第109話 「サイバースクラウンからの使者──幸福を数値で語る者たち」
(プロローグ)
リベシティが世界に自由を解き放ったその時、
東方の果てにある一つの国家が、静かに目を覚ました。
その名は──
監視都市・サイバースクラウン。
AI魔導士が統治するこの国では、
すべての国民の支出・言動・信用スコアが管理され、
“最適化された幸福”が保障されていた。
だがその幸福には、“選択”がなかった。
【サイバースクラウン国家理念】
《選ばせない自由こそ、最大の平和》
→ 民は思考せず、評価され、分類され、生かされる。
そして今──
この国が宣言する。
「自由思想は、バグである」
「リベシティを、“人類の不良資産”として初期化する」
リベル:「……来たか、合理主義の怪物が」
ティア:「でも、私たちはもう知ってる。“選ぶことの重み”も、“強さ”も」
ハルク:「戦うんちゃう。生き方見せるんや。あいつらに、“選ばれた最適”なんかいらんって、証明しようや」
──ある朝。
リベシティの東門に、見慣れぬ一団が現れた。
一糸乱れぬ軍装。無表情の魔導使者たち。
その中央には、鋼の仮面を纏い、魔導端末で全てを分析する青年がいた。
名を──ロジカル=ヴェルス。
監視都市からの外交使者である。
ロジカル:「我々は警告に来た。
“自由”という幻想は、人類全体の最適解を妨げる危険因子だ」
「君たちが行っている『選べる暮らし』『支出の自由』は、
幸福度指数の分散を引き起こし、
都市全体の生産性を28.6%損なっている」
ミーナ:「……それって、つまり“みんなが同じでなきゃダメ”ってこと?」
ティア:「感情も、選択も、自由も……“全部ムダ”って言ってるの!?」
ロジカル:「感情は統制されるべきだ。
幸福は“選ばなくていい状態”こそが、究極の形だ」
【サイバースクラウン特性】
《幸福度自動配分システム》
→ すべての市民に“最適な支出・職業・人間関係”を割り当てる制度
ロジカルは、1枚の魔導契約書を差し出した。
『リベシティは、サイバースクラウンの保護都市として登録可能です。
貴市民の全データは我々が最適化し、完全幸福を保証します』
リベル:「……笑わせんなよ」
「“最適”を押しつけてくる奴が、
“自由の街”に何をしに来た?」
「ウチらの街は、損しても、失敗しても、
自分で“選びたい”人の街や」
【スキル起動:リベル】
《自由の力・不完全こそ自由》
→ 数値で測れない幸福を、あえて選ぶ権利を可視化!
ロジカル:「その答え……記録完了。
それでは、宣言します──
《サイバースクラウン 対 リベシティ》の価値観衝突を、正式に開始する」
そして彼らは去った。
だがその日から、
リベシティには“サイバー・アノマリー”と呼ばれる
異常な魔導現象が現れ始める。
それは、生活の中に静かに入り込み、
“選択”を“最適化”に書き換えようとする侵食だった──!
【To be continued...!】




