渚真冬
「兄さん…?」
小春が目の前の男をそう呼び、一同は驚きを隠せなかった。
眼鏡をかけ、左目に眼帯、サラッとした黒髪。身長は170くらいだろう。それにこの地区で一番エリート高校として有名な[私立皇帝高校]の白い学ランを着ていた。
こいつが、小春の兄さん…?
そんなはずは…でも確かにこいつから今も気配を感じてしまっている。エリスの威嚇している表情からもこの気配は間違いないらしい。
…大罪人の気配。
相手のことが分からなすぎる。ここで暴れられても困るし、何よりこいつに勝てる気がしない。
「そう身構えないでくれないか?そいつの言う通り兄の渚真冬だ。」
「そう言えば僕に用みたいだね。みんなは先に帰ってくれないかな?」
もしかしたらエリスのように仲間になれるかもしれないんだ。コンタクトはとってみよう。
僕は振り返って駆けつけて来た四人にそう言った。エリスは前に言ってたが戦闘経験がないどころか日々訓練とかもしていないらしい。巻き込む形になってしまうと可哀想だ。
その気持ちを汲み取ったのかこちらを見て不機嫌な眼差しを送ってきたが振り返り、立ち去る際に「ご用心ヲ」と言い、スタスタ帰って言った。
他の三人もエリスに続いて帰ろうとする。
宮野と宙も気まずそうに帰って行った。
小春が鞄を肩にかけ、僕の耳に囁くようこう言った。
「兄さんには、気をつけて。」
そう言い、小春も帰って行った。
その場に二人だけとなり真冬は眼鏡をカクッと上げ話始めた。
「立花凛。」
「なに?」
「分かっているんだろ?俺が尋ねて来た理由」
「理由は分からない。ただ正体は知っている。」
「ん?正体が分かっているならやることは一つしかないが?ああ、なるほど。前例がそうじゃないから淡い期待を抱いて一人になれたわけだ」
真冬は笑いながら語っている。
真冬の言う「淡い期待」というのはエリスのように仲間になること。
これはやばいかもしれない。
僕は小声で右手のレヴィに話しかけた。
「レヴィ」
「ああ、いつでも行けるぞ。」
レヴィもいつでも戦えるみたいだ。
すると真冬が楽しそうに話かけてきた。
「相棒と作戦会議か?今ここでやる気かい?ここ君の学校だけど?」
「目的は分かった。理由ももういい。今なら殺さずに見逃すよ」
「見逃す…?殺す…?クフフ…クフ…」
自信はない。実際にここで戦いになったらまた僕はあの時を繰り返すことになる。
凛の頭の中にはレヴィと出会った日のあの学校がフラッシュバックする。
真冬を脅すと笑い始めた。
「何がおかしい?」
「君、脅し慣れてないね。ここで暴れてダメージが大きいのは君なのに…クフフ。面白い」
本当にここで暴れるのか…?戦わなくてはいけないのか…?また…
「分かった。ここは立ち去ろう。だが…」
真冬はスタスタとこちらへ歩いてメモ帳の紙切れを渡して来た。
「明後日 〇〇丘の工場跡地へ一人で来い。
誰にも話さず来い。二つのうちどちらかまたはどちらも破った場合は、あいつを殺す。」
僕は真冬を思いっきり睨みつけた。
あいつ、これは小春のことだろう。
「お前、妹をなんだと…」
「おっと、それ以上は手紙の場所で語ろうな」
そう言って真冬は去って行った。
「ふう…なんとか乗り切った。」
「凛」
「ああ、分かってる。あいつを倒そう」
今回もありがとうございました。次回もお楽しみに。




