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第167話 「文字単価0.03円でも、オレには価値があった」

──翌朝。

クラウドワークスの通知が、スマホに届いていた。


 


【まちだ様からメッセージが届いています】

【「ご提案ありがとうございます!お願いできますでしょうか?」】


 


目が覚めるより早く、心が跳ねた。


(──採用された……!?)


 


提案した案件。

テーマは「退職後、生活防衛資金で暮らしたリアルな話」。

報酬は、3000文字でたったの100円。

文字単価にして0.03円──“副業の現実”をまざまざと突きつけられる金額。


 


でも、健太郎は思った。


「評価されないより、安くても“必要とされた”ほうがずっといい」


 



 


早速、記事の執筆に取りかかる。


PCの前に座り、あの日々をなぞるように、言葉をつむいでいく。


──退職届を出した日の不安

──口座残高を見て震えた夜

──固定費を削り、生活防衛資金でなんとか1ヶ月しのいだこと

──その中でも“気づき”や“反省”があったこと


 


「誰かが、これを読んで“安心”してくれたらいい」


ただそれだけを想いながら、丁寧に綴った。


途中、何度も校正し、読み返し、構成を整え──


納品ボタンを押した瞬間、深く息を吐いた。


 


(……これが、“仕事”か)


 


 



 


数時間後、クライアントから返信が届く。


「とても読みやすく、リアリティのある内容でした。

初心者の方とは思えません。またお願いしたいです!」


 


──さらに、評価欄には:


【★★★★★】

【納期:迅速/品質:高い/対応:丁寧】


 


たった1件。

たった100円。


でも、健太郎の心は熱くなっていた。


 


(誰かが、オレの言葉に価値を感じてくれた)


それが、どれだけ嬉しいか──

会社では、数字でしか評価されなかった。

上司に褒められることもなかった。


 


けれど今は、知らない誰かが“評価”をくれた。

仕事として、自分の言葉に「報酬」と「信頼」がついた。


 



 


その夜、健太郎はノートに記す。


『自分の中の経験が、誰かの役に立った。

安くても、最初の一歩が“心の火”になる。

たった100円で、オレはもう一度、社会とつながった気がした。』


 


そして、ふと口角が上がった。


「100円って、すごいんだな……」


 


会社で100円稼ぐのと、

“個人で100円稼ぐ”のは、まったく違う意味を持っていた。

【次回予告】


「安い案件ばかりやってたら、時間が足りなくなる」──

単価を上げるには、何が必要なのか?健太郎、単価アップの壁にぶつかる。


次回:「“稼げるライター”は何が違う? 単価交渉とポートフォリオの話」

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