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ヲタッキーズ173 ルージュの殺意

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第173話「ルージュの殺意」。さて、今回はセレブ御用達の男性化粧品メーカーのCEOが殺され、現場にはルージュの伝言が残されます。


癖のある化粧品業界人の前に捜査は難航、しかも、やっと浮上した容疑者には、それぞれ鉄壁なアリバイがあり、さらに事態は敏腕警部の恋の鞘当てに発展し…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 厄介な緋文字


"秋葉原マンハッタン"と呼ばれる摩天楼の1室。バケツ、雑巾、モップ…水道蛇口が開かれ掃除メイドは腕まくりだ。


「あら?」


鏡にルージュの伝言?落書きの主は…今頃、あの人のママに会うために、末広町駅から地底超特急に乗っていたりして…


「"murder(殺人)"?…命懸けの浮気ね」


ルージュの緋文字からは赤い水が滴り落ちている。その赤い水をたどり隣の部屋を覗くと…ベッドに血塗れの女の死体w


メイドの悲鳴w


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"Piii…"IHヒーターの上の薬罐が鳴るw


「"彼女の悲鳴が響き渡る。しかし、死人の耳には、永遠に届かないのであった"。テリィたん、何コレ?雛祭りか何かの冗談?」

「え。まさかのダメ出し?」

「何年SF作家やってるの。時制が不一致。読みづらい」


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラ居心地良くて常連が沈殿。店の売上は上がったりだ。

ましてや、オーナーの僕自ら常連相手に新作の原稿読み合わせ会とかやっては…薬罐を下ろしスピアの顔色を伺うw


「時制については、スイカ級バストのトランジスタグラマーがちゃんと一致させてくれる予定だ。で、その子は、今から新作を人類史上初めて読み切った感想も聞かせてくれるハズさ」

「…全般的には素敵なの。特に宇宙空母への搭乗シーンとか最高だったわ」

「ソンな照れるな」


今宵は褒めて育てる作戦らしいスピアw


「でも、微妙なトコロもあった。新しいキャラクターの火星軍令部から派遣されて来るエリート将校」

「シュレ・ミングのコトか?」

「なんだか、唐突に登場した感じ」


さすが!鋭いw


「全くその通りだ」

「ソレにヤタラどん臭いの」

「そーナンだょ!」


カユいトコロに手が届く神コメントだw


「そのキャラ、消しちゃえば?」

「良いのか?リアルでもこんな簡単に消せたらな」

「ナンのコト?」


僕は、原稿から名前を次々デリートw


「スピア、ありがと!締め切りとっくに過ぎてるけど!」

「先送りはテリィたんの人生ソノモノでしょ?」

「まぁな」


ココで、メイド長で僕の推しミユリさんの御帰宅だ。


「ただいま。コスプレを取りに来ただけです。今夜、メイドミュージカルの歌合せなので」

「春公演だね?出し物は?」

「ペトロ・フスキの"目覚めの時"です」


お?聞き覚えのあるタイトルだ。


「ソレ、ミユリさんがオーデ(ィション)受けた奴だょね?」

「はい。でも、主役はマッジ・バンスに決まりました。テヘペロ」

「でも、見に逝くンだ?」


僕ならオーデで落とされたら舞台には逝かないな。


「ソレが批評家の下馬評がスゴいのです…最悪だって」←


ココでスマホ鳴動。


「あ。ラギィ。殺人か?ちょうど執筆から逃げ出したかったトコロさ。現場は何処?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


摩天楼の殺人現場。鏡にルージュの緋文字。


「寝てる間に死ぬのが1番だね」

「撃たれたと気づかなければね。この人は気の毒ょ。弾丸は心臓を僅かに外れ、しばらくの間、生きてたわ。助けを呼ぼうと電話を手にしたトコロで…」

「犯人にトドメを刺されたのか」


現場で合流するラギィは、万世橋警察署の敏腕警部。僕とは前任地で彼女が"新橋鮫"と呼ばれてた頃からのつきあい。


真っ赤なコートで登場。ファッションモデルみたいだw


「きっと2度目も銃を使えば、銃声で気づかれる恐れがあると考え、咄嗟にそばにあったモノで後頭部を殴打したって線かしら」

「ラギィ、確かに普通の9mm弾ならともかく、音波銃が使われてる。でも、流れた血は真っ赤だからスーパーヒロイン反応の"blood type BLUE"の出番は無さそうだ。帰って良い?」

「逃がさないから!今、逃げても後でSATOに合同捜査をリクエストするわ」


南秋葉原条約機構(SATO)は、アキバに開いた"リアルの裂け目"から降臨スル脅威に対抗スルために設置された防衛組織だ。

僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団"ヲタッキーズ"は、SATO傘下の民間軍事会社(PMC)で一応、僕がCEO。


スーパーヒロイン絡みの事件は、いつも合同捜査w


「床に落ちた時計に血がついてる。争う内に落ちたのね」

「10時34分で止まってる。その時間に襲われたワケだ」

「窓は換気のために、もともと開けていたみたい。侵入の跡はナイわ」


先行してたヲタッキーズのエアリとマリレから報告を聞く。因みに彼女達はメイド服だ。何しろココはアキバだからね。


「室内には、防犯カメラは取り付けられてなかったようだ」

「発見したのは、メイドょ。本格的なロングスカートの家政婦メイド。いつもワイルは彼女が来る頃にはいないンだって」

「エアリ。ワイルって、ワイル・ダミア?」


その場の女子が一斉に振り向く。


「知ってるの?男ょ?…まさか、元カレ?」


答える気にもナラナイ。壁のポスターを指差す。


「珍しいだろうが、僕の方が一方的に知ってるだけだ。このポスターは彼の商品の宣伝。ワイル・ダミアはメンズ向け超高級スキンケア用品のブランドだ」

「キャー!歌舞伎町のホストが使ってる奴ね。友達が良く貢いでるわ!」←

「…ワイル・ダミアの化粧水はアルコールフリーで最高だ。シェービングクリームも素晴らしい。ほら」


警視庁のエリート捜査員トムデ・ミングの登場に、女子達がザワつく。そもそもナンで警視庁?警視庁、GO HOME!


「やぁみなさん。僕は、薬局で売ってる奴で良いや」

「待て待て待て、トムデ。人生が変わるぞ」

「え。熱い?何で?」


トムデの手のひらにスプレーで泡を噴きつける。驚くトムデを見て僕はドヤ顔だ。クスクス笑うラギィとヲタッキーズ。


「科学の魔法さ。まるで昭和な理髪店に来たような感覚だ。謳い文句は"おうちでプロの理髪店"」

「おお!でも、どーせ高いンだろう?」

「でも、3万円払う価値はアル」


ホントは4000円だ。トムデの出方を見る。


「さ、3万円?!ま、まぁ、確かに、そのぉ、何だ、価値は…あるカモしれないし、ナイかもシレナイなぁ」

「みんな!人が殺されたのょ」

「被害者の偉業を讃えてただけさ」


例によって僕のタブレットをハッキングした超天才ルイナの声。彼女は、ラボから"リモート鑑識"で手伝ってくれる。


「まるで"セックス・アンド・ザ・アキバ(以下SATA)"の男性版ね」

「四半世紀も前の地上波番組?ヲタッキーズは、何か見たり聞いたりしていないか、近所の人に聞き込みをお願い」

「ROG。ラギィ、任せて!」


メイド2人は飛び出して逝く。僕はラギィに呼ばれる。


「テリィたん。リビングのショーケースを見て。派手に割られてルンだけど、何が盗まれたか考えてるの」

「湿度制御してるね」

「犯人は、大型液晶TVやブルーレイレコーダではなく、他の何かを盗んだ。ソレは相当価値のあるモノだわ」


僕は、異なる視点を提供。


「そもそも、コレは強盗なのか?」

「確かに。コレが気になるわ」

「ルージュの伝言?"murder"…か」


2人で考え込む。


「途中で終わってるとか?最後はeかoか。oならスペイン語。eだとフランス語だな」

「どちらにせょ理解出来ないわ。なぜ、強盗が被害者の血でワザワザ緋文字を描くの?」

「しかも"殺人"だぜ?ソンなの死体を見ればワカルょ」←


ヲタッキーズが帰って来る。


「近所に住んでる地下アイドルで、音楽を流しながらエアロビクスをしてた子がいたわ」

「エアロビクス?昭和ね…銃声は聞いてナイわね?」

「でもね。その代わり敷地のフェンスを誰かが昇って逃げるのを見たんだって」


え。全員が身を乗り出す。


「で、特徴は?」

「ゴメン。足しか見てないって」

「時刻は?」


エアリは、タブレットを確認。


「夜の10時52分。マンションの防犯装置の電子記録とも付合スルわ」

「つまり、犯行の終了時刻は10時52分ってコトか」

「ウチの鑑識にフェンス付近の捜査もしてもらわナイと」


うなずくヲタッキーズ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


ホワイトボードに"残されたメッセージ"と描き込む。ふと視線を感じ、振り返るとドアにもたれたトムデが見ている。


「トムデ?」

「テリィたん」

「トムデ、桜田門(けいしちょう)だってホワイトボードは使うだろ?」


うなずくトムデ。


「モチロンさ」

「明日、また見に来ると良いょ。殺人っぽい単語でギッシリ埋まってるから」

「テリィたん…僕は、ラギィから捜査協力を求められて、ココに来てルンだ」


トムデの背後から顔をのぞかせるラギィ。恋人かょw


「ホラ。SATOも呼んだコトだし、秋葉原の総力を挙げて解決しましょう!」

「(何だソレw)そうだね」

「ワイルの従兄弟のブレイ・レイクが来たわ。さぁみんなで話を聞きましょう!」


とか逝ってトムデと2人で歩き出す。慌てて後を追うw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の会議室。


「10代の頃、彼はニキビが酷くてね。ソレでこの商売を始めたんだ。会社を作る時には、私も喜んで出資したさ。アイツはホントに良い奴だった。誰が一体こんなコトを?」

「ブレイさん。聞きたいコトがアルんです。リビングにあったショーケースが割られ、中身が盗まれてたのですが…」

「中身は、本のコレクションだ。アイツは珍しい印刷物やサイン本とかをコレクションしていた」


本のコレクション?何ソレ?美味しいの?


「そのコレクションは高価なモノなのでしょうか?」

「え。誰かがアイツのコレクションを盗むために殺したと言うのか?」

「わかりません。謎のメッセージも残されていました」


ニワカ探偵気取りのブレイ。


「ソレはダイイングメッセージだな?」

「まだ捜査中です。お伺いしたいんですが、ワイルさんは、本のコレクションの目録とかは作っておられたかしら?」

「保険会社の担当が持っている。俺が紹介した友人だ」


色々な事情が明らかになって逝く。


「盗まれたのは本だけナンです。犯人は、恐らく本の存在を知った上で、狙って侵入してる。もしかしたら、下見をしているカモしれません」

「アイツは、最近キッチンをリフォームした。大勢の作業員が出入りしてたハズだ」

「なーるほど」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「ラギィ。犯人は貴重な本を盗むために殺しをしたに違いない。作業員に前科がアル者がいないかを調べてみるょ」

「ありがとう、トムデ。協力してくれて助かるわ」

「また連絡する」


爽やかに去るイケメン捜査官。イケスカナイ←


「本のコレクション目的の殺人だと結論付けるのは、未だ早いな」

「でも、本が盗まれたのは事実ょ?」

「"murder"のメッセージは、殺す意思があった証拠だ。盗むコトが目的で殺したワケじゃナイ」


呆れるラギィ。


「結論付けるのが早いのはどっち?」

「だって、時間の無駄だろ?鍵は本じゃなくて、このメッセージの方だと思うな」

「だ・か・ら、両方の線を追うの」


呆れる僕。


「彼氏だから?」

「何?」

「結論が早かった?」


真っ赤になって怒るラギィ。


「テリィたんには、関係ないコトでしょ!」


マズい展開のトコロに現れるヲタッキーズ。危ねぇw


「ワイルは、3日前に警察に届けを出してたわ。自宅でイタズラの被害に遭ったらしい」

「玄関に赤いペンキをブチまかれた?」


調書を読み上げるラギィ。


「ワイルの会社は動物愛護NGOから抗議を受けてたのね?」

「でも、動物実験はしてナイんだろ?」

「そのハズが、どうも下請け業者がしてたらしい。ワイルも知らないトコロで」


僕はピンと来てホワイトボードから写真をハガす。


「そのメッセージだったのか!murderer(殺人鬼)と描こうとしたんだ。スペルミスなんかじゃナイ」

「動物愛護NGOの仕業?」

「そうさ。赤ペンキでは伝えられないから、血を使って訴えたンだ!」


僕の言葉に全員が立ち上がる。


「ワイルの会社に行って話を聞いてみましょう。動物愛護NGOについて何かワカルかも」


いそいそ出掛けるラギィとトムデを追いかけながら、奴がホワイトボードに描いた"盗まれた本"の文字を手で消す僕w


第2章 文豪登場


神田リバーをまたぐ和泉橋。その南詰めに建つ高層タワービルの壁面で見つめ合う男と女…メンズ化粧品のポスターだw


「動物実験をしない業者を探してた矢先でした!動物愛護NGOからはズッと抗議を受け続けてました」

「ワイルCEOは、正しいコトをしようとして頑張っていたのです!」

「でも、木曜日にペンキをぶちまけられた件で、私達の我慢も限界に達しました!」


本社タワーの会議室で赤い気炎が爆発だ。

金髪と銀髪が、交互にマシンガントークw


「未だ発表はしてませんでしたが、動物愛護NGOには十分な寄付をスルと記者会見で発表スル予定でした」

「動物愛護NGOに我が社の誠意を見せようとしたのです。スルべきコトはしてるのに殺されるなんて!」

「未だ犯人が誰かとはワカラナイので…」


さすがのラギィも金髪銀髪の剣幕に押され気味w

僕とトムデは、彼女の赤いコートの影に隠れる。


「ワイルさん個人が動物愛護NGOに狙われるのは、木曜日のペンキの件が初めてですか?」

「YES。そー言えば、いつも標的は会社でした」

「いっときヒドくて、脅迫状の捜査のために軍事探偵を雇ったコトもありました」


軍事探偵?産業スパイじゃなく?


「その時の調査資料を拝見出来ますか」

「モチロン。ダネフがお渡しします。ダネフ?」

「はい。直ちに」


傍らで銀髪がうなずく。君の名はダネフ。


「あと、ここ数週間のワイルCEOのスケジュールもいただけますか?」

「必要なモノは何でもダネフが用意します。ダネフ?」

「はい。直ちに」


頼むぞ!ダネフw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「はい。どうぞ」


銀髪のダネフから、試供品の詰め合わせをゲット。

デザイン系の紙バックは持ち歩くだけでお洒落だ。


傍らで呆れてるラギィ。


「テリィたん、何でサンプルが欲しいなんて言うの?恥ずかしいわ」

「いや。何でもと言われたから。君のイケメン捜査官にも男前になってもらおうと思ってさ」

「シャーロックやオランダの分?」


お?ラギィも見てるのか?


「"セックス&ザアキバ(SATA)"だね?差し詰め、僕は主人公でコラムニストの…」

「詳しすぎる!女子以上?キモ」

「え。ミユリさんが観てたから、なんとなく知ってたんだ」


しまった、放映時は前カノの頃だw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「ダネフから届いた資料によると、動物愛護NGOはタダのベジタリアンの集まりで、ラディカルな行動はしないようだ。最近、やらかしたテロと言えば、アキバ工科大学(AIT)でラボのラットを大量に逃したぐらい。ラギィの方はどう?」

「ワイルの日程に最近頻繁にナシャって名前の女が出没してる。最近出来た恋人かしら?…Hi!」

「やぁラギィ」


ラギィのデスクに腰掛けて親密に話してたら颯爽と入って来たイケメン捜査官トムデ。またも爽やかに割り込んで来るw


「キッチンリフォームの作業員の中に、怪しい奴を1人見つけた。イクカ・ジカブ。彼が作業に関わった現場2件で窃盗被害が発生してる。いずれの事件も証拠がなく、逮捕を免れてるが」

「まぁ。ぜひ話を聞きたいわ」←

「わかった。今、彼の居場所を確認中だ」


ドヤ顔のトムデ。すかさず反転攻勢だ!


「動物愛護NGOのニマンが怪しい!過激な抗議活動で5回も逮捕されてるぞ?得意技は、ニセの動物の血をぶちまけるコトだ!」

「ニセの動物の血?動物愛護NGOの常套手段だな」

「先月ナンか議員に抗議し、彼の車に"殺人鬼"と落書きした上に、止めに入った運転手をペンキのバケツで殴ってルンだぜ!」


調書をラギィに見せる。ところが…


「でも、被害者との接点がナイわ。どうかしら」

「ラギィ、良く見ろ。大量の脅迫状をワイルに送ってる!それも自宅に送ってルンだぜ!」

「良くやったわ。連行ょ」

「そーだな。連行だ!」


僕はドヤ顔、トムデは地団駄。ざまーみろ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の取調室。


「全くの見当違い。誤認逮捕だ」


ニマンはキッパリ言い切る。未だ逮捕してねぇよ。


「偽物の血が自宅にぶち撒かれ、その3日後に被害者は殺されたんだ。コレが偶然か?」

「僕は殺してない。事件の晩は映画を見に行ってた」

「君のアリバイは確認中だ。じゃあ木曜日のアリバイは?」


難詰スル僕をチラ見するラギィ。見惚れてるのか?


「木曜日?覚えてない」

「良し。じゃあ拘置場で一晩過ごせ。思い出すさ」

「わ、わかった。木曜日は勉強しに家に帰って…」


テーブルをドンと叩く僕。


「つまり、テロの犯人は君だ。認めるんだな」


僕はニマンをビシッと指差す。


「テリィたん!ヤリ過ぎょ…」

「あぁそうだとも!認めるょ!俺は環境テロリストさ。奴の玄関をペンキだらけにしてやった…その時、女がワイルと口論してる声が聞こえた。何かを投げてるような音もして、互いに殺し合ってると思ったホドだった」

「え。まさか、その女の顔は見たの?」


棚ボタだ。思わず身を乗り出すラギィ。


「いいや。声だけだ」

「喧嘩の内容は聞いたの?」

「女は"恥をかかされる"とか言ってたな。それでワイルは音波銃がどうかしたとか言っていた」


えっ?音波銃?


「何だって?」

「俺の頭に音波銃を…とか何とか言ってたと思う」

「おい!作り話は通用しないぞ!」


マリレが入って来てラギィに耳打ちスル。


「映画は、劇場の自動券売機に電子記録が残ってた。貴方のアリバイは確認されたわ」

「え。ウソだろ?ホントかょ?」

「マジょ」


ラギィ、そのドヤ顔は何だ?どっちの味方?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。スマホを切るラギィ。


「ラギィ。スケジュールを見ると、木曜日、彼はナシャと食事をしてる。ニマンの言ってた口論の相手は、彼女カモしれないな」

「あら。さっきは作り話とか言ってなかったっけ?」

「え。あれは…」


絶句したトコロで、ラギィのスマホが鳴る。


「今、ワイルのアシスタントから電話があった。どうやら、ナシャ・パイパはワイルの新しい恋人らしいわ」

「お。モデルだ。奴も所詮は"モデライザー"か」

「"メイドライザー"に言われちゃお仕舞いね」


いかにもモデルなアー写風の写真を受け取る。


「激情型らしいわ。ペットボトルの水が気に入らないと言ってロケを放棄したコトもアル」

「口論の相手にはモッテコイだな」

「そして、日曜日に戻ってトドメを刺した?明日連行するわ。あ、作業員の方は?」


トムデが入って来る。


「ガレージにいたよ。盗んだ工具でいっぱいだった。ただ事件の夜は子供の劇を観てた。つまり…」

「殺人は犯してない」

「そうだ。もう行ける?」


え。何の話だ?


「えぇ行けるわ」


既にラギィは、お出掛け用のオスマシ顔だw


「お出掛け…かな?」

「あら。同じタクシーで帰るだけだけど」

「問題アルか?じゃおやすみ」


肩を寄せ合い、仲良く退社スル2人。コレは…大問題だw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場"。遠く首都高が光の河に見える。


「ただいまー。ミユリさん、劇どーだった?」

「見ました。もぉ最悪です」

「そっか。良かったね!」


ライバルの酷評…と思ったらミユリさんは首を横に振るw


「いいえ、テリィ様。ソレが余りウレしくナイのです。と逝うのも、(ミュージカル)のヒドさがマッジの演技力を引き立ててた。さすがです。彼女は輝いて見えた。彼女の独り勝ちだわ」

「ソ、ソレは残念だね」

(ミュージカル)を見る前は思ってました。最初はマッジが役をゲットしたのは運が良かっただけだって。でも、彼女こそあの役に相応しい。今は、そう納得しています」


コレは…慰めシーンだ。僕の得意分野←


「ミユリさんだって上手く演じられたさ」

「あぁ優しいンだから」

「生まれつきさ」


ミユリさんは溜め息をつく。


「仕方ありません。スーパーヒロインに"覚醒"したからと逝って、ソレで人生が全て思い通りになるワケではありませんから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌日。万世橋(アキバポリス)の会議室。窓の外が朝焼けに染まる。


「ナシャさん。来てくれて感謝します」


ナシャはスマホをいじっていて答えない。ベネツィアで流行ってる瓶入りの炭酸水を差し入れたら、やっと顔を上げる。


ラギィが慎重に始める。


「先ずは、お悔やみを申し上げます」

「別に良いのょ」

「彼とは、いつから交際を?」


スマホをやめないナシャ。

正面の椅子に腰掛ける僕。


「さあ2ヶ月前?どうでも良いけど」

「スマホやめて」

「コレ、任意でしょ?」


とか逝いながらスマホを閉じる←


「当然の報いだわ。ホント良い気味だわ」

「ホントにそう思う?」

「だって…心臓を撃たれたンでしょ?」


付け加えるラギィ。


「殴られてもいたわ」

「そうだった。頭を一撃だっけ」


嬉しそうなナシャ。

ラギィが突っ込む。


「どうして殺したの?」

「私が殺した?マジでそう思ってんの?私は新聞で読んだだけょ。あのチンケな男、浮気して、この私を裏切ったのょ?」

「最初から話して。事件の晩はどこにいたの?」


正面を向く。ハッとするほどの顔面造形美w


「日曜日は池袋にいた。ゴシップブロガーのペレス・ルトンに会っちゃったから、彼のブログを見たらわかるでしょ?」

「木曜日、ワイルの部屋で口論はしなかった?相手の女性って貴女だと思うの」

「違うわ。私じゃなくて、ワイルが二股かけてたクソ女よ。安モーテルで密会してたわ」


下卑た性格だ。顔面偏差値が高いだけに残念。


「ホントだ。ペレスのブログに出てる。グリル久住か。あそこは美味いょな」

「テリィたん、後にして。どこのモーテル?」

「神田リバー沿い」


安モーテルが並ぶ一角がアル。


「木曜の朝、彼を尾行した。浮気はマジだった」

「で、相手は見たのか?」

「さぁ?2階の端の部屋に入ったのを見て帰ったわ。ソレで十分でしょ?」


ソッポを向くナシャ。


「ソレじゃ相手は女じゃなかったカモしれないわ」

「え。何言ってんの?モーテルょ?浮気以外にモーテルに行く理由がある?」

「うーん確かに」


下卑た絶品モデルの赤い気炎w


「とにかく!あんなモーテルじゃどうせ相手は安い女に決まってるわ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のホワイトボードの前で頭をヒネる僕。


「安いモーテルの安い女か。怒れる元カノよりも怪しくなって来た。"盗まれた本"ナンかより断然面白い…あれ?トムデ!今日は素晴らしくキレイに剃れてるじゃないか!」

「テリィたん!お肌スベスベで最高のクリームだ!まさに"オウチでプロの理髪店気分"さ。また頼むょ!」

「任せろ」


ニコニコ顔のトムデに頬をさすりながらOKサインを出す。


「あらあら。例の熱いシェービングクリーム?で、トムデ。捜査の方はどうなの?」

「あ、そうだ。ワイルの口座と通話記録を調べたが、特に不審な点は無い。弾道分析も過去の事件と一致するモノはナシ」

「ねぇトムデ。木曜の夜のコト、近所の人に聞いてみてょ。女といるトコロを見てないか」


ホワイトボードの前で振り返り、シナを作るラギィ。


「だって、ワイルはお金持ちょ?浮気相手と会うのに、何が悲しくて安いモーテルを選ぶの?」


ソレ、下卑た絶品モデルの受け売りだw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


と、逝うワケで神田リバー沿いの安いモーテル。ラギィ運転の覆面パトカーで乗り付け、受付オバさんに写真を見せる。


「ワイル・ダミアだ。見覚えは?」

「その日の勤務はベニィだったのょねぇ」

「そのベニィさんとお話ししたいンですけど」


昔のJRの切符売り場みたいなガラス越しの会話だw


「ベニィは無断欠勤ょ。だから、私がココにいるワケ」

「彼の連絡先はありますか?」

「ちょっと待って」


今どき珍しい紙のバインダーの台帳。


「オバちゃん!先週の木曜ナンだ。2階の端の部屋は誰が泊まったかな。化粧品の試供品、いる?」

「あ!ソレ塗るとあったかくなって鼻の毛穴が開く奴じゃナイの!えっとね、4日分を現金で先払いしてるわ。名前は…夏目漱石」←

「え?もう死んじゃったけど?」


受付オバさんは鼻の毛穴全開でドヤ顔w


「ココじゃ良くアルわ。中でも夏目漱石は常連ょ?」


第3章 夏目漱石を追え!


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。スマホを切るラギィ。


「そう…ありがとう。ルームメイトに聞いてみた。ベニィは慌てて荷造りしてアパートを出たそうょ」

「タイミング的にとても怪しいな」

「指名手配したから、何処かで必ず捕まるわ」


僕は考えを巡らす。


「部屋は4日間取ってあったんだょな?忙しい彼のコトだ。安いモーテルに、そんなに滞在するハズがナイ」

「じゃナゼ4日間も取ったの?何のために?」

「ラギィ!進展だぞ。何がネットで売られていたと思う?"吾輩は猫である"の初版本だ!」


トムデが飛び込んで来る。僕は絶句w


「まさか…ワイルのコレクションか?」

「ビンゴ!ルカスって名前の本のディーラーだ。過去にも、盗んだ本の売買や本のオークションで別のディーラーに暴行を働いたりしてる」

「暴行の前科のある人間が被害者の本を所有?」


まるで初デートで花束をもらって喜ぶウブな娘のようなラギィ。手慣れたイケメンがデートに誘うような口調のトムデw


「さぁ彼が自白する様子を一緒に見に行かないか?」

「えぇ喜んで!」

「取調室にlet's go!」


ポツンと取り残される僕。敗北感にサイナマれるw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室のルカスは、紫シャツに黒ジャケでタイは茶w


「500万円相当の本が被害者宅から消えた。ソレをナンと君が持っていた。どれだけ大変なコトかワカルょな?」

「何があったのか、説明してちょうだい」

「おまわりさん達、夫婦?」


マジックミラー越しに隣室で見てた僕は険しい顔w


「話すけど…ただ信じないだろうな」

「話せ」

「裏アキバの芳林パークで買ったんだ」


はい?


「芳林パークで…売ってた?」

「妻恋坂側の入り口だ。ホームレスが価値も知らズに売ってた。全部まとめて1万円で買ったら大喜びだ。いや、俺じゃなくてホームレスがだ。実に幸運な日だった」

「僕が妖精を見た時と同じだな」


え。トムデ、妖精を見たコトあるのw


「俺は、何も盗んでもいなけりゃ、誰かを殺してもいない。犯人はそのホームレスだと思う。恐らく」

「そう。その人が仮に家に侵入し、仮に殺人を犯したとして、わざわざ人殺しをしてまで盗んだ本を1万円で売ると思う?」

「そうだ!辻褄が合わない」


ラギィが追い込む。内助の功?


「貴方、日曜の夜は何処にいたの?」

「アパートだ。1人でいた」

「ははは。心配しなくても蔵前橋(けいむしょ)じゃ1人にはならないさ。最近は混んでるからな」


取り調べを切り上げ、立ち上がるトムとラギィ。ココで普通だとルカスが慌てて…おや?揺さぶりをかけたが動じない。


仕方なく取調室を出る2人。間抜けだ←


「…ルカスが現場にいたか、鑑識に調べてもらうわ」

「何か証拠が見つかるカモな。助かるょラギィ」

「念のため、芳林パークのホームレスも探してみる」


そんなのトムデにやらせろ!


「公園日和だし、一緒に探そう。ホットドッグでも奢るょ」


すると初ピクニックの約束を喜ぶ田舎娘みたいに微笑むラギィ。熟練の結婚詐欺師みたいなトムデ。全くお手上げの僕w


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)のギャレー。ヲタッキーズとくだをまくw


「あの2人、あんなにイチャイチャしてたら、ホームレスは絶対に見つからないぞ」

「え。何で?ラギィは優秀だから、イチャつきながらでも見つけるわょ」

「マリレ、どっちの味方だ?そうだ!ベニィが現れたか、モーテルで聞いてみよう」


マリレに止められるw


「10分前にしたでしょ?どうせトムデが捕まえたルカスが犯人だわ。タマにはノンビリしようょテリィたん」

「嫌だ」←

「何なの?あ、わかった。トムデに負けるのが嫌なのね?」


パーコレーターのコーヒーを注ぎながら冷かすマリレ。


「だって、奴は"覚醒"もしてないタダの警官だぞ」

「まぁちょっとね。でも、他にも理由があるンでしょ?」

「テリィたん!スピアが電話会社(キャリア)をハッキングしたら、あの日、安モーテルにいた夏目漱石に電話した人がいるコトがわかった」


エアリが飛び込んで来て両手にメイド状態に。


「与謝野晶子からか?」

「誰ソレ?通話はワイルが部屋にいたのとホボ同時刻!」

「彼が部屋にいるのを知ってるのは浮気相手だけだ」


エアリを囲む。


「不倫の遅刻連絡かしら。ジラす作戦ね」

「ソレが何と通話はワイルの会社からだったの!」

「ええっ?自社OLと禁断の恋?」


自販機でコーラを買い一息つくエアリ。


「発信者は特定出来ない。でも本社タワーの37階の基地局からかけられてた」

「夏目漱石は男だから相手は女ょね?」

「きっと自宅で口論してた相手だ。その女を特定する方法は何かナイかな」


不倫と聞いて俄然ヤル気を出すマリレ。


「うん。声ね。口論を聞いた動物愛護NGOのニマンに、37階の女性の声を全部聞かせたらどうかしら」

「ソンなコトが出来るの?」

「どーせ都会に出て来た田舎女子なら"インスタキログラム"やってるでしょ。プロフのショートムービーを聞かせればどーかしら」


ニワカに何を逝ってるか不明だが相槌だけは打つ←


「OK!うまくいったら、シェービングクリーム…じゃなかった、スネ毛剃りクリーム1年分をプレゼントするょ(試供品だけどw)」

「ええっ?あの塗ったトコロがポカポカする奴?欲しーい!絶対ょ」

「ズルーい!マリレだけ?」


とりあえず、1945年のベルリンからタイムマシンでアキバに逃げて来た"時間ナヂス"のメイドとゆびきりげんまんw


ソコへ…


エレベーターのドアが開き、何とトムデとラギィが、イカにもホームレスって風体の男を連れて捜査本部に入って来る←


「ま、まさか…いたのか、ホームレス?」

「薬物依存症のマティ。芳林パークに定住してる。ジャスト、ルカスが言ってた場所で物乞いしてたわ」

「しかも、ルカスに例の本を1万円で売ったと認めた。いやはや僕"達"の推理通りで怖くなるょわっはっは」


この野郎!ウットリ見上げるラギィもケシカラン。


「ワイルの部屋に侵入したのもコイツなのか?」

「ソレが…不思議とあの晩はアリバイがアル。アルバイト代のために炊き出し所にいたらしい」

「本は、殺害の数時間後に誰かがゴミ箱に捨てたのを拾ったらしいの。誰かが捨てるのを目撃してるハズょ」


ラギィは無邪気な笑顔。トムデはドヤ顔w


「つまり、捨てた奴が犯人というワケだ」

「さぁトムデ、似顔絵に協力してもらいましょう!」

「そぉだねラギィ!さぁ立つんだ」


素直に立ち上がるホームレスもホームレスだ。フリでも良いから無気力なフリしろ。見かねたラギィからお言葉を賜るw


「テリィたん、例の女の件で進展はあった?」

「進展は…あった」

「あら。そお?」


意外そうな顔w


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。絶対に負けられない!


"ケティ・マクス。趣味は推し活です…"


「違う」

「そうか。なるほど」

「コレも違う」


今日では、多くのSNSが出会い系化、プロフィールのショートムービー化が流行ってる。今や1億総Vtuberの時代だ。


「マリレ!次の声だ!…ホームレスのマティは、本を捨てた奴の顔を見てるのか?」

「見てるわ」

「"Hi。私はメリダょ…"」


首を横に振る動物保護運動の闘士。隣の会議室では漫画家が見せるスケッチブックにホームレスが何やら指図をしてるw


「どちらかの線に犯人が繋がってるわ」

「いるといいな…どっちかに」

「ちょっと似顔絵を見てくるね」


え。


「じゃあこれはどう?」

「"ジェンょ。最近ブルーなの。直メ欲しいな…"」

「何コレ?営業?」


関係ナイ!振り向くと、ラギィとトムデは、新婚旅行のアルバムを覗き込むカップルみたいにカラダを寄せ合っているw


トムデと目が合い、慌てて視線を逸らすw


「違うカモな」

「マリレ、次だ!」

「あと3人ょ」


SNSの海から次々プロフを見つけて来るマリレ。


「"リサマ・キスイです。昨日、子猫を拾ったの…"」

「彼女だ!間違いなひ!」

「リサマ・キスイって、前に会った金銀髪の金髪の方だ!」


手元の金髪の写真は、まるでアー写だw


「ホントに?」

「絶対に間違いない!」

「スネ毛剃りクリームね」


僕は、隣の部屋に飛び込む。


「リサマ・イキスだ!口論の相手はリサ…」

「トムデ!まさか、この人だったなんて!」

「え。誰?そっちは」


スケッチブックを覗き込むトムデとラギィ。


「何?」


仲睦まじくスケッチブックを見てるトムデとラギィ。


「マティが目撃した、芳林パークで本を捨てた奴の似顔絵だ…従兄弟のブレイ」


スケッチブックを見せるドヤ顔のトム。

僕はリサマのアー写をパラリと落とすw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のホワイトボードの前。


「被害者のワイルと激しく口論してたのはリサマで、一方、彼の本を芳林パークで捨てたのは、従兄弟のブレイ。でも、ドチラの容疑者にもナイの。殺人の動機が」

「簡単だ。2人の恋愛が終わったんだ。一緒に働くのも会社を辞めるのも嫌だから殺したのさ。ソッチは?」

「コッチこそ、何でもあり得る。例えばワイルの成功が妬ましかったとか、ゴルフで負けて悔しかったとか」


何だソレ?


「ふふふ。ゴルフだって?ホンキか?」

「テリィたん。つまり、今、動機に注目してもどうしようもナイってコトだ。ブレイは、事件当日に本を捨てる姿が目撃されてる」

「こっちだって証言がアルぞ!」


鼻で笑うトムデ。


「3日前に口論を聞いただけだろ?重要でも何でもナイ」

「コッチは動機がアル!」

「でも、ブレイの動機は…」


ラギィが大声を出す。


「2人とも!ケンカをヤメて、2人を止めて!」


言葉とは裏腹に明らかに自分のために喧嘩する僕達を見て楽しんでる。河合奈保子みたいなグラマーでもナイくせに!


「ヤメて貴方達。競争じゃないの。容疑者が2人も出たのよ。良いコトでしょ。2人共ショッピイて話を聞けば良いじゃない!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


先攻は僕。取調室にリサマ。黒のワンピースに水色コート。


「わかった。認めるわ。確かに木曜日、私は、彼の自宅で口論をした。でも、彼と関係を持ったコトもなければ、安いモーテルに行ったコトもナイ」

「その時に、物を投げる音がしたり、彼が"俺の頭に音波銃"とか言ったコトは?」

「覚えてるけど、ソレは比喩的な意味ょ。動物愛護NGOの話。ダミアは新しい業者が決まらないコトにイライラしてた。そして、ソレを製造のトップである私のせいにしたの。私は納得出来ズ、興奮して口論したわ」


うなずくラギィ。


「日曜の夜は何処にいたの?」

「友達何人かと食事をしてたわ」

「食後は?」


記憶を呼び戻すリサマ。


「具体的に何時頃の話かしら?」

「かなーり具体的になるわよ。夜の10時34分から10時52分の間」

「え。何ソレ?うーん家にいた。1人で家にいたわ。あ。でも、一旦部屋を出たんだわ。次の日が萌えないゴミの日で、清掃車が来るから、車を別の場所に移動させる必要があった」


記憶を辿るリサマ。


「誰かに見られた?」

「誰にも…」

「それは何時何分だった?」


また?って顔のリサマ。急に適当になるw


「10時15分ぐらいかしら」

「貴女の家は、ワイルのアパートから10ブロックね。あの時間なら2分で行けるわ」

「そう?計ったコトは無いけど」


リサマは、もぉどぉでも良いわって感じw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室を出た僕は黒ジャケ黒ズボン。ラギィは赤ジャケ黒ズボン。彼女は小脇にPCを抱えてる。


「ラギィ、見たか?日曜日のアリバイを聞いた時、リサマは明らかに動揺してたぞ!」

「…そーかしら。彼女のアパートのドアマンに聞くわ。防犯ビデオの映像で外出した時間がわかるカモ…トムデ、準備はOK?」

「モチロンさ」


爽やかに、うなずき合う2人。割り込む僕←


「俺もー」

「ムリ」

「冗談だろ?」


シャットアウトだw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


後攻。取調室にブレイ。


「おい、警察はホームレスの言葉を信用スルのか?従兄弟を殺す必要が何処にアル?マジで、私が容疑者だと言うのか」

「違うと言うコトを証明してくれ。確か日曜の夜は友人と酒を飲んでたンだょな?」

「夜の11時過ぎはバーにいた」


ラギィが切り込む。


「従兄弟の被害者の自宅の近くね」

「ああ。そうだ」

「バーに行くまでは、ずっと自宅にいたんだよな?」


面倒臭そうなブレイ。


「そうだ。自宅にいちゃ悪いか?夜は出歩けと?」

「ホントにそうだった?ドアマンに聞くわよ?」

「ドアマンはいないょおまわりさん」


トムデも切り込む。


「ドアマンはいなくても、近所の人やクレジットカードの履歴を調べればワカル。もし、アパートにいなければ、即わかルンだぞ」

「わかった、わかった。バーに行く前にタバコを買いに露店へ寄った。友達には内緒ナンだ。やめたんだが、タマにどうしようもなく吸いたくなる。だから、ATMに寄って金をおろしてタバコを買い、何本か吸って後は捨てた」

「それは何時?」


まるで夫唱婦随だw


「覚えてないよ」

「ATMを確認スルぞ」

「確認して俺に教えてくれ」


取調室を出て逝くトムデとラギィ。溜め息をつくブレイ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室を出るや即スマホを抜くトムデ。


「そぉだ32丁目の角の露店だ。あぁ待ってるよ」

「あ!アパートを出た。リサマだ!」

「マジかょ?」


捜査本部のモニターで防犯画像を見てた僕は大声w


「時刻は10時18分」


ドアマンと談笑しながら外出するリサマの画像だ。


「ソレから車に乗れば、10時34分までにワイル宅には着くぞ。余裕だ」

「犯人が現場を去ったのは10時52分だとワカッテル。つまり、重要なのは彼女が何時に戻るかね」

「了解ありがとう。どうも」


スマホを切って戻って来るトムデ。


「銀行によるとブレイは確かに金をおろしてる」

「何時?」

「夜の10時39分。犯行時刻のど真ん中だ」


頭を抱えるトムデ。


「ブレイは犯人ではなかった」

「リサマが帰ったぞ」

「おい、時刻は…何時だ?」


僕は、両手で顔を覆いながら尋ねる。


「10時47分」

「犯行時刻の真ん中だ!ウソだろ」

「リサマも違う」


僕とトムデは顔を見合わせる。


「確信してたのに」

「僕もだ」

「なんてこったパンナコッタ」


溜め息をつくラギィ。


「もう遅いわ。今日は終わりにしましょう」


タブレットを小脇に抱え、本部を出るラギィ。


「おやすみなさい」


力なく手を挙げる僕とトムデ。


第4章 出番


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「ミユリさん、ただいま。手紙?何を描いてるの?」

「便箋を取りに来たつもりが、いつの間にかマッジの演技を称賛する手紙になってしまって」

「ヤメなょミユリさん」


カウンターの中でワインを飲みつつ手紙を描いてたミユリさんは、フト手を止め両腕をダラリと垂らして僕の方を見る。


「だって、マッジはミユリさんのライバルだろ?ライバルは賞賛するんじゃなく、ぶっ潰すべきだ」

「テリィ様、大丈夫?」

「モチロン大丈夫さ…いや。マッジによろしく」


ミユリさんは、僕のコトを心配そうに見上げる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田リバーの向こうにソビえる"秋葉原マンハッタン"。摩天楼の麓に、プラネタリウムの影のような街のシルエット。


オレンジ色の日の出。万世橋(アキバポリス)が朝焼けに染まる。


「夏目漱石の件で進展があったわ」

「生きてたとか?!」

「いいえ。その時のモーテルの受付が池袋の乙女ロードにいて、治安紊乱罪で捕まった…起きて!」


署内の応接ソファからテキサスブーツがハミ出てる。

寝てる男を蹴飛ばすラギィ。ピンクの襟巻きしてるw


「ベニィ!何で急いで秋葉原を出ようとしたの?」

「ツキが巡ってる気がしてね。急にカジノをやりたくなったワケさ」

「夕べは、随分とはしゃいだモンだな」


ポリポリと頭をかくベニィ。


「ソレは…君達ヲタクな警察が向こうの警察と話をつけてくれたんだね?感謝するょ」

「どーしても貴方とお話ししたくて」

「協力スルさ、モチロン…だが、もっと小さい声で頼む。頭にガンガン響くンだ!」


完璧な二日酔いだ。太陽が黄色に見えてるに違いナイ。


「先週の木曜だけど、夏目漱石がモーテルに来た?」

「あーなんとなく覚えてる」

「どんな子だった?」


両肩をスボめ、手のひらは上に向けるw


「まぁ無理すりゃヤレるかな」


ヤル、ヤラナイが全ての判断基準だw


「他には?」

「まぁ背は低い方かも」

「この男に見覚えはある?」


従兄弟のブレイの写真を見せるラギィ。


「あはははは。こいつは完全にヤバかった。先週の木曜だったかな。高級車で現れて2階の端の部屋に直行したんだ。何分かした後、俺のトコロに来て、アンタ達と同じ質問をした。"部屋を借りたのは誰だ?そいつの特徴は?"」


ブレイは、茶のジャケットに青いシャツの襟を出してる。


「夏目漱石は、部屋の借り主が誰だか知らなかったのか?なぜ知らナイのかな」

「だろう?だから、俺は言ったょ。なぜ知らない奴が借りた部屋に入ルンだって。入る方がおかしいだろ、普通。ソイツは車で走り去り、その後2度と顔を見ていない。バーイだ」

「そうね。日曜日に殺されたから」


胸の前で大きく十字を切るベニィ。


「あんな態度ばっかりとってちゃ当然だ。んじゃ、質問は以上だな?家に帰りたいンだ」

「あら。もう1点だけ確認させてょ」

「何だい?」


立ち上がったベニーは、そのままラギィを見下ろす。


「乙女ロードの警察に聞いたンだけど、貴方は、ストリップクラブのVIPルームで、ストリッパーに"着火"しようとして逮捕されたのょね?」

「うーん実はソレは全くの誤解ナンだ」

「疑問なの。なぜ時給900円のモーテルの受付係が1時間5万円のVIPルームにいたの?」


あっけらかんと答えるベニィ。


「カジノで儲けたからだ。ソレに尽きる。何せツイてたからな。じゃ失礼スルょ」

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっち待て。それ、ダミア・ワイルのバッグだょな?」

「誰ソレ?美味しいのか?」


彼の名入りのバッグを提げたママ尋ねる間抜けなベニィ。


「だから、殺された人ょ。何処でソレを?」

「えっと、どこにあったかな?頼む、おまわりさん、声がデカいんだ」

「何処にあったの?!」


構わず耳元で叫ぶラギィ。耳を押さえるベリィ。


「部屋にあったんだよ!」

「夏目漱石の部屋か?」

「貸して!返さないけど」


ベニーのバッグを奪い取り、中を開けるキャッスル。


「鍵が返却されないから見に行くとベッドはそのママで泊まった形跡がなかった。だから、掃除は不要だと連絡しようとしたら、ベッドの下にバッグがあった」

「中には?中に何が入ってたか言って!」

「だから、金だよ。大量の金!」


さらに、大声でラギィ。耳を押さえるベニィ。


「い・く・ら・な・の?!」


さらに、大声用に大きく息を吸うラギィ。ベニィは即答w


「999万円だ」

「貴方、使い果たしたの?」

「人生最高の3日間だったな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


何だかマトモに働くのがバカバカしくなって、その夜は全員が"潜り酒場(スピークイージー)"に集まる。僕は黒ジャケットに紫のシャツ。


「テリィたん、安いモーテルに大金。激怒するワイル。何に巻き込まれたかわかったわ。理由は…」

「脅迫さ。ラギィ」

「ソレしか考えられナイわ」


こーゆー感覚は、僕とラギィはピッタリだ。


「先ず、脅迫犯はワイルにモーテルに行くように指示」

「その犯人は、ワイルの弱みを握ってる」

「でも、ワイルと同じ社内の人間だから、絶対に正体を知られたくナイのね」


サクサク進む推理。ミユリさんはカウンターの中で微笑む。


「だから。電話で指示をしたんだ」

「ベニィに部屋を借りた人の特徴を聞いて…」

「その後、ワイルは戻って金をベッドの下に置いた」


僕とラギィのテンポに割り込めないトムデw


「ところが、犯人が金を回収に行く前にベニィが横取りしちゃったw」

「そりゃ脅迫犯は激怒スルょね」

「ソレで音波銃でドキュン」


僕達の掛け合いに最後まで割り込めないトムデ。ザマ見ろ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。ベニィがOL達の写真を首実検スル。


「彼女でもナイ…しかし、ヤタラ美人が多い会社だな…違うな。違う。違うが、俺はヤリたいけど。違うし、ヤリたくもナイ。違うな。でも、ヤレるカモしれない…いた!この子だ!」

「安いモーテルに部屋を借りた人はこの人?」

「YES」


写真を摘み上げる。真面目そうな1枚。


「レベカ・スラグ。検査技師よ」

「コレは冷酷な瞳をしてるな…ワイルの死に逝く苦悶を見て冷酷に楽しんだ女の目だ!」

「ゾッとスルわね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部。大泣きする白衣のレベカ。


「◆☆℃∬∮□⌘◉➗√⁂!」

「な、何だって?」

「ヤメとけば良かったって。失恋して大泣きしてる女友達を何人も見てるから、こーゆーのには慣れてる。レベカ、何をヤメとけばよかったの?脅迫って何?」


大泣きしながら、何かを訴えてるレベカ。


「□⌘◉➗√⁂◆☆℃∬」

「正しいコトをしたかったのね?」

「℃∬∮□」


大きくうなずいてる!


「ソレは…誰に対して正しいコトかしら?ねぇ。貴女に共犯はいるの?」

「私1人でやりました」←

「じゃあ何の話をしてるの?」


「ベンゾファイオソフィーム」

「え。何?さすがにワカラナイわ。何か悲しいの?」

「ベンゾファイヲソフィーム」


僕が知恵を授ける。


「ソレ、放射性物質の名前じゃないか?」

「貴女、検査技師ょね?」

「◆☆℃∬∮□⌘◉」


激しくうなずくレベカ。


「商品に混入してはならない、そのベンゾ何チャラが混入したのね?」


さらに激しくうなずくレベカ。


「ソレをネタに脅迫をしたのか?」


超絶激しくうなずくレベカ。


「そのコトについて、会社に報告はしたの?」

「しました」

「で、ワイルはどーしたの?」


キッパリ答える白衣の検査技師。さっきのはウソ泣き?


「何も!」

「で、そのベンゾ何チャラを含む商品が市場に出回った?」

「その通りです」


泣き崩れるレベカ。


「人体への影響はどうなんだ!」

「ありません。ラドン温泉に入るより軽微。だから、カラダには良いカモ」

「でも、黙って使っちゃダメでしょ!ソレで貴女は儲けようとしたのね?999万円を払わないならマスコミに公表スルと脅した?」


大泣きするレベカ。


「そうです!」

「やり過ぎたわね」

「わかってます。だから、何とか罪滅ぼしをしたい」


泣いて訴えるレベカ。


「もう手遅れょ」

「全額お返しします」

「もう死んじゃったわ」


力説するレベカ。


「お金は未だ手をつけてません」

「お金?殺人なのょ?」

「殺人?誰を?」


目を白黒させるレベカ。


「ワイルを殺したでしょ?」

「ワイルさんを?殺してません!」

「でも、お金を受け取ったの?」


ソレは首肯スルw


「はい。ベッドの下から確かに…でも、未だ手をつけてません!明日、能登地震の支援に寄付しようと思って」

「ソレは見上げた心意気だけど、何処のベッドの下?」

「安いモーテルの」


話がつながり出す。


「神田リバー沿いのモーテルね?で、いくら?」

「999万円でした」

「じゃあベニィが使ったお金は…」


絶句するラギィ。率直な質問が追い討ちw


「ベニィってどなたですか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び"潜り酒場(スピークイージー)"。何と捜査本部にあったホワイトボードが持ち込まれてる。本部では煮詰まったのカモ?笑


「999万円。新札で検査技師レベカ・スラグのクローゼットから見つかったって」

「1回の脅迫で金が2度払われてる。レベカは2つ目のバック入り999万円を見逃したンだ。ソレを後でベニィが見つけたンだな」

「ワイルの口座を洗ったけど、支払った形跡はなかったわ」


カウンターの中のミユリさんから確認の質問。


「ねぇラギィ。ワイルが脅迫犯に999万円を払わなかったらどうなるの?」

「え。うーん放射性物質の混入の件がマスコミに流れるって感じ?ミユリ、何かヒラめいたの?」

「仮に、だけど、あくまで仮にワイルが大損や訴訟を覚悟で商品回収に乗り出そうと考えてたら、どーなるかしら?」


僕も何となくピンと来る。


「会社と利害関係にある株主や人物は阻止に回るだろーな」

「ソレを未然に防ぐ確実な方法は、脅迫犯にお金を支払い、ワイルを殺すコト?」

「従兄弟のブレイは、会社の株を大量に所有してるわ」


僕が釘を刺す。


「でも、彼にはアリバイがアル。一方、放射性物質を混入させて商品を製造したリサマは、会社から背任で訴えられ、刑事責任も問われかねない」

「でも、彼女にも立派なアリバイがアル!」

「…何か見落としてるわ、私達」


僕とトムデが、互いに見つけて来た容疑者を潰し合っていると、ヲタッキーズのエアリとマリレが…怖い顔して御帰宅w


「テリィたん!」

「ヘヘヘイ!メイドさん達。スネ毛にサヨナラのツルツルひざ下ケアの効果はテキメンかな?」

「良いから来て」


いきなり耳たぶを摘まれバックヤードに連れ出されるw


「な、何があったんだょ?」

「ベンゾファイアソフィーム。テリィたん、知ってたの?」

「え。まさか新品のスネ毛ケアクリームにもベンゾ何チャラが?…どーしてわかったの?」


目の前にスプレー缶を出される。


「缶の成分表に描いてアル…だから、熱いのね?」

「放射性物質とは逝え問題はナイんだ。ソレに、未だ1回しか使ってないンだろ?ましてや、君達は"覚醒"したスーパーヒロインだから…」

「そーゆー問題じゃナイの!」


サンプルのスプレー缶を僕の胸に押しつけるw

そのママお出掛け。仕方なく御屋敷に戻ると…


「テリィたん。時間の問題だった!」

「そうだょスーパーヒロインなら平気だ」

「殺人の話ですょテリィ様」


今&元カノが変なテンションだ。トムデを見る。


「何のコトだ?」

「さぁサッパリだ」

「2人の話を聞いてたンじゃナイのか?」


呆気に取られ、茫然と立ち尽くす僕とトムデ。


「ミユリさん、どこへ?」

「ワイルの殺害現場です。犯人がわかりました!」

「誰?」


構わズお出掛けスル今&元カノ。毎晩こんな感じナンだ。コレじゃ御屋敷(メイドバー)はますます商売上がったりだょなワカルだろ?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


真夜中の殺人現場。非常線の黄色テープをくぐって入る。


「犯人は、ワイルの胸を音波銃で撃った。こんなに血が流れてる。部屋は暗い。犯人は、何とか血を手につけ、ココに動物愛護NGOが描き殴ったポイ感じの"ルージュの伝言"を残す。モチロン、動物愛好家達に罪を着せるタメょ。タダ、結構な量の血が必要で、思いの他、時間がかかった。何度も往復している内に時間がかかってしまった。すると、裏から物音が聞こえた。手を止め、犯人は考える。そして…逃げるコトにしたワケ」

「ラギィ。被害者が頭を殴られてるコトを忘れてるぞ!」

「テリィたん、ソレ後で。玄関から逃げ、通りを渡ってタクシーを止めると、時刻は大体10時40分ょ」


話を続けるラギィにトムデも異議を挟む。


「本のコレクションの盗難も忘れてるな」

「テリィ様。ソレからソチラのイケメンさん。その時、物音がしたのです。"もう1人の犯人"が現れた物音です」

「"もう1人の犯人"は、ワイルが既に死んでる、あるいは既に襲撃されて虫の息とは知らない誰かょ」


僕とトムデに、今&元カノもツープラトンで回答だ。


「"もう1人の犯人"は、裏口から侵入し、暗闇の中で寝てるワイルの後頭部を重いモノで殴った」

「つまり…犯人は2人いたってコト?」

「で、本のコレクションを盗んだのは2人目ってコトか」


何となく納得スル僕達。


「ショーケースの中の本のコレクションを出すのに数分かかるわ。ドアを出る頃、時刻は10時52分」

「その頃1人目の犯人は帰宅して、マンションの防犯カメラに証拠を残してアリバイを成立させる」

「一方、ワイルが音波銃で撃たれた時、2人目はタバコを買うのに、わざわざATMを使って証拠を残し、コチラもアリバイが成立」


ドヤ顔の今&元カノw


「つまり、犯人は2人。リサデとブレイの2人ともが犯人ょ。ソレによって偶然にもお互いのアリバイを証明し合っててたってワケ」

「確かワイルは記者会見を予定してたょな?でも、ソレは動物愛護NGOについてじゃなく、商品リコール、つまり、自主的な回収についてだったンじゃナイか?」

「リサデとブレイの2人は、その話を、それぞれ聞き、それぞれ阻止しようとした。そして、それぞれの殺意でワイルを殺し、それぞれ脅迫犯に金を支払った」


ココからは、ラギィの仕事だ。


「2人とも短時間の間に、それぞれ999万円ずつ集める必要がアルわね。それぞれ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌朝。"秋葉原マンハッタン"にオレンジ色の太陽が昇り、朝焼けが捜査本部の窓を染めて逝く。僕達は…働いてるw


「2人とも銀行や投資信託年金から、確定拠出型年金にも手を出してる。それぞれ何とか999万円カキ集めてるわ」


マジックミラー越しに取調室の様子を伺う今&元カノ。

僕達とヲタッキーズが"2人の犯人"を取り調べ中だw


「ブレイは借金まみれだった。会社の株が暴落すれば、全てが終わって破産だわ」

「リサデは?」

「製造責任を問われ、蔵前橋(けいむしょ)にブチ込まれるのを免れたかった。その一心だった」


マジックミラーの向こうでリサデは額に手を当てる。


「悲惨な事件ね。正しいコトをしようとして殺されるとは」

「テリィ様もイケメン君も結局正しかった。そして、両方に花を持たせたラギィ。貴女もお見事ょ」

「まぁそうするしかなかったの。アキバのヲタクは、みんな虚栄心の塊だから」


肩を震わせ笑いを噛み殺す今&元カノw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


長ーい取り調べを終えて、廊下でトムデと顔を合わせる僕w


「トムデ…捜査協力、助かったょ」

「テリィたん。俺達は同じ"ワンチーム"だろ?」

「そだな。また何処かで」


捜査本部の廊下で、それぞれ別れる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


お隣のギャレーでは、ヲタッキーズがくだをまく。


「1つの事件に犯人が2人か。コレは記録に残る事件ょね」

「ダンクシュート!」

「入った!ランジェリーバスケに出よっかな」


ピザを食べながらゴミ箱相手にシュートの練習に余念がないヲタッキーズ。僕は片手を上げて挨拶しながら声をかける。


「ラギィは何処だ?ミユリさんが事件解決のお祝いしようって言ってるけど。エアリ達も来いょ」

「thank you。姉様から話は聞いてる。ラギィは、逮捕の手続きでもしてルンじゃナイ?」


そっか。署内を探してみよう。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


オレンジ色に染まる捜査本部。廊下の際に立つラギィを見つけて、声をかけようとしたら…トムデが現れ、2人はキスw


僕は無言で回れ右。ギャレーに駆け込む。


「あら。テリィたん、いたの?」

「…ラギィ?もう帰るトコロさ。一見落着おめでと」

「良いヲタ友がいるからょ」


そう逝いながら、指先で唇をなぞるラギィw


「御帰宅して、少し眠るょ」

「そぉね。テリィたん。ありがとう」

「ヲやすみ。じゃあね」


西陽のような朝の光が、ラギィの横顔を染めて逝く。



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"交換アリバイ"をテーマに、セレブ御用達の男性化粧品メーカーのCEO、モデルの恋人、化粧品メーカーの製造責任者達、メーカーを攻撃する動物愛護NGO、化粧品の製造責任者、相互に補完する2つのアリバイ崩しに挑む超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部、そして警部にチョッカイを出す警視庁エリート捜査官などが登場しました。


さらに、ヒロインのミュージカル主演騒ぎなどもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかり国際観光都市としての顔を取り戻した秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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