10月26日 進路希望表
先生は、俺たちから集めた進路希望表を確認しているみたいだった。今日は、そんなに欠席者もいないからすぐに終わるのに、妙に時間がかかっている気がしたのだった。進路希望表は、白紙で出していた。こんなことをして怒られるのは目に見えていた。けど、わざわざ嘘をついてどちらかに丸をして出すほど、自分は素直ではなかった。昔からそうだけど、自分の思いを押し殺していると、なんだか偽りの自分みたいで嫌だった。それを、ちゃんとやっている周りがおかしいのか?やれていない自分がおかしいのか?
みんなと一緒に足並みを合わせるという簡単なことができていなかった。これを書いたからといって、人生何か変わるわけでもない。だったら、無理に書かなくていいんじゃないかという都合のいい理由づけを俺はしていたのだった。自分でもわかっていた。それが自分勝手であることは。でも、そうでもしないと自分の何かが崩れてしまいそうだった。すると、廊下の向こうから誰かがやってくる。じっと見つめていると、それは山下であることが身なりをみたらすぐにわかった。
山下「何時に終わる?」
俺 「うーん。16時くらいには終わるんじゃねーの」
廊下から声をかけてきた山下は、かなり目立っていた。
山下「じゃあ、その後どっかいこうぜ」
俺 「いいよ」
山下は、上手くクラスに溶けこんでいるみたいだ。たまたま、廊下側の席でよかった。まぁ、他の生徒も自由に話しているし、そこまで問題ではないのだろうけど。
山下「どこがいい?」
俺 「どこでもいいよ」
先生がいつまで、机に向かって作業しているのかはわからなかった。
山下「ボクシングか?」
俺 「昨日、行ったばかりだよ」
昨日、山下はいなかった。けど、全然問題なかった。正直、一人でもやれると思った。
山下「どうだった?」
俺 「ああ、楽しかったぜ」
山下「何してた?」
俺のことを心配してくれている様子だった。
俺 「掃除とかだな」
山下「よくやるよな、お前も」
これは、ディスってるのか?
俺 「お前がすすめたんだろ」
山下「そうだっけな?ハハハハ」
山下は、何か感じたみたいだ。さっきまで、教室にある机で作業をしていた先生が立ち上がった。どうやら、先生はどこか不機嫌そうだった。山下は、先生の動きを見て俺に挨拶をして自分の教室に戻ったみたいだ。




