第164話 :小さな副業が、人生を変える。稼ぐ力、始動!
──準備は整った。
支出は見直した。
無駄を削り、生活防衛資金の防壁を築いた。
“騙されない力”も装備した。
次に必要なのは──攻めの一手。
健太郎は、パソコンの前で腕を組んだ。
「稼ぐ力、始動──だな」
◆
異世界・リベシティ建国当初。
資源も人手もない中、最初に手をつけたのは“価値の交換”だった。
余った食材をレシピに変え、
磨いた技術を“仕組み”に変えた。
現実でも同じだ。
まずは、“自分の持っているもので稼ぐ”ところから始める。
健太郎はノートを開き、「副業アイデア」を書き出した。
ブログ(雑記・体験談・お金の話)
電子書籍出版(Kindle)
イラスト・デザイン販売(Canva活用)
ライティング案件
スキル販売
動画編集(カット・字幕レベル)
どれも、大金は稼げない。
だが重要なのは、“ゼロを壊す”ことだった。
「まずは……ブログか」
◆
無料ブログを開設し、テンプレートを整える。
タイトルはまだ決まっていない。
けど、健太郎は迷わず1本目の記事を書き始めた。
テーマは「会社を辞める前にやっておくべき5つのこと」。
実体験からくる言葉は、スラスラと出てきた。
失業保険、生活防衛資金、固定費見直し、家計簿アプリ、キャッシュレス管理──
今の自分が通ってきた道だからこそ、伝えたいことがあった。
公開ボタンを押す手は、少し震えていた。
だがその指先に、確かな“熱”が宿っていた。
「たった1円でも、オレが稼げたら──それは、会社員時代のオレを超えたってことになる」
その夜、ブログにアクセスはなかった。
収益はもちろん、ゼロ。
けれど、健太郎の心の中には確かに何かが灯っていた。
◆
ノートのページに、こう記す。
『副業とは、未来に投げた“信号弾”だ。
誰かに届くかはわからない。けれど、自分に届かせることはできる。
稼ぐ力──それは、“希望を諦めない力”のことかもしれない。』
“ゼロを超える”ための一歩が、確かに踏み出された。
──収入がゼロでも、“稼ぐ感覚”は手に入る。
ブログを始めた日の翌朝。
健太郎はふと部屋を見渡して、思った。
(……この部屋、意外と“死蔵資産”多いな)
読み終えたビジネス書、全然使わないスマホスタンド、
買ったけど合わなかったワイヤレスイヤホン、
もう何年も着ていないジャケット──
「これ全部、タンスの肥やしじゃなくて、資源じゃん」
そう気づいた瞬間、健太郎の指が自然にスマホを開いていた。
アプリ名:メルカリ。
◆
まずは、本を5冊セットにして出品。
タイトルと内容を簡潔にまとめ、価格を1,800円に設定。
次に、イヤホンを丁寧に拭いて箱に戻し、
動作確認済みと明記して2,500円で出品。
服は撮影のためにハンガーにかけ、自然光の当たる窓際で写真を撮った。
「こういうの、異世界じゃ“交易準備”って言ってたな……」
そして出品後、数時間。
通知音が鳴った。
【商品が売れました】
「っ……!」
画面には、「ワイヤレスイヤホン/売上2,500円」の文字。
たった1件の売上。
されど、それは確かに──オレが生んだ“お金”だった。
◆
健太郎は、梱包用に100均でプチプチと封筒を購入。
コンビニで発送手続きを済ませた帰り道、ふと笑みが漏れた。
「稼ぐって、こういうことか」
別に大金じゃない。
けれど、これは“会社以外から得た、自分の力で得たお金”。
それが何より嬉しかった。
その夜、マネーフォワードにメルカリの売上を反映。
「臨時収入:2,500円」の文字が表示される。
たったそれだけのことなのに、心が少し軽くなる。
健太郎は、ノートにこう記した。
『モノを売るとは、未来を整理することでもある。
過去に使った金が、今の自分を助ける。
そして、オレが自分の力で“お金を動かした”という実感が、なによりの収穫だった。』
次は、本棚だ。
その次は、押し入れ。
きっとまだ、“埋蔵金”はそこら中に眠っている。
◆
こうして健太郎は、**副業への最初の一歩=“お金を自分で生む感覚”**を体に刻み込んだ。
それはきっと、異世界で“薬草を売った”あの瞬間にも似ていた。
──次は、もっと大きく稼げる何かを探す番だ。
 




