第2話【道しるべ】
人の生活とは、すなわち点。そしてそれは、時間という筆を通して線になる。
もはやこの景色は人の線によって塗りつぶされている。全種類の色鉛筆で書きなぐられたカオスな世界。それでも、目を引くものもある。ほんの少し大げさな色合いで塗りつぶされたエリア。そこではきっと、旅人が立ち止り涙を流したに違いない。俺なら、私なら・・・。
映画、マンガ、ドラマに小説。そんな影響だろうか?あまりにも可能性のない道を意気揚々と進むものがあるのは・・・。ほら、今まさに歩きにくそうな道を選ぶものがそこに。目をギラギラさせて、九分九厘不可能な道を歩き始めている。歩くがいい。結果を求めないでいられるのならば。
ふと他に目をやれば、ボールペンを紙の一点に押し付けた様に、暗いエリアを作り上げるものもいる。暗くてよく見えない。その眼差しが。その意志が。彼の歩いてきた道もだいぶ絡めとられてしまって、なかなか見出すのは容易ではないな。
それでも少し引っ張ってみるか・・・。いや、やめよう。それが真っ直ぐな線だろうと、所々ドラマチックに輝き絡まった道だろうと、今の彼がいるエリアはそこなのだ。
また、不可能な道を歩む彼に目をやる。・・・ほうら見ろ。大きく転んだぞ。そうら見ろ。立ち止まったままだ・・・。
そもそも、その線はいつか平等に途切れるのだ。天に昇るでもなく、地に潜り込むでもなく、いつかふっと。音もなく。ただ選んだ道しるべの指す線を辿って、わずかな形になるだけだ。
おや?暗い彼のエリアがほんの少し明るくなったか。闇夜でライターを灯したように、ほんのわずかではあるが。・・・なるほど。人に泣きついたか。手に入れた小さな哲学は歩かせてくれそうか?できるなら歩くがいい。でなけでばそこからは出られない。そこには道しるべすらないのだから。ライターなんてものはすぐ消えてしまうぞ?さあ、どうする。・・・だろうな。その光ではそんなもんだ。
ほう・・・色々な線が集まってきたか。なかなか君は運がいい。君が歩きたいと願えば・・・いや、飛びたいと思えば飛ぶこともできそうだぞ?思い描いていることが九分九厘不可能でも、そこにいるよりはましだと思うがな。・・・ほら。さっき大きく転んだ彼も、もう歩き始めている。君はどうする。生きてるんだったら、そこから出てみろ!
私は気まぐれな身だ。1厘がそこかしこに落ちているぞ。その暗い点を、君が自身のアートの一部にして見せるところも意外と期待しているんだがなぁ・・・。