第12話「自由の狼煙(のろし)と、黒い影」
翌日。
俺たちは、最初の行動に出た。
ターゲットは、
ハルクの叔父・ダンさん。
寡黙で不器用だが、
家族思いで、ずっとギルドに搾取され続けていた。
「叔父さん、聞いてくれ!」
ハルクが、必死に呼びかける。
ミーナが、手作りのチラシを見せながら説明する。
「こんなに通信費、安くできるんです!
しかも、違約金なしで乗り換えられます!」
ダンさんは、最初は首を振っていた。
「無理だ……
ギルド様に逆らったら、きっと怖い目に遭う……」
でも──
俺は、静かに言った。
「ダンさん。
今、自由を選ぶか。
それとも、このまま搾取され続けるか。
──決めるのは、あなた自身だ」
沈黙。
ダンさんは、ぎゅっと拳を握り──
「……やる」
その一言を、しぼり出した。
作戦はシンプルだった。
●ダンさんが、独立系MVNOギルドに直接乗り換え申請
● 契約書の「自由移籍条項(※小さく書かれていた)」を突きつける
● ギルド側に"違約金を取れない"ことを認めさせる
事前に俺たちが調べ上げた情報も、ダンさんに渡してあった。
(さぁ……勝負だ)
ギルド支部。
いつものようにふんぞり返った受付係が、
鼻で笑った。
「移籍だぁ? ふざけんなよ、違約金払えや!!」
だが、ダンさんは震えながらも、
渡された文書をしっかり突き出した。
「契約第17条:利用者自由移籍権」
「違反すれば、ギルドに制裁金」
受付係の顔色が変わった。
「……チッ」
文句を言いながらも、
彼らは、ダンさんの乗り換え申請を正式に受理した。
──ついに。
減るマネー村で、最初の自由獲得者が生まれた!!!
広場に戻ると、
ハルクとミーナが満面の笑顔で駆け寄ってきた。
「やった!!」
「ダンさん、すごいよ!!!」
村人たちも、ざわざわと集まり始めた。
「乗り換えできたのか!?」
「本当に……自由になれたのか?」
俺は、大きく頷いた。
「そうだ。
──もう、搾取されなくていいんだ!!」
村人たちの目に、
小さな光が宿った。
(これだ……!)
革命の最初の一歩。
自由の狼煙が、確かに上がった瞬間だった。
だが──
その夜。
ヘルマネ村のギルド支部の奥。
暗い部屋で、ひとりの男が椅子に座っていた。
鋭い目をした、黒いローブの男。
ヘルマネ通信ギルド、支部長・グラット。
「……乗り換え?
なめたマネしやがって」
グラットは、書類をぐしゃりと握りつぶした。
「"自由"だぁ?
そんなもん、この村に必要ねぇんだよ」
彼は、冷たく笑った。
「──始末しろ。
あの若造どもを、"見せしめ"にしてやれ」
ヘルマネ村に、
再び黒い影が忍び寄り始めていた──!
【To be continued...】