「その瞬間が来た」ことをイメージして■まで書いて、続きを(少しだけ)他のやつに書かせてみた
誰しも訪れる「そのとき」に直面した。
心と思考、理性が違う動きをする。
悲しみに溺れて嘘だとしたい心と、後悔して自罰的な思考と、向き合うために冷静だとしたい理性。
その瞬間を集中的に書き、途中でぶった切ってその続きを他のやつに書かせた作品。
悲しきことである。
されど、これは必然であったことで、嘆くことではない。
そう、思っていた。思い込んでいた。
真っ白に覆われたその現実に直面するそのときまでは。
見て見ぬふりをしていたわけではない。それが今だと思ってもみなかった。いつか来ると知りながらもそのときを考えようともしていなかった。
見えないのだ。あれほどまでに、毎日見ていたものが。あれほどまでに、当たり前だと思っていたものだ。
こんなにも、盲目だったのか。無知蒙昧だったのか。こんなにもこんなにも――
ハッキリとした輪郭を捉えることはできていない。後悔が滲むのだ。ああ、ああ!
乾く。こんなにも溢れるほどあるのに。掠れるのか。こんなにも零れているのに。
思い出すのだ。我が醜態を。我が愚かさを。どうして今になって!
決まっている。想像したこともあっただけだ。想定したことがあっただけだ。
何一つとして、その先を考えてない。その前を、どうするかなんて考えていなかった。
分かっていた結末。知っていた結果。語られていた結論。自他共に、例外なく。
未来を知っていたなら。そう想ったことがあった。ああ。今ならわかる。知ったところで変わらない。何一つとして変えなかっただろう。
知っていたからだ。未来を。知っていたからだ。過去を。知っていたからだ。現在を。
知ったところで考えてなかった。どうするかなんて。
呆然と自失したフリなんてして。嘆き喚くように振舞って。
嫌悪してる。そんな演戯なんかして。お前の本性はそんなものじゃないだろう。知っている。自分のことだ。冷静に分析する。
お前は心からそんなことをできるやつではない。実感してるだろう。その現実を利用してると。
周りからどう見られるかを、普通ならばどうすべきかのフリしてるだけだろう。
後悔している。間違いない。それは何故。
演戯して利用する自分にか。後悔する前になにもしなかった自分にか。
どちらもだ。
どうせ、自分にはこうなる運命だった。なんて悲劇で喜劇!
悲劇で自分を知るなんて。悲劇の後の立志伝。なんて喜劇的!
悲劇を利用するから演戯してるんだろ。幼き頃憧れた立志伝のように悲劇から立ち上がることを求めてたんだろう。憧れた主人公は悲劇が無くては始まらない物語だもの。
さぁ、目の前に現れたぞ。チャンスだ。そう思っているんだろう。反吐が出る。
そのために、知っていたことを見逃していたんだろう。夢想してたんだろう。現実に目を向けて。待ち構えていたんだろう。
いま、ぼやけた目の前に転がっている。演戯だってできている。さぁ、主人公になるための物語の始まりだ。
冷えた手が握るのはチャンスだ。受け取るがいい。お前なら、それを奪えるだろう?ああ。自分を偽るなんてするなよ。演戯だ。勘違いするな。
だって事に直面するその瞬間までお前は笑っていたんだから。演戯でな。
お前は嗤えるはずだ。自分は笑えるはずだ。
お前は自分。自分はお前。思考も理性も自分だ。ああ心無い、心内、志無い、心亡い。
笑って立ち上がれ。嗤って絶ち上がれ。
やるべきことが横たわる。
現実に向き合い、夢に見る時間だ。
夢に溺れて、現実を見る時間だ。
もう、演戯も十分だろう。もう、自失も要らないだろう。
見たままに見るままに。
日常に戻るんだ。日常にするんだ。どうせ時間が解決する。
■
そう思うだろ? 俺も思ったさ。でも、違ったんだよ。
そう思ってたのは嘘じゃないけど、正しくもなかったんだ。
結局のところ、俺は俺を見誤っていた。
だから、何もかもが変わってしまった。
だから、なにも変えられなかった。
だから、終わってしまった。
あのとき、あの場所で、この手で掴んでいれば。
ああ…… ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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臨終に間に合ったのか? 冷えた手は誰?
そこを考えてみて欲しい。
何に後悔したのか?
続きを書いたやつの考えも予想してみて欲しい。
答えることは無いが。