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霧雨

登場人物


紫月 マナ

黒アンダーウェアミニスカ女の子


紫月 獅子れお

ボロボロ胴着高校生格闘家

 ゴールデンウィーク最終日。残念ながらお天気は悪く、冷たい雨がしとしとと降り、昼間だというのに空は白く澱んでいた。


 此処は寺町の高台にある青刃神社。冷たい雨にも意に介さず、二人の格闘家のぶつかり合う打撃音が辺りに響く。


 ひとりは若獅子のタテガミのような頭髪を振り乱し拳足をふるう、鍛え抜かれた肉体の胴着姿の紫月 獅子れお


 もう一人は、雨に濡れた碧色の長いポニーテールが美しく輝く、緋い瞳の女の子、紫月 マナ。


 掌低と掌低。蹴りと蹴り。鏡に写したように同じタイミングでぶつかり合う。いつぞやの戦いのように。


 お互い、闘志秘めた瞳でぶつかり合い、この立ち合いを楽しんでいるような表情だ。


 暫く拳足の相殺が続いたが、隙をついたマナの中段突きが獅子の腹部に突き刺さる!


 しかし獅子は意に介さず、強烈に地面を踏みしめる。【震脚】により石畳にヒビが入り、続けて強烈な右中段突きがマナの腹部へと放たれた!


 マナはその強烈な一撃を両手で()()()、そのまま獅子の腕を飛び越す形になった。そしてその流れで獅子の頭部に左足で蹴りを見舞った!


 ダウンこそしなかった獅子であったが、その動きは止まった。

 マナは後方に飛び退き、獅子に声をかける。


「一本取ったね、もう終わりにする?」


 獅子は中段突きを放ったままの姿勢で、


「見えた……見えたぞ」

とマナを睨みながら呟いた。


「何が見えたのよ?」

とマナが訝しげに尋ねると、獅子は青筋をたて興奮した様子で、


「お前のその……」


「イヤらしい【紐パン】がだッッ!!」


と大声で叫んだ!


「なっ……!?」

マナは赤面してタイトなミニスカートを両手で押さえる。


獅子は腕をブンブン振りながら尚も叫ぶ。


「お前が蹴りを放つ度にチラチラ見えまくるんだよぉ!」


「そんなエッチな下着ばかり履きやがってぇ!」


「この……」


「男を惑わすエロッ娘がぁ!!」


獅子の鼻息は荒い。


マナも耳まで真っ赤にして、


「しっ仕方ないでしょ!」


「マ……お袋が買ってきた下着はこんなのばかりなんだからッ!」

とスカートを押さえながら反論した。


「だったらズボンを履けよぉ!ズボンを!」


「このスカートは戦闘用で動きやすいのよ!」


自分同士で不毛な言い争いをする獅子とマナ。


「パンツが気になって集中出来ないんだよぉ!」


「こっこの変態!」


「変態じゃなぁい!男として正常な反応だぁ!」


 獅子は恨めしそうにマナを睨みながら尚も続けて呟く。


「やっぱりオマエ……」


「尚輝とヤったんだろ……!?」


「その話は誤解だってば!」


 どうやら尚輝とのヤったヤらないという話は誤解という事で解決していたようだ。獅子はまたその話を蒸し返す。


「嘘だぁ!そんなエッチな下着を履くヤツが処女なわけ……」


「ぐっほぉ!」


 獅子が良からぬ事を言い終える前にマナの前蹴りが獅子のみぞおちにクリーンヒットした!


「いい加減にしてよ!」

「誤解だって言ってるでしょ!」


 腹部を両手で抑えて前のめりにダウンした獅子。冷たい地面を舐める獅子。


「うう……そうか……そうだったな……」


「すまん……マナ」


「ちょっと興奮しちまってた……」

どうやら獅子は落ち着きを取り戻したようだ。



 暫くの時間が経って、マナと獅子はお賽銭箱の下の段差に座っている。相変わらず冷たい雨が降っているが、この場所なら屋根の下なので雨は当たらない。


 獅子は段差に腰をかけ、遠くを見たまま何かを考えている。マナはタオルで髪の毛や身体を拭いていた。


「そういやオマエ、俺と同じ高校に通うんだってなぁ」

獅子が思い出したようにマナに問い掛けた。


「……うん」

マナは髪の毛を拭きながら、小さな声で答える。


「嬉しくなさそうだなぁ」


「い、いやそんな事はないよ!」

マナは髪を拭くのを止めて、獅子を見つめながら話を続ける。緊張と不安の入り混じった複雑な表情で……


「嬉しい……嬉しいけど」

「ただ……ちょっと突然だったし……」

「女の子として学校に通う心構えがね……」

「うまくやれるかどうか不安なんだ……」


獅子は腕を組み、眼を瞑って


「うーん……なるほどなぁ」


「でもよ……」


 獅子はマナの両肩にガシッと手を置き、真っ直ぐな眼差しでマナを見詰めた。


「お前はものすごく可愛いし」

「それにとても女の子っぽいぞ!」

「学校でもうまくやれるさ!」

「自信を持て!もう一人の俺!」


 あまりにストレートな獅子の言葉。獅子なりの励ましの言葉なのだろうが……


 その言葉を聞いたマナはドキッとして赤面し硬直してしまった。


(うう……かっ可愛いって……)

マナの瞳には獅子がまるで、別人のように映る。自分の知らない別の男性の様に錯覚してしまうマナであった。


 迷いのない真っ直ぐな眼差し。古傷のついた鼻頭。白い歯を見せ微笑む口元。そして逞しい筋肉。 触れる両肩から感じるあつい熱。


 暫く獅子と見つめ合ってしまったマナであったが我に返る。獅子の両手を払いのけて、獅子に背を向けた。


「可愛いのは自分でも解ってるもん……」


 動揺を隠す為の精一杯の強がり。後ろを向いたのは赤面してる顔を獅子に見られたくないからだ。


「はは……そうかい」

獅子の優しい声。 


「でも……」


「励ましてくれてありがとう……」


マナは背を向けたまま微笑みながら呟いた。


「でも……獅子と同じクラスになるのはやっぱりなんか嫌だなぁ」

くるりと振り向きマナが言うと、


「同じクラス?それは絶対にないぞ」

獅子が答えた。


「え?だってこの学校って共学なんでしょ?」

マナが首を傾げながら問いかけると獅子は腕を組ながら返答する。



「だってこの学校はよ……」










 マナのアンダーウェアとタイトなミニスカートは異世界で作られた、鎧の下に着る防護服だよ。柔軟かつ強靱な繊維で作られていて更に魔法のチカラが込められていて、熱や冷気にも強いよ。更に繊維に【ミスリル】が練り込まれている特注品でマナの魔力に反応してその強度を更に増すことが出来るよ。まさにラスボスと闘うための最終装備だね☆(紫月パパの一撃に耐えたのもこの服の影響が強いね。ちょっとズルいね)


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