第166話 「ありがとうの値段は500円。でも、それ以上に温かかった。」
──1本の柱は、強そうに見えて、案外もろい。
ココナラで得た“たった500円の初収益”。
けれど、その1件が健太郎の中の何かを大きく動かした。
(オレ、ちゃんとお金を生み出せるんだ)
けれど同時に、気づく。
「このままじゃ、生活費には遠く及ばない」
だから健太郎は、考えた。
──柱を増やす。
◆
異世界・リベシティ建国期。
最初は農業と交易の2本の柱だった。
だがある時、干ばつが起き、作物が全滅。
そのとき救ったのは、「文字教室」という副収入事業だった。
“ひとつがダメでも、別の収益があれば倒れない”
それを、あの世界で身をもって学んだ。
だから現実でも、オレは“複業”を育てていく。
◆健太郎の収益プラン:3本の柱
① ココナラ(スキル販売)
→ 実績を積み上げて信頼を得る
② ブログ(広告・アフィリエイト)
→ ブログ経由でマネー系サービスの紹介収益を目指す
③ Kindle電子書籍(知識の体系化)
→ 経験を言語化して「知識の資産」に変える
「一撃で大金を狙うんじゃない。
毎月1,000円、5,000円、1万円……それを、3本、4本って育てていく」
健太郎は、Canvaでブログ用のアイキャッチを作り、
アフィリエイト用のリンクをひとつずつ整えていった。
また、ブログの人気記事「退職前にやっておくべき5つのこと」をベースに、
Kindle用原稿の構成も書き始める。
最初はたった1ページ。
でもそれが、未来の“収益の芽”になる。
ココナラでは、またひとつ依頼が入った。
今度は「節約術について相談したい」という内容だった。
オレはまだ、何者でもない。
けど、“必要としてくれる人”がいる限り、やる意味はある。
◆
その夜、ノートにこう書いた。
『一本足では倒れる。でも、三本足なら立てる。
収益は木じゃない。畑だ。
オレは今、未来の“実り”を育てている』
自由とは、偶然の産物ではない。
選択と、継続と、複数の柱から成り立つ“意志の構造”だ。
──たった500円の売上。
でも、その“通知”は何より強い証拠だった。
健太郎は、ココナラとブログの管理画面を交互に眺めながら、何度もうなずいていた。
アクセス数:24PV。
ブログ収益:0円。
ココナラ依頼:2件、評価★5。
「……うん。まだ小さい。
でも、たしかに“オレの価値”が誰かに届いたってことだ」
それは異世界で、初めて野営に必要な道具を作って
「助かった!」と笑顔を向けられた日のことを思い出す。
価値とは、誰かの問題を少しだけ軽くすること。
それが、お金という“形”になって返ってくる。
◆
健太郎は、数字とにらめっこを始めた。
マネーフォワードの「副業」カテゴリの収支グラフ。
Googleアナリティクスのブログ流入元と滞在時間。
ココナラでのユーザーの検索キーワード。
「なるほど……“退職 不安”ってワードが多いんだな」
アクセスは少なくても、見られているページに傾向はある。
■人気記事:
「会社を辞める前に知っておくべき5つの資金準備」
「格安SIMと保険で月2万円浮かせた話」
「よし、この記事を軸に、“改善”していこう」
タイトルを少し変え、見出しに数字を入れ、
記事の最下部に「ココナラ相談リンク」と「関連ブログ」への導線を追加。
さらに、電子書籍の草稿も進めた。
副業や節約をテーマにしたKindle出版のプロトタイプ。
たった20ページの冊子でも、形式を整えれば立派な一冊。
「見せ方を整えるだけで、価値は届きやすくなる。
異世界でも、“看板と名前”で村人の信頼が上がったもんな……」
◆
その夜。ブログに再度アクセスすると、通知が1件。
【お問い合わせフォームより連絡が届きました】
内容は、こうだった。
「ブログ、すごく参考になりました。
私も退職を考えていて、今すごく心細かったんですが……
前に進めそうな気がします。」
その文章を読んだ瞬間、健太郎は静かにスマホを伏せた。
売上じゃない。
収益でもない。
“価値の証拠”が、今ここに届いたんだ。
◆
ノートに、今日の気づきをこう記す。
『数字はウソをつかない。けれど、数字だけじゃ見えないものがある。
誰かのために書いた文章が、その人の未来に灯をともすこともある。
オレは、数字と心の両方を信じて、価値を育てていく。』
たった500円の価値を、
1,000円に。
そして、誰かの未来に変えていく。
【次回予告】
いよいよKindle出版、完成間近!
“自分の経験を体系化して届ける”という武器が整っていく──
次回:「20ページの本が、オレの人生を語り出す──Kindle出版、始動」