10月1日 体育祭10
明日は、今後の進路をめぐって、先生と面談の場が設けられることになった。いつになっても進路を決めない俺を見かねてか、急遽の設定だった。
ー9月22日ー
俺は、勢いよく走り始めた。みんなの視線が一斉に俺の方に向き始めたのがわかった。一瞬、遠くにいた五十嵐と目があった。彼女は、満面の笑みを浮かべ、俺にエールを送ってくれたように感じた。
そして、軽く後ろに走る。靴下を脱いでいるということもあってか、少し痛みがくる。その痛みを感じながら走り出した。成功しろよ!水城の言葉がふと脳裏に浮かんだ。
勢いよく左手を地面につけた。"手はつけるんじゃなくて伸ばす"。コーチの助言を再び頭に浮かべた。俺は、右手を伸ばすように地面につけ、体を一直線になるようにした。そして、その後は自然に体がついていく。これだ!これ!
想像していたとおりの展開。倒立姿勢はキレイにできている自信があった。そして、二回転目。勢いに合わせて再び、地面を突き放した。さっきより、痛みは和らいだ。もう慣れたのだろうか?バク転しながら、そんなことを考えれる自分が待っていた。
二回目は、さっきよりもさらに、宙に浮いてる感覚が強くなった。みんなで優勝したい!心からそう思える瞬間だった。足の裏全体で身体を支えることがきっちりできてきた。そして、三回転目をスタートさせた。
二回目同様大きく問題なくいける。このままだ。さっきより、余裕はなかったけど、キレイに回ってる自信だけはあった。なんとか着地をさせた視線の先には、水城がいた。そして、手を合わせながら俺の方を見ていた。
着地した瞬間、いろいろな角度から大きな拍手が響き渡る。俺は、あまりにも大きな拍手ということもあり、何をしたらいいかわからなくなっていて困ってしまう。それを見かねるかのように、応援合戦終了のピストルが放たれた。
終わった瞬間、水城や柏木が俺の方に向かって走り出してきた。まるで、甲子園出場を決めた高校球児のような騒ぎだった。その様子を見ていた向井、春田、五十嵐も一緒にはしゃぐ。そして、最後は、堂林や牧田といったクラスの中心メンバーも応援席から離れて騒いでいた。
バク転の疲れを感じさせないくらいのみんなの笑顔。これは、何にも変えられないんだろうなと感じる瞬間だった。本当は、足や首など所々痛いところは、あった。けど、この瞬間だけは別だ。




