第1話 自由を求めて!!
暗い…
重い…
時間が、ぬるりと身体に絡みついてくる。
蛍光灯の光は、今にも切れそうにチカチカと瞬き、
机の上に散らばる無数の書類は、俺の意識をさらに削っていく。
「…はぁ…」
誰にも届かない溜め息が、空気の中に溶けて消えた。
ブラック企業。
週7勤務。
残業月200時間超え。
給与は雀の涙。
休みはゼロ。
貯金もゼロ。
友達もゼロ。
時間も、自由も、何もかも、ゼロ。
それでも俺は、今日も「やらなきゃ」と自分を叩き続けていた。
──なぜか。
それは、"生きるため"だったから。
ただ、それだけ。
だが、その「ただそれだけ」すら──
ぐらり。
視界が、ぐにゃりと歪む。
足元から、何か大きな穴に吸い込まれるような感覚。
(…あれ……?)
次の瞬間、俺はガシャッと机に手をぶつけながら、
椅子ごと、床へ崩れ落ちた。
──意識が、暗闇に飲まれていった。
──どれくらい、経ったのだろうか。
まぶしい。
暖かい。
やわらかな光に包まれて、俺はゆっくりと目を開けた。
目の前には、
まるで絵本に出てくるような、白い雲の浮かぶ、眩しい世界。
その中央に、ひとりの老人──神様のような存在が立っていた。
「目が覚めたか、リベル・アーツよ」
──リベル・アーツ?
俺の名前……だったか?
俺…国府宮健太郎だけど…‥.
記憶がふわふわしている。
老人は、穏やかな声で続ける。
「お前の人生は──とても悲しく、残念でならない。
本来、人生とはもっと…自由で、喜びに満ちているべきものだ」
俺は、ただぽかんと聞いていた。
「だから、私は決めた。
お前に、もう一度チャンスを与えよう」
「新しい世界で、自由を手に入れてみせよ!
己の手で、豊かさを掴み取れ!!」
──そう言いながら、神様は大きく手を振った。
すると、俺の身体はまた光に包まれ、
ふわりと宙に浮かび──
──光の中を、俺はふわふわと漂っていた。
【To be continued...】