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11月8日 村田慎二

 佐藤のお母さんが倒れたというのは驚きだった。気持ちが折れそうなのは、こっちの方だ。佐藤は、大学に行きたくてまだ行けないのに、俺は大学に行けるのにこうやってプラプラとしている。ダサイ自分に嫌気がさすとともに、何をしたいのだろうかと思い返してしまう。昨日の佐藤の話を聞いていると、山下もみんなで集まっているわけではないようだった。そうなれば、佐藤が絡むのは、谷口と村田しかいない。しかし、村田は勉強しているだろうから実質谷口しかいないということになるな。

 村田は、消防士になるという目標をもちながら、受験勉強を行う強者だった。野球部出身ということもあり心身ともにタフな印象だ。たしか、1番サードだったかな。野球の実力もたしかなものだと佐藤からは聞いていた。なのに、今は勉強一筋ってか。なんも言えねえな。懐かしいな、村田と初めて会った時。俺は、あの頃から、野球部やサッカー部が好きじゃなかった。何か恨みがあるわけじゃないけど、独特のノリがあり周りから見てると、なんかイラついてしまっていた。当時、村田は野球部に入っているのに、全く練習をせずグランドでせず、他の野球部員に見つからないように歩いていたのだ。俺と一緒にいた山下が、たまたま知り合いだった。しかし、村田は山下にあまり変わらず、当時腕につけていたブレスレッドに興味をもっていた。

 俺がつけていたブレスレッドは、歌手の堀隆史と同じ物で村田はそれを知っていてとても欲しがってきたのだ。そこで、グイグイこれる村田は、他の野球部とは少し違うのかなと俺は感じたのだった。他の奴らは複数人でグイグイくるが、村田は一人で来る。そんな強さが人気の一つの理由なのかもしれない。俺と意気投合した村田は、次の日から休み時間になったら俺たちの元へ来るようになった。本当は、野球部の練習があるのに、俺たちと放課後つるむようになり、練習をサボり怒られるという習慣になっていたのだ。アホだなと思いつつ、自分でそうしたことを考えれるのがいいなと気づいたら思っていた。俺は、テレビを見ながら、村田のことを考えていた。でも、おそらく今日も熱心に勉強しているんだろうな。

 そう考えると、ますます自分が生きている意味がわからない。なんとなく頑張っても、そこに意味がないことは今までの人生で気がついていた。それよりも、本当に熱中できる何かがほしい。そういう人生をずっと望んでいるんじゃないのかと気がついた。

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