第134話 「交渉の火蓋──“選ばない国”と、“選ばせる国”」
──リベシティ中央会議塔・特別交渉室。
リベル・アーツを代表とするリベシティ連邦首脳陣と、
ゼロ共和国より特使として現れたのは──
そう、リーダーアシュ=ノクス本人だった。
灰色のコートを羽織り、整った顔に浮かぶのは、余裕と挑発。
彼の登場に、会議室の空気が一気に張り詰める。
アシュ:「こうして正面から会うのは、初めてだな、リベル。
ようやく、“本当の意味”で俺たちは対等になったってわけだ」
リベル:「……俺は、“敵”と会ってるつもりはない。
ただ、“自由の定義が違う者”と向き合ってるだけだ」
交渉は開始された。
リベルたちは、“ゼロ共和国の分離”を正当な国家承認として受け入れる代わりに、
国境の自由通行、経済補完、情報連携などの条件を求める。
だが、アシュは微笑を絶やさず、こう返した。
アシュ:「我々は、国境など必要としていない。
全てを委ねる国家に“越境”の概念などないのだから」
「リベシティの市民を、いつでも迎え入れる。
“選ばせる社会”に疲れたら、我が国へ来ればいい──ただし、
二度と“自分の意思”では戻れなくなるがな」
ミーナ:「……脅し?」
アシュ:「“選ばない自由”には、選び直す権利がない。
それが、お前たちの“選択の自由”との違いだ」
リベル:「……でもな、アシュ。
“選び直せない”ってのは、それはもう“自由”じゃないんだよ」
【スキル発動:リベル】
《選ぶ力・修正可能性》──
失敗してもやり直せる、“再選択”の自由の価値を社会に提示する能力
交渉は難航した。
双方譲らぬまま、会議は“48時間の猶予”をもって中断される。
その帰り道、リベルはアシュの背に声を投げかけた。
リベル:「……アシュ。
もし、“君自身”が何かを選びたくなったら、
その時だけは、いつでもリベシティの門は開いてる」
アシュ(振り返らず):
「……それが、お前の弱さだ。だが──
その弱さが、嫌いじゃない」
緊張高まるリベシティ。
街では一部で“亡命申請”や、“ゼロ派”と“リベ派”の衝突も起こり始めていた。
次回:
「街に火が灯る前に──選択の真価を問う夜」
【To be continued…!】