第163話:だまされない力。それが、自由の最後の砦
──通知が来たのは、ある平日の午後だった。
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スマホに表示されたそのDMに、健太郎は反射的に眉をしかめた。
「……いや、怪しすぎるやろ」
けれど──
退職して収入が絶たれた今、“稼ぐ力”を手に入れたいという焦りが心のどこかにあるのも、また事実だった。
「オレ、昔のオレだったら……こういうの、踏み込んでたかもな」
一瞬でもそう思った時点で、危うい。
だからこそ、守る力が必要なのだ。
◆
異世界・リベシティ建国期。
一番危険だったのは、外敵ではなかった。
情報の混乱。嘘の流布。人の欲につけ込む“内側からの崩壊”だった。
現実世界も同じ。
SNS、YouTube、DM、セミナー、情報商材──
“知識がない者”から順に搾り取られていく。
だから健太郎は、まず情報の盾を鍛えることに決めた。
◆健太郎式・情報防御術◆
① 情報源の“裏”を見る
→ 特商法ページはあるか?実在する会社か?実績の根拠は?
→「誰が得をする話なのか」を常に考える。
② SNS広告はまず疑え
→「楽して稼げる」は原則ウソ。再現性より、演出と演技を見抜く。
③ “売っている人の人生”を冷静に観察する
→ リッチそうに見えても、収益源は「あなたの購入代金」である可能性。
④ 自分で判断できないときは、“学ぶこと”を選ぶ
→ 稼ぎたいなら投資じゃなく、知識投資。
→ 書籍・信頼できる動画・公的サイトを通じて地盤を固める。
「たとえ金がなくても、知識さえあれば“防げる損”がある」
健太郎は、図書館で借りた詐欺関連の本を開いた。
手元には、自作の“騙されないためのチェックリスト”。
ページをめくるたびに、
自分がこれまでどれだけ“情報を選ばずに信じてきたか”を痛感した。
それに、いま無職の俺に都合よく儲け話などやってくる訳がない
冷静に判断する事の重要性も身に付けることができた。
──オレは、流されてた。
けどこれからは、選んでいく。
◆
夜、Kyashの残高とマネーフォワードの支出グラフを確認しながら、
健太郎は小さく笑った。
自分が“お金を守れている”という自覚が、確かにある。
ノートの一ページに書き記す。
『オレが今日、騙されなかったのは運じゃない。
“知識”と“仕組み”が、オレの自由を守ってくれた。
守る力──それは、世界を疑う力じゃなく、自分を信じるための力だ。』
異世界で手に入れた「五つの力」は、今ここで役立っているのだ。
貯める力
稼ぐ力(未解放)
増やす力(未解放)
守る力
使う力
防衛線は整った。
ならば次は──攻めの番だ。
【次回予告】
「よし、動くぞ──“稼ぐ力”フェーズ、起動!」
副業の選択肢は星の数。だが本当に大事なのは、自分に合う武器を見つけること。
異世界の知識は、果たして現実で通用するのか?