第13話「自由への風を止める者たち」
──次の日。
俺たちは、さらなる乗り換え者を増やすために、村中を駆け回っていた。
ハルクとミーナも大活躍だ。
「オレんとこのオヤジも、契約見直すって言い出したぜ!」
「私の友達も、MVNOギルドに興味あるって!」
村に、確かに「変わりたい」という風が吹き始めていた。
(このまま一気に、自由の連鎖を広げる!!)
そう思った、その時──
──村の掲示板に、でかでかと貼り出された広告が目に入った。
【警告!】
格安ギルド(MVNO)は通信品質が劣悪!!
通信障害頻発!!
もしもの時に繋がらない!?
安物買いの命失い!!
【やっぱり安心・安全・信頼のヘルマネ通信へ】
ハルクが、目を見開いた。
「な……なんだよこれ……」
さらに、村の中では噂が広がり始めていた。
「あそこの安ギルド、通信止まったらしいぞ」
「緊急時にタブ石使えなかったら、どうするんだ……」
「やっぱ、安いって怖いよな……」
ミーナが、青ざめた顔で俺を見た。
「リベルさん……どうしよう……
みんな、また不安になってる……」
(くそっ……)
これが──
ギルド側の情報操作。
ネガティブキャンペーンだ。
事実かどうかなんて関係ない。
"不安"を植え付ければ、それだけで自由への流れは止まる。
その夜。
俺たちは、村外れの今は誰も使っていない作業小屋(リベルが勝手に寝泊まりしている)に集まっていた。
ハルクが、拳を握りしめる。
「これじゃあ、せっかく乗り換えようって思ってた奴らも、ビビって動けなくなる……!」
ミーナも、唇を噛み締める。
「どうすれば……
どうすれば、またみんな信じてくれるの?」
俺は、静かに立ち上がった。
「──"本物"を見せるしかない」
二人が顔を上げる。
俺は続けた。
「不安を煽るのは簡単だ。
でも、"実際に自由を掴んだ姿"を見せれば──
きっと、心は動く」
ハルクが、ゆっくりと頷いた。
「オレたちが、証明してやろうぜ」
ミーナも、ぐっと拳を握った。
「うん!絶対に、負けない!!」
その時。
ふわりと、金色の風が吹いた。
気づくと──
建物の屋根の上に、あの男がいた。
バリ師匠。
金色のカーペットに腰かけ、
にやにやしながら、俺たちを見下ろしている。
「自由を掴む者には、必ず"恐怖"が襲ってくる。
だがな──恐怖を超えた先にしか、
本物の"信頼"はない」
師匠は、そう言い残すと、またふわりと消えた。
(──ああ、わかってる)
俺たちは、
この村に、
本当の自由の風を吹かせる。
絶対に、だ。
【To be continued...】