特殊能力
「おい…まだあるのかよ…」
コツコツっと笑顔で真冬が近づいてくる。エリスも隣で汗をかいていた。おそらくこの危険信号を感じていたのはエリスもらしい。動けない。動くと殺される気がする。
動くと殺される、喋っても殺される。僕達は動けずにいた。
あっという間に僕達の前に来た真冬はニヤリと笑った。いいや、こいつは真冬じゃない。じゃあ誰なんだ…?
「グゥッフ…!!!!」
「…え?」
一瞬にしてエリスが吹っ飛んでいった。
何が起きたのか。全く見えなかった。
「あいつはやっぱり弱いな、こんなのにやられるなんて」
「お前…いったい…」
「あぁ、今は真冬だけど真冬じゃない。話せば長くなるけど、どうせ今日死ぬんだから話してもいいか。俺は紛れもなく渚真冬。昔化け物として生まれてしまった、もう一人の俺」
「化け物…?」
「そう。さっき聞いてたでしょ化け物の話。あの事件は実話で俺自身の話なんだけど妹の復讐のためここに呼び出した時最初は話し合いだとかその程度だったんだよ?あの時まではブレーキがついてる真冬が居たからね。でも真冬自身がブレーキをしていながらも殺したいと望んでしまった。そこで人間の真冬と化け物の真冬が分裂してしまったわけね。」
「…」
「あの事件以降真冬は俺を閉じ込めた。いつかまた人を殺してしまうとでも思ったのかな」
「真冬の言ってた化け物ってのはあんただったのか…」
「そういうこと。だからサタンと契約できたのは正解だったね。特殊能力で真冬が俺を出して今まで閉じ込められてた分暴れられるし」
「特殊能力…?」
「ん?その感じ特殊能力知らない?ちゃんと教えてあげなきゃだめだろ〜レヴィアタン。」
「黙れ。そんな危ないものをポンポンと教えられるか。貴様のようなアホと同じにするな。どうせ代償はもう片方のお前もちなのだろう?」
「その通りっ!でもあいつが望んでやっていることだし、あいつはこの身体がどうなっても文句は言えないわな〜」
「あの…何の話を…」
「あぁ、君は知らないんだったね。そっちの豚にも教えてあげるよ。とはいっても悪魔によって能力は違うけどね。簡単さ、それぞれの悪魔には特殊能力があってそれを大罪人が使えるってだけ。ま、その分代償がある。俺の場合は特殊能力が人格チェンジ。代償はもう片方に戻った時にもう片方の俺が頭痛や精神的苦痛を負うことになる。」
…特殊能力…。初耳だ。それに代償とは言っても真冬の場合チェンジするまではノーリスクということになる。きっと僕にもそういった力があるんだ。
真冬はパンっと手を叩き言った。
「おっと。話しすぎたね。そろそろ死んでもらうよ君にも」
真冬は右足を振り上げられた。これ、当たると死ぬやつだ。
僕はここで終わるのか…
「じゃあね。立花凛くん。」
身動きも取れず死を覚悟した僕は目を瞑った。
すると横からフゥンと一直線に槍が飛んできた。
「しつこっ!」
目を開けると槍を真冬は振り上げた右足で蹴り飛ばしていた。
槍が飛んできた方を見た。
そこには脇腹を抑えハア…ハア…と息つくエリスが立っていた。
「ベルゼブブ…ワタシも…特殊能力を使いまス…!」
「なっ…!いいのかエリス」
「ハイ…悔いはありませン!!初めてなので不安はありますガ…」
「分かった。」
空気がピリつく。
そしてエリスは空に向かって叫んだ。
「特殊能力、ブラックホール!!!!!!!!!!!」




