第18話「ホケマクリ村へようこそ──安心地獄の村」
──ヘルマネ村を後にして数日後。
ミーナとハルクがどうしても俺の旅に
同行したいと言い出し、俺も根負けし
俺の旅も賑やかになっていた。
そして、
俺たち、リベル・アーツ一行は、
次なる目的地へと歩を進めていた。
そこは、
ホケマクリ村。
名前だけ聞くと、のんびりした田舎村かと思いきや──
実態は、地獄だった。
村に一歩足を踏み入れた瞬間、
空気が違った。
妙に静か。
そして、何か……重い。
「……リベルさん、なんか変じゃない?」
ミーナが、ひそひそと俺に囁く。
「うん……確かに、何か、こう……」
ハルクが続けた。
「全員、ビクビクしてね?」
俺たちは、警戒しながら村の中心へ向かった。
そして、広場に到着した時、目に飛び込んできたのは──
村中に貼り出された、無数のポスターだった。
【未来を守るため、今すぐ保険加入!】
【死亡保険、入院保険、タブ石保険、タブ石故障保険、タブ石故障時入院保険】
【マギキャリッジ破損保険+盗難保険+使用不能時安心サポート保険】
「……なにこれ」
ミーナが、絶句する。
ハルクも、タブ石を持ったまま呆然とした。
「どんだけ保険かけてんだよ!!」
俺は、ため息をつきながら呟いた。
「ここは──
保険をかけまくりすぎて、逆に生活が破綻した村だ」
聞けば、ホケマクリ村では──
赤ん坊にまで入院保険を三重掛け
家畜にまで「損害補償保険」
さらには「雨の日に滑って転んだ時専用保険」まで存在するという
(……いや、もう呆れるしかない)
当然、月々の保険料は、村人の収入の半分以上を食い潰していた。
それでも村人たちは、
「万が一に備えなきゃ……」
「安心が何より大事だ……」
と、
保険を掛け続けることを"美徳"だと思い込んでいた。
「こりゃ……
ヘルマネ村より、根が深いな」
ハルクがぼそっと呟いた。
俺も頷く。
(──ただ支出を減らすだけじゃない)
(ここでは、"安心依存"という
もっと厄介な"心の鎖"を断ち切らなきゃならない)
その時だった。
遠くから、
どす黒いローブをまとった男たちが現れた。
「ようこそ……ホケマクリ村へ……」
ひときわ異様な笑みを浮かべる、
一人の初老の男が歩み寄ってきた。
「私は、保険総合ギルド・ホケマクリ支部長──"ホケヤ"だ」
ホケヤは、にこりと笑いながら、
俺たちに分厚い契約書の束を突きつけた。
「新入りさんにも、安心を。
──さぁ、まずは"人生フルカバーセット"にサインを」
俺たち、リベル・アーツ一行は──
思わず、声を揃えた。
「いや、絶対入らねぇから!!!」
広場に、乾いた風が吹き抜けた。
【To be continued...】