悪意ある悪戯 5
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カルザスとホリィアンが辿り着いた部屋には、すでにレニーがいた。すぐ傍には、衣服の乱れた男が倒れている。
「パ……ル……?」
ホリィアンが震える声音で、レニーが抱えている〝もの〟に声を掛ける。
榛色の髪は乱れ、瞼は固く閉じられている。青痣と血に塗れた幼い体から衣服は剥ぎ取られ、レニーのショールが掛けられていた。
室内の光景を見て、瞬時に何が起こったのか悟ったカルザスが、ホリィアンの肩を抱いて彼女の視界を遮った。そして肩越しに振り返り、レニーに問い掛ける。
「……殺したんですか?」
こんな時だというのに、つい責めるような口調になってしまい、カルザスは胸の内で自身を戒める。
「……殺ってない。殺してやりたかったけど、おれは殺ってない。痛めつけただけだ」
人形のように身じろぎひとつしないパルの形をしたものを抱き締めたまま、抑揚のない声音でレニーは答える。
「ホリィ、パルは生きてるよ。だけど……」
「……なぜっ……パルが!」
ホリィアンが涙声で絶叫した。
「ペドフィリア。幼児性愛。幼い子供にしか欲情しない、ある種異常な性癖、悪い病みたいなものだよ」
「パルは男の子なんですよっ?」
「男か女かは関係ない。こいつらには。ただ小さい子供を見て勝手に欲情して、自らの欲望のはけ口にすることしかできないんだ」
「そん、な……そんな……酷い……」
ホリィアンが泣き崩れ、カルザスに寄りかかった。
「……パル。怖かったよな。辛かったよな。痛かったよな。でももう大丈夫。おれやホリィが来たからね」
パルは目を閉じたまま、何も反応を返さない。ショックで意識が混濁しているのか、気を失っているのか、カルザスからは見て取れない。
「カルザスさん、上着、貸してくれない?」
カルザスはジャケットを脱いでレニーに手渡す。
「あと……ここ任せてもいい? おれはパルとホリィと先に帰ってる。パルの怪我を早く診てやらないと……」
「構いませんよ。早くパルさんを治療してあげてください」
カルザスはホリィアンを促し、レニーと共に先に帰るように囁きかける。
「レニー、さん……わたし……わたしのせいでパル、が……」
「ホリィが悪いんじゃない。悪いのはおれだよ。パルがどんなにおれを慕ってるか分かってたくせに、おれはパルを遠ざけようとした。だから……おれが全部悪い……」
パルの小さな体を大事に抱き、レニーは唇を噛みしめる。
「パル、ごめんな……本当に、ごめんな……」
自らを戒めるように、レニーはパルに何度も侘びた。




