プロローグ 「帰還──選び続ける者の現世」
プロローグ(イメージ)
ディセルドを離れ、旅の最果てにたどり着いたリベル。
そこに待っていたのは、あの“天界の神”──彼を転生させた存在だった。
神は静かに語る。
「お前は“選び続ける者”として、この世界に多くを遺した。
だが、元の世界での人生は、未完のままだ。
今、最後の選択を問う──」
そして、神は差し出す。
『帰還』
『滞在』
『忘却』
リベルは、迷わない。
「帰るよ。オレは──
今度こそ、自分の人生を選ぶために、元の世界に帰る」
現実の日本。
過労で倒れ、心も時間もすり減らしていた、かつての職場。
だが、リベルは“5つの力”を身に着けて戻ってきた。
そして彼は、こう言う。
「今度はもう、誰にも人生を任せない。
“オレの人生”は、オレが選ぶ──」
現実社会へ戻った男の物語がはじまるーーー
──空白。
白く、静かな空間だった。
そこに“風”はなかった。
大地もなければ、空すらなかった。
ただ、ゆるやかに流れる“時間の終端”のような場所。
リベル・アーツ──いや、本来の名を持つ男、国府宮健太郎は、
そこに静かに立っていた。
目の前には、再び現れたあの“神のような者”。
「……もう、終わったのか?」
「終わったのではない。“選びきった”のだ。
だからこそ、お前に問う。──次は、何を選ぶ?」
健太郎は、短く息を吐いた。
懐かしさと決意が入り混じるような、重くも澄んだ吐息だった。
「この世界で、オレは“理想の街”を作った。
奪われない自由。学びと選択。そして、次の世代へ渡す力──
全部やりきったつもり。だけど……」
彼は、拳を強く握りしめる。
「現実のオレは、ただのブラック企業勤めで、
何ひとつ“自分で選べなかった”男だった。
あの人生を、この目で“やり直したい”。
“選び直したい”んだ──今度こそ、“ほんものの自由”を手に入れるために」
神は、ゆっくりと頷いた。
「ならば──帰るがよい。
これは転生ではない。“帰還”だ。
だが、覚えておけ。お前がこの世界で得た“5つの力”は、
現実では何の魔法にもならない。
ただし──“選ぶ力”だけは、決して消えない」
健太郎は、静かに笑った。
「十分だ。それがあれば、またやれる。
オレはもう、奪われない。オレの人生は、オレが創る」
そして彼は、最後に呟いた。
「今日がいちばん若い日──なら、今日から生き直す」
白い世界が崩れていく。
そして──
まぶしい光と共に、あの日の“現実”へ。
【To be continued...】