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武人と唐揚げ 後、イケメン

登場人物


マナ

疑惑深まり紫月の娘?


紫月 獅子れお

嘔吐キラキラ格闘高校生


白峰 尚輝

勝手にお上がりイケメン高校生


紫月 クリスティーン

マナにソックリ天然ママ


武人

強面無口屈強無骨


 (全然変わってないなぁ…………そりゃそうか)


 マナは懐かしい我が家に帰ってきて思った。この世界では2ヶ月程しか経っていないがマナにとっては数年ぶりの我が家である。


 紫月家は木造の日本家屋。


 外門をくぐり、ささやかなガーデンを抜けた先に、母屋の玄関がある。

 カラカラと古い引き戸の玄関を開けると、そこは広めの玄関ホール。

 右手には靴箱。靴箱の上には小さめの【こけし】が何体か飾られており、壁には紫月ママが趣味で描いた、静物画が飾られている。


 玄関ホールの木目調の床は綺麗にワックスがかけられ、ツヤツヤと輝いている。広めの玄関ホールに入り、右手には階段、左手にはガラスの引き戸があり、こちらに入ると居間となっている。 


 玄関には獅子の革靴、マナの銀色のブーツ、獅子ママのサンダル、謎の高級そうな革靴、そしてバカでかい草履が並んでいる。父親の履き物であろうか。


 此処は居間。畳敷きの12畳程の和室。獅子とマナは、大きめの重厚な座卓の前に並んで座っている。獅子はあぐらをかき、マナはちょこんと正座している。

 剣と銀の胸当ては外し、座卓の横へと置かれている。胸当ての中はタイトな黒色アンダーシャツを着用している。


 二人の対面には新聞を開き観る、巨大な物体。マナと獅子を足してもまだ足りない体躯。


 新聞を持つ太い指は、どれだけ修練を積んだのかと思える程に武骨で、まるで岩のようである。使い込まれた黒い胴着は肩の辺りまで破れ、巨木のような腕が露出している。


 武士の如く正座し、新聞を見る巨躯の男。


 紫月 獰虎(ドウコ)。46歳。紫月パパである。


 その武人、白髪混じりの頭髪は、獅子よりも更に長く、老獅子のたてがみの如く。白眼に近い三白眼で、苦虫を噛み潰したような表情は、見る者を威圧する。


(うわぁ……オークよりデカい……)

 久々に父を見たマナは思った。


「おお~い親父~」

「この女の子、凄いんだぜ!」

「紫月流格闘術を使うんだ」

「俺から一本取るほどの腕前なんだぜ!」

「しかもお袋にソックリだろ」


 獅子が話しかけると、紫月パパはその白眼に近い三白眼でマナをギロリとひと睨みし、無言で新聞へ目線を戻した。


「親父も興味あるみたいだな!」

 獅子はマナに言った。


(あの顔で?何で解るの……)

 とマナは思った。


 美味しそうな鰹ダシの香り。居間の隣は台所となっている。この家には似つかわしくない、洋風のオープンキッチン。紫月ママの要望で最近改装した最新式のキッチンだ。


「で~きた~わよぉ~☆」


 笑顔の紫月ママが次々と料理を運んでくる。マナも手伝おうとしたが、いいから座って待っててね~、と言われその通り座って待っていた。

 ご飯、お味噌汁、ほうれん草のお浸しに唐揚げ。至って普通の晩御飯だ。


「「いただきま~す!」」

 どんぶり飯を凄い勢いで食らう獅子。紫月パパの眼前には、ご飯一升分も有ろうかというような巨大な握り飯。巨大な指で掴み、それを食らう紫月パパ。それをニコニコ顔で眺める紫月ママ。


 紫月家の日常の1コマである。


(美味しい……懐かしい味)

今日、涙を流すのは何度目だろう?お味噌汁をすすりながらマナの緋い瞳はまた潤んできた。その様子を優しく眺める紫月ママ。


「アナタは本当に食べなくて良いの~?」

不意に紫月ママが、獅子とマナの背後に向かって話し掛けた。


「フッ……お構いなく。獅子の母君」

無駄にイケボイスで帰ってくる返答。


「……てかお前、いつから居たの?」

声の主に話し掛ける獅子。


 獅子の後ろの壁の隅にもたれかかり、腕を組み右手の人差し指を額つけてポーズを取っている、不敵に微笑む切れ目の無駄にイケメン。白峰 尚輝である。


 「フッ……ずっと君達の後ろにいたのさ」


 賢明な読者であればもうお気付きであろう。


 公園のシーンでも、二人が歩いて帰るシーンでも尚輝は後ろからついてきていたのだ。時折フッ……とか不敵に微笑みながら。因みに玄関にあった謎の高級な革靴は尚輝の物である。


(フッ……じゃねーよ)

と獅子とマナは思った。


「獅子がその娘に変なことをしないように見張っていたのさ」

髪をかきあげながら尚輝は言った。


「何だよ。変なことって」

獅子が答えた。獅子は結構ピュアだった。


(へ 変なこと……うぇぇ)

マナはちょっと想像してしまい、自己嫌悪した……


 そんなこんなで夕食が終わり、マッタリタイムに突入する紫月一家。

 獅子は横になってテレビを観ている。紫月パパは相変わらず新聞を観ている。マナも脚を伸ばしてふぅーっとひと息ついた。


 ふと前を見ると、


 紫月ママが座卓に頬杖をついてニコニコ顔でマナを見つめている。

 ちょっと照れくさくなるマナであったが、紫月ママの言葉を思い出した。


(私はね、全部知っているんだからね)


……この人は何処まで知っているのだろう?何を?何で知ってるの?マナは怪訝そうな顔で紫月ママを見つめ返す。


 そんなマナの気持ちを知ってか知らずか、紫月ママがマナの両肩にぐっと手を触れて言った。


「心配しなくても大丈夫だからね~!」


「さっき【諸悪の根元】をここに呼びだしたから~」


「ママがとっちめてやるんだから~!」


??


【諸悪の根元】?ここにくる?何が??誰が??


 マナは紫月ママが言ってる事が全く理解出来ず、頭の中がグルグルと混乱した。


 ガララと玄関が開く音がする。誰かが家に入ってきた。


「きたわね~むっき~!」


紫月ママがおたま、を振りかざしてイキる。


 全く意味が解らないマナ。興味無さそうな紫月パパと獅子。フッ……と微笑む尚輝。



一体、誰が入って来たのだろうか……



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