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第26話【世界の終わり。その一例。】

 生きとし生けるもの。終わりは時に突然。わかってはいた。わかろうとしていた。つまりは、わかっていなかった。


 いつもと大きさは変わらない太陽。僕らはそれから逃げていた。光のない闇へ闇へと。逃げ惑っていた。


 わずか3時間前、2000光年の彼方で起こったと言われるガンマ線バーストが地球を横切った。2000年の旅。僕らの大事な防御壁。オゾン層を根こそぎ奪って。


 何が起こったのかわからなくて、でも空はあまりにも綺麗なカーテンが多量に踊っていて、僕らも気楽に喜んだ。


 だが、太陽に目を向けた瞬間、大きな二つの光の輪が目に焼きついたその時、僕は視力の半分をさらわれた。


 僕はまだマシかもしれない。すぐに木陰に隠れたから。物珍しそうに空を眺めていた人々は、その脅威に気づいた時には全てが遅すぎた。


 沢山の断末魔が、不協和音を奏でる。負傷した目を押さえていた手は、自然に耳へと移行する。


 色々な者が焼けている臭い。火事の比ではない。その天から降り注ぐ怒りの炎は、アスファルトも車も全てを溶かしていく。


 これが、地獄か。ほとんど視力を失った目をなんとか開き、静かに観念する。



 それから何時間経ったのか。地獄は一時的に去った。つまり夜が来た。それでも皮膚はジリジリ音を立てる。汗は一向に引かない。


 どうやら夜らしいが、そもそも自分がまだ生きているのか。実感は乏しい。


 人の行列が目の前を通りすぎる。この熱い中、長袖を着て。大きい人や小さい人。皆、可笑しな恰好をしているなと、笑みがこぼれる。


 これは、ハロウィンか?いや、こんな日に賑やかで結構結構。


 皆スイカをくり抜いた物やカボチャをくり抜いたものを被っている。


 もう、僕の乏しい視力では詳細は分からないが、恐らくスイカの中はサングラスをかけているのだろう。黒目が大きくて、可愛いハロウィンだ。


 どうせ、逃れられないのに。もう、地下へ逃げようと。何処へ隠れようと。この空はこれからずっとこの脅威を一日10数時間人々に与え続けるのだ。


 逃げた先は、恐ろしい地獄。今度は人と人との恐ろしい地獄。僕は、もう、ここから動く気にはとてもなれない。



 この残り少ない視力が捉えるものは、美しいオーロラ達。そういえば、一度でいいからこの目で見てみたいと思っていたんだ。


 さあ、朝よ来い。もう、僕は闇へは逃げない。その光の中。静かに入って行こう。連れて行ってくれるんだろ?もっと遠くへ。


 空がほんの少しずつ光を帯びていく。僕は一度目を閉じる。体が少しずつ燃えていくのを感じる。そして、その感覚は少しずつ消えていく。



 聞きなれた機械的な音楽が鳴り響く。仕方なく僕は目を開ける。


 ・・・勘弁してほしいな。夢落ちなんて。・・・ふう。あまり夜空にばかり想いを馳せるもんじゃないな。


 嘘の様な本当の夢。いや、実際は目を開けて相当安心したんですが。ね。つって。

実際、本当に怖かったわけですが。単なる夢をここに書くのも・・・まあ、ありですかね。

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