10月3日 奨学金
昨日に続いて、今日も二人で俺たちは話をしていた。相変わらずというかなんというか。
俺 「昨日の進学しないって、どういうことだよ?」
昨日の話に、俺はまだ納得いっていなかった。
山下「まだ、言ってんのかよ」
俺 「当たり前だろ」
さっきより声量が大きくなる。
山下「聞いてどうするんだよ」
俺 「参考にするんだよ」
山下は、いつものように冷静だった。
山下「お前は、誰かの話を聞くようなタイプじゃねえよ」
俺 「ハハハ。それは、そうだな」
結局、いつもの5人の中でスマしているのは俺だった。
山下「だろ?」
俺 「でも、秘密にする必要ねぇだろ?」
よっぽど話したくないのであれば、仕方がなかった。
山下「ああ。別に言えねぇ理由もないけど」
俺 「だったら、余計知りてぇよ」
山下は、口を開いた。
山下「そうか?実はさ、この前、オヤジが倒れてな」
オヤジがなぁ。
俺 「‥‥‥」
何も言えなかった。
山下「それで、大学行けなくなったんだよ」
大学に行けない?
俺 「奨学金とかでなんとかなるんじゃねえの?」
山下「俺の家、母さんも調子悪かったし、借りれる保証ねぇんだよ」
たしかに、奨学金を借りるには返せるという保証がいる。
俺 「‥‥‥」
山下の判断が合ってるのか?間違ってるのか?それはわからない。
山下「だから、大学には行かなねぇょ」
俺 「そっかぁ、、、」
聞いた割に上手く返せない。そんな自分がダサく感じてしまっていた。
山下「なんだよ、話した割に、なんもねぇじゃねえか。ハハハ」
俺 「そんな言えるかよ」
俺も、もう少し真剣にならないといけないのか?
山下「らしくねぇな」
俺 「うるせぇよ」
階段の端を見ながら答えた。
山下「お前は、どうするんだ?」
俺 「とりあえず、進学ってことにしとくよ」
昨日、先生にはそう伝えた。しかし、本心は自分でもわからない。
山下「進学かぁ。どこの大学なの?」
俺 「何も決めてねぇよ。やりたいこともねぇし」
これは、素直な気持ちだった。
山下「そんなんで進学決めたらもったいねぇぞ」
俺 「あぁ。そうだな」
山下の言う通りだ。テキトウに決めたら今後、後悔する。それでも、今、何をしたらいいかわからないというのが本音だ。




