めていた。
【次回予告】
チーム案件も増え、報酬も少しずつ安定。
だが──「確定申告?経費?……どうすれば?」
次回:「脱・素人フリーランス。お金の管理と税金の話」