孤独を埋めるもの 1
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レニーの風邪が治り、久々に店を開けるとハンナをはじめ、常連客が一斉に訪れた。
店自体は、使われていなかった古い店舗を安く買い取ったものなのだが、しかし二人の雑貨屋は開店したばかりで真新しく、やっと軌道に乗り始めたばかりだ。だが異国からやってきた物珍しいカルザスとレニーの人柄に惹かれた常連客がまたたく間に一定数付いたことは幸運だった。そして人々の口伝てで、店はいつも繁盛するようになっていた。
「なるほど、贈答用の置物ですね。ではこちらはどうでしょう?」
カルザスは美しい架空生物の木彫り細工を客に勧める。
「緑が好き、と……なら、このネックレスとかどう? 値段も手頃だし、デザインは君の雰囲気に似合ってると思うんだけどな」
レニーが自作したネックレスを、若い女性に勧める。
店は今日も大入り満員だった。
カルザスが次の来客の選んだ品物を梱包していると、ふと視界の隅に引っかかるものがあった。上の空で虚空を見つめているレニーの姿だ。先程、応対していた女性は、彼の勧めたネックレスを気に入って買い求めたらしい。もう店内に姿がない。
カルザスは急いで梱包と会計を済ませ、ぼんやりしているレニーの傍へ寄る。
「どうしました? やっぱりまだ本調子ではないのではないですか?」
「へ? あ、いや。そんなことないよ。ちょっとぼんやりしちゃっただけ」
レニーは慌てて場を取り繕い、アクセサリーの細工を再開する。だが摘んでいた輝石を取り落としてしまう。
「やっぱり調子悪そうですね」
「……ごめん……」
レニーは素直に誤り、俯いた。やはり顔色があまりよくない。
「早めにお店を閉めましょう。レニーさんはもう休憩なさって大丈夫ですよ」
「え? でも……」
「あとは僕一人で大丈夫ですって」
半ば無理やり彼を店の奥の住居部分へと押しやり、カルザスはテキパキと店に残っている客たちの応対を続けた。