第166話 「副業って、みんなそんな簡単に稼げるの?──クラウドワークス、初潜入」
「──やるしかないだろ」
Kindleの出版を終えた健太郎は、ノートPCの前でつぶやいた。
本を1冊売った。レビューももらった。
けれど、印税はたったの175円。
「言葉」でお金が生まれることは証明できた。
でも、生活を立て直すには──当然ながら、もっと稼ぐ必要がある。
◆
『初心者 副業 スキルなし』
Googleで検索すると、真っ先に出てきたのが──
クラウドワークス
(聞いたことはあったけど、なんか“プロ用”ってイメージあったんだよな……)
しかし、実際に覗いてみると、意外と敷居は高くなかった。
「未経験歓迎」
「初心者OK」
「簡単作業」
──そんな言葉が、並んでいた。
(これなら、オレにもできるかもしれない)
健太郎は登録ボタンをクリックした。
◆
プロフィールを記入する。
自己紹介を考える。
過去の実績? ない。資格? 特になし。
でも、書いた。
「現在、フリーで活動中。会社員経験10年で、誠実な対応を心がけています。
ブログ執筆経験あり。リサーチ系や文章作成に意欲的です!」
応募できそうな案件を探してみる。
「体験談募集」「ブログ記事作成」「文字起こし」──
どれも一見簡単そうに見えるが、単価は安い。
「1000文字で300円」「3000文字で500円」「1記事500円×5本セット」
(……思ってたより、だいぶ安いな)
ふと、心の中に“現実”が湧いてきた。
──こんなんで、本当に稼げるのか?
──時間かけても数百円じゃ、割に合わないのでは?
──そもそも、オレなんかに仕事来るのか?
◆
それでも、応募してみた。
案件:ブログ記事作成(体験談形式)
テーマ:「退職から3ヶ月、生活防衛資金で乗り越えたリアル」
──これなら書ける。まさに、今のオレじゃないか。
提案文を書く手が震える。
「このテーマなら誰よりもリアルに書けます」
「記事の構成や誤字脱字には細心の注意を払います」
「読者目線を意識し、読みやすさを大切にします」
送信ボタンを押す瞬間、呼吸が浅くなった。
(……頼む、通ってくれ)
◆
その日は、他にも2件応募して就寝。
布団の中、天井を見上げながら、健太郎は思った。
(副業って、思ってたより“現場感”あるな……)
派手さもキラキラもない。
でも、確実にここは「戦場」だ。
そして、心の奥でひとつだけ確信していた。
「やれるかどうか」は、行動した者にしかわからない。
──副業、始まった。
【次回予告】
「採用通知」?「お祈りメール」?
副業市場は、甘くない。それでも健太郎は──
次回:「文字単価0.03円でも、オレには価値があった」