9月1日
夏休み明けの一日目というのは特別な日である。
男子三日合わずんば刮目して見よ、ではないが
一学期の4ヵ月で仲良くなったと思いきや、1ヵ月のブランクを経て新鮮な目で相手を見れるマジックアワーの様なひととき。
尚、親しい仲より少し距離のある間柄の方がより顕著な模様。
ガラガラっ。
「ほら、お前ら席に着け!……久しぶりにクラスメイトに会えて浮かれてるのは分かるがな?
少しは落ち着けや。じゃ、オリエンテーション始めるぞ」
~拓の場合~
やっべー!!!あんな、可愛かったっけ天道さん!?
いや、前から可愛いとは思ってたけど、なんて言うか夏休み前はちょっと子供っぽかったんだけど今はお淑やかになったというか。
女の子らしさが増したって言うか。
うわ、さっき心の準備が出来てなかったから変な態度取ってなかったかな!?
~麗香の場合~
ああ、拓君ってばしばらく会わないうちに日焼けしてやんちゃ感が増したというか。
部活を頑張っていたおかげで気持ち、体つきも筋肉がついて逞しくなってて……。
でも先ほどから何故か百面相しているわね?
なにか新学期早々心穏やかではいられない事があったのかしら・・・
ハッ!?さては、私の魅力を再認識して身悶えしているのでは!?
~学の場合~
……久しぶりに見たけど、二人とも表情豊かだなぁ。
拓は拓で身悶えてるし、麗香は身悶えしている拓に身悶えしてるし。
一学期では観なかった表情だけど、この夏で何か変化があったのかなぁ。
~星奈の場合~
あーあ、学の奴、また拓と麗香の絡みを楽しんでる。めっちゃニコニコしてるなぁ。
ほんと拓と麗香を観察するの好きだなぁアイツ。……そんな事言ってる私も観られてないよね?
……セーフ。
「なあ、ほんと落ち着けや。いや、ほんと落ち着いて?なあ、ちょっとでいいから先生の話聞いて?お願い。ほんとお願い」
「試験はともかく体育祭に文化祭、球技大会にマラソン大会に目白押しだね二学期」
私は麗香に目線を送る。
「そうね。でも運動系が多いわね。私は文化祭ぐらいしか出番ないかな。……拓は、活躍の場面多そうね?」
麗香が少し恥じらいながら拓に視線を向ける。
「おおよ!折角だから大暴れするよ!俺の活躍見てくれよ!他の運動部には負けないからさ!」
その拓の言葉を聞いて学はコクコクと頷いてる。
「うん。めっちゃ観てる。この秋の主役の一人は君だ」
うんうん。誰にアピールしてるか分からないけれど、たぶん絶対君じゃないので普通にキモいよ学。
「この夏ラジオ体操ぐらいしかしてなかった学は何もできそうにないね?」
「俺は何もする気ないからしょうがない」
しょうがない、ってことはないケドそういうならしょうがないか。
「って、ラジオ体操出てたの?」
「うん」
「……高校生にもなって?え、あ、っちょっと待って?星奈もなんで知」
「ん?私も家近所だから同じ公園なんだよ」
「……私たち、高校生……」
「?うん、そうだね」
おかげで学ぶとは久しぶりに会ったって気がしない。
「でも私たちの夏の運動ってそれぐらいだからなぁ。だいぶ体力落ちてる気がするよ。きっと私も応援する側かな?」
「だ、だったらさ、俺、頑張るから応援してくれよ!」
「うん、私たちの分まで頑張ってね、拓♪」
夜中。
『久しぶりに皆と会えて楽しかったね』
『そうでもない』
『うそ。メッチャ拓と麗香を観てた癖に”(*>ω<)o"クーーッ』
『そうでもない』
『二学期も楽しみだね』
『そうでもない』
『色々この秋は楽しい事ありそうな予感するね』
『そうでもない』
『たまには私の事も見てよ?』
『明日な?』
そのLINEの返事を見て私はニンマリとして眠りについた。