10月2日 面談
気がついたら、俺は先生の前に座っていた。最初は、帰ろうと思ったが、先生は強制的に俺を残すようにしてきた。みんなを教室から出て行かせて、俺だけ残すように指示を出す。こうすれば、俺は帰ることができない。水城や柏木に声をかけながら残るのは憂鬱な気分だった。そして、みんなが教室から出ていき、今に至っていた。
先生「どうするんだ?」
俺 「別になんでもいいですよ」
面談をしているがやる気は全くない。
先生「それじゃあ、どうするんだよ?」
俺 「だから、時がきたら考えますよ」
いつまでたっても、話は平行線のままだった。
先生「だったら、今日してる意味ないだろ」
俺 「そうですけどね」
先生が怒らないように角度を変えながら話した。
先生「体育祭も終わったんだし、ちゃんと考えろよ」
先生の声もだんだん大きくなってきた。
俺 「じゃあ、とりあえず進学にしといてください」
先生「とりあえずって、お前なぁ」
先生が呆れているのがわかる。
俺 「じゃあ、俺行きますね。ありがとうございます」
先生「おい、待て」
先生は、必死に引き留めよとしていたが、聞いてないフリをして教室の扉を開いたのだった。これが正しいのかわからない。でも、何も考えても始まらないというのは本音だ。
結局、面談は、5分待たずして終わってしまった。廊下を歩いていると、50m程先に、山下が立っているのがわかった。
山下「面談、終わったか?」
俺 「すぐ終わったよ」
山下な、顔に指をつけながら、何かを考えているみたいだった。
山下「なんて言ったんだ?」
俺 「内緒だ。ハハハ」
山下は、呆れた顔をしていた。
山下「お前も大変だな」
俺 「当たり前だよ。山下は、どうするんだ?」
山下は、現時点で佐藤と一緒で進学を考えていた。しかし、どこの大学に行きたいということは聞いたことがなかった。意外と本心は隠すタイプだからな。
山下「何が?」
俺 「進学だよ」
手を見ながら、話し始めた。
山下「俺は、進学しねぇよ」
俺 「えっ?」
あっけにとられた。あれだけ、進学すると宣言したのに。なんでだ?
山下「どうした?」
俺 「なんで、進学しねぇの?」
ニヤつきながら俺の方を見た。
山下「内緒だ。ハハハ」
全く俺と同じ返しをしてきた。




