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コンビニに行きたい  作者: プログレス
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木村洋介の生活

5月2日 (土)

 洋介は18時30分頃、人気のないコンビニでサラダチキンを5つ買った。二月ごろから世界的に流行している感染症の影響で、お客はほとんどいない。いつも20時ごろまでコンビニに集まっている中学生らしき集団すらいない。世間では、外出をしないで家にいようという呼びかけが多くある。いつもだったら、人であふれているこのコンビニも、いつもとは大きく違っていた。そのため、洋介は目当てのサラダチキンを真っ先に手に取り、レジへと向かったのだ。滞在時間はおよそ30秒ほどであった。雑誌コーナーもチェックしたい。最新のデザートやお菓子もチェックしたい。いつもだったらチェックするのだが、できない。そんな普通ではない状態でコンビニを後にし、あることを思いながら家へ向かい歩き始めた。


 強く思っていることは一つ。

 

 早く普通にコンビニに行きたい。



 洋介の本名は木村洋介。普段は都内でシステムエンジニアとして働いている。体を動かすことが大好きで、スポーツならなんでも得意である。休みの日は友達と予定を合わせ、出かけることが多い。コンビニに行くときは財布を持たず、携帯だけを持ち、ペイ払いで買い物をしてポイントを貯めている。貯まったポイントをマイルに変換し、旅行に行くのが彼の一つの大きな趣味であった。昨年の冬に茨木県の牛久大仏を訪れ、日本全国すべての都道府県で何かしらの観光をしたことになった。しかし、今年は2月ごろから世界的に流行している感染症で、外出をすることができなくなってしまったので、どこにも行けないゴールデンウィークを送ろうとしていた。


 洋介の会社は3月の後半から仕事も在宅で行うことになっており、週に一度の出勤日しか会社に行かなくなった。在宅で行う期間は必ず、朝、部長からメールが届くのだが、最後の文面にはいつも、「行動を考えるように」という一文があった。気の優しい洋介はこの一文を重く受け止め、平日も勤務時間はパソコンで仕事をし、休日は遊びにも行かず家に引きこもっていた。

 しかし、家でほとんどの時間を過ごすことになってしまった洋介は普段よりも気持ちが大きく落ち込んでいた。


 洋介は家に帰ると夕食を食べ始めた。夕食はサラダチキンとレタスのサラダである。家にずっと引きこもっている洋介だが、お腹はなぜかいつも通り減る。いつもだったら外食が多く、自炊を全くしないのだが、外食もしなくなり、家で食べることが多くなった。しかし、いつもと同じ量を食べると確実に太ってしまう。そう考え、夜はサラダを中心にするというのが日課だった。サラダチキンは大好物でよく食べていた。冷蔵庫を開けばサラダチキンがいつもある。なければたくさん買ってまた補充する。


 夕食を食べ終えると、2時間ほどゲームをし、お風呂に入った。普段はシャワーで済ませるのだが、時間がたくさんある引きこもり生活中は湯を張り、湯船に1時間ほどゆっくり浸かっていた。お風呂から出るとニュース番組を見て寝る準備をする。それが洋介のナイトルーティーンとなっていた。


 この日もニュースで感染症の話題が多く出ていた。どのニュースを見ても感染症の話題ばかりで、それも洋介の気持ちを落ち込ませた。感染者の数は増え続けている一方である。


 「いったいいつになったら普通になるんだよ」


 テレビに向かい、独り言をいうことも多くなっていた。


 ニュースでは、外出をしないでと呼びかける期間が5月末までになりそうだと報道されていた。報道の中では、

「飲食店を含めサービス業など、仕事の面でも自粛を続けることは経済的な問題も大きいが、外出を自粛している一般の方の気持ちにも限界が来る。天気の良い日に外に出られないということは大きなストレスになっているはずだ。経済、気持ち、両方の部分を考えてもおそらく5月までが自粛の限界だろう。」


 一般の人は3月ごろからなんとなく雰囲気を感じ、外に出るのを控えていた。自粛期間はおよそ、2か月で5月末までと考えても3か月。しかし、洋介はとある事情で、1月からずっと外に出るのを控えていた。自粛期間はすでに4か月のベテランである。5月末までの自粛だと5か月になる。およそ半年間もの間、引きこもって生活することになるのである。洋介はとても暗い気持ちになった。


 なぜ洋介は1月から外に出ていないのか。彼の生活を見てみることにする。



 


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