10月24日 ボクシング
俺 「あそこって、俺らが卒業したらどうなんの?」
単純な疑問だった。
山下「どうもならないよ。ちゃんと使うよ」
俺 「そうなの?」
意外な答えが返ってきた。
山下「うん。この前、いったのが夕方だったからな」
俺 「夜、動いてるの?」
山下「ああ」
拳に力を入れた。
俺 「そうなんだ、知らなかった」
山下「いつも、あそこでトレーニングしてるボクサー多いんだよ」
俺 「へぇー。そうなんだ」
どうりで古いけど、キレイにされているわけだ。
山下「ボクシングとか興味ないの?」
俺 「興味ないとかいうより、よく知らないっていうのが本音だな」
ボクシング自体はよくわかっていない。けど、嫌ではなかった。
山下「なんかわからないとこあるの?」
俺 「わからないところだらけだよ」
練習から試合まで全てが未知の世界だった。
山下「えっ?そうなの」
俺 「ああ。ボクサーってホントにあるのっていう感じ」
手を叩きながら、山下は笑っていた。
山下「そりゃあ、いるだろ」
俺 「俺にとっては、それくらい遠い存在だよ」
山下「そうなんか」
山下にとってはボクシングは普通なのかもしれないが、俺にとってボクシングは特別だった。
俺 「意外だな」
山下「意外なのか?」
意外だろう。そんなもの。
俺 「うん。だって、あんな減量したら大変だろ」
山下「当たり前だろ、それは」
少し、個別の話にしすぎただろうか?
俺 「もっとブヨブヨのまま、試合したらいいのに」
山下「それは、見栄え的によくないだろ」
俺の中で、ボクシングは、お腹が出てもやっていいんじゃないかという考えだった。
俺 「でも、減量しすぎもよくないよ」
山下「まぁ、そうかもしれないけど」
どこか納得いかない様子だったので、ボクシングが楽しかったことを伝えることにした。
俺 「でも、この前ボクシングの楽しさが少しわかった気がしたよ」
山下「そうなのか?」
その通り。あんなに、気持ちよくケンカができる場所なんて、この世に存在しない。おまけに勝ち負けもつく。俺にとって、最高の時間だ。
俺 「ああ。こんなストレス発散ねぇよ」
山下「ストレス発散に使うなよ」
俺 「なんでだよ」
すぐさまツッコミを入れてしまうのだった。




