第8話【弱者に送る言葉。】
「頑張って」という無責任な言葉に、今日傷ついた人たちへ。
「なぜ?」という疑問の目に、自信を無くした人たちへ。
「戦えよ!」という圧迫に、逃げ道を失った人たちへ。
僕は言わない。僕は問いかけない。僕は強制しない。そのかわり、一歩だけ逃げて欲しい。その勇気だけが必要なんだ。
さあ、どこまでも逃げよう。誰もいない場所でもいい。自分の部屋の中でもいい。ただ、逃げ続けよう。
大丈夫。日本は割と優しい。なんとか生きてはいけるさ。その分、逃げるんだ。どこまでも。
もう、充分苦しんだ。だが、どこへ行っても苦しいものだ。どこにでも落ちている。悲しみも苦しみも。
そいつらに見つかったらまた逃げよう。どこまでも逃げよう。どこまでも。
ただ、そこにもきっとある。美しいものが。今の君には見えなくていい。見えなくていいんだ。
全ては時間が解決してくれる。どう生きても君は歳を取る。ちゃんとそうできているんだ。
だからいつか、それが見えればいい。それまでは逃げ続ければいい。何も悪いことじゃない。
僕は許そう。その今迷っていることから逃げる事を。だから、君も君を許してやってほしい。どうか。許してやってほしい。
もし、許せるのなら。子供の様に泣こうじゃないか。弱弱しく、今ここで泣いていると。子供の様に泣こうじゃないか。
その代わり、ともかく生きようじゃないか。
頑張らなくていい。その代わりに頑張らない自分を許そう。
自信なんて必要ない。その代わりに自分を可愛がろう。
戦わなくていい。その代わり思いっきり逃げよう。
腕を傷つけてもいい。その代わり薬は処方された通りにね。
目を閉じて、何も見えなくなってしまう前に。
どこまでも逃げよう。
皆、本当に沢山の皆が今逃げている。
何も恥ずかしい事じゃない。
逃げよう。泣こう。社会のせいにしよう。
勝手に立ち上がるまでは、沈んでしまおう。
本当に自分で息を吸いたくなるまで。沈没船の様に海底で眠ろう。
人は際限なく傷ついていく。それが悲しい。でも、傷も影もない人間なんて、魅力の欠片もないのです。そして、そんな人間はきっといないのです。