ナルシス☆マナ
登場人物
紫月 マナ
上げて寄せ寄せ女の子
紫月 クリスティーン
いつもニコニコ紫月ママ
「うぐぐ……もうちょっとで……」
「た……谷間がぁ……」
自室の和鏡台に向かい、下着姿で白く透き通るような肌を露わにしているマナ。おへそや背中から汗が滴り落ちる。
下半身にはピンク色のレースの下着を身に付け、上半身には同じ柄のブラジャーに、ささやかなボリュームのお胸を一生懸命、寄せてはあげていた。身体をクネクネ動かしながら。
「も……もう少しぃ~」
時は少々戻り……
ゴールデンウィーク3日目。朝ご飯を食べ終わったマナは、物置の和室を自分の部屋にすべく、重い腰を上げてお片づけを開始した。必要無さそうなガラクタを一つずつ、庭にある蔵へと運び出していく。
天狗のお面に……木刀。中学の修学旅行の時に買ったんだっけ?それにこれは……ダイエットベルト?ママのかなぁ?殆ど使った形跡が無いよね。
これは……前衛的な形の木彫りの像。これもママが造ったのかな?名前が掘ってある。獰虎……親父が造ったのかよ……
コレも蔵行きだなぁ。と思いながら作業を続けるマナ。結構な量のガラクタを蔵に移し終えた。すると奥の方にガラクタに埋もれていた和鏡台が姿を表した。
「わぁ~この鏡、素敵じゃん!」
古めかしい木製の和鏡台ではあるが趣があってとても素敵だなぁとマナは感じた。和鏡台の前に座って自分の顔を眺めてみる。
碧色の髪の毛をちょいといじりながら、鏡の中の自分と見つめ合い、マナは思う。うん。私ってやっぱり最高に可愛いんじゃないかな?と。
部屋を整理するのも飽きてきたマナはふと、部屋の片隅に置いてある紙袋に目が止まる。それは紫月ママが買ってきてくれた、マナの下着とお洋服が入っている袋だった。
マナはヒョイと足をのばすと、足の指で袋を摘まんで引き寄せた。そして紙袋を開けて中身を確認してみる。
「うーん……コレは……」
中に入っていたのは、黒いレースの下着や、Tバックの下着。紐パンツ等、布の面積が極端に少ない下着ばかりだった。お洋服も……お尻が見えてしまいそうなミニスカートやへそ出しのトップス、極めつけはピンク色のヒラッヒラのロリータ服。
「こ、コレを私に着ろと言うのか……」
着るのにはとても覚悟がいる、そんなお洋服と下着ばかり。マナは無言で、それらを洋服タンスに仕舞い始めた。
比較的、マシなデザインの、ピンク色の下着に目がいく。レース柄の可愛いデザインのショーツとブラジャーだ。
その下着を手に取り、しばらくの間眺め見たマナは呟いた。
「これなら……」
膝丈のロングTシャツを脱ぎ始めたマナ。ロンTで隠れていたが、マナはズボンを履いてはおらず、白い下着が露わになった。胸のほうは元々ノーブラだ。
鏡に自らの姿を映したまま、白い下着も脱ぎ去り一糸纏わぬ姿となったマナ。ピンク色レース柄のショーツを手に取ると、それを履き始めた。
「うん……似合ってるよね」
腰のあたりまである長い髪を両手で掻き上げながら、鏡に映る自分を観る。産毛一本も無い綺麗な身体。スレンダーな体つき、縦に割れたおへそ。お尻は小さめだけど引き締まった腰は意外とくびれている。我ながら良い身体つきなんじゃないかとマナは思う。
「後は……ここさえ……」
マナの見つめる先には鏡に映る自身の控えめなお胸が……
ブラジャーを手にとりサイズを確認してみる。【AAA】とタグに記載されている。マナは無言でブラジャーを着用してみた。
紫月ママの選んだ【AAA】サイズのブラジャーは悲しいほどマナのお胸にピッタリのサイズであった。当然、谷間は無い……
「うぐぐ……」
そして物語は冒頭へと戻る。
「痛ったい!でももう少しで……」
白い身体をプルプルと痙攣させながらマナはひたすらに寄せて上げる。谷間が出来ることを信じて……
ガララッ!っとマナの背後の部屋の引き戸が勢い良く開いた!
「はっ!ひゃあぁぁ!?」
不意を突かれたマナは驚き、赤面して胸を押さえて座り込んでしまった。
「あらぁ?マナちゃん。何やってたのぉ?」
マナの背後から間延びした女性の声。戸を開いたのはマナのマザー。紫月 クリスティーンこと紫月ママであった。
「お、おふく…じゃなくてママぁ!」
「の、ノックぐらいしてよもう!」
マナは胸を押さえて座り込んだまま叫ぶ。
「あらあら、ごめんねぇ☆てへ」
ちろっと舌を出し自分の頭をコツンしてはいるが、全く反省してなさそうな紫月ママは話を続ける。
「ママ、これからちょっとお出かけしてくるからぁ」
「マナちゃん、お利口さんにお留守番お願いねぇ☆」
「わ、解ったよ」
(早くどっかいってよもう……)
マナは座り込んだまま答えた。
「じゃあ、いってきまぁす」
出て行った。
「あっマナちゃん!」
また戻ってきた……
「幾ら頑張っても無理なことってのも」
「あるんだからねぇ~」
その一言を申すと紫月ママは割烹着の上からでも解る豊満なお胸をたゆたゆさせながら去っていった……
「…………」
部屋に残された下着姿のマナはガックリとうなだれて無言で胸を押さえて座り込む。ブラ紐が虚しく肩からズレ落ちる。
その緋い瞳は悲しみと落胆に曇り…………
一方紫月ママは割烹着を脱ぎ去り自宅を出発。商店街を越えて、千代市の中心街まで歩いてきた。
ニコニコ顔の紫月ママの装いは、膝下丈のブルーワンピース。真っ赤なリボンベルトの靴を履き、バラの刺繍が沢山施された赤いポシェットを肩から斜めにかけ、テクテクと楽しそうに歩いている。その姿はまるで、オズの魔法使いのドロシーのようだ。まあ年甲斐も無い格好である。
ブロンドのふわふわロングヘアーをなびかせながらテクテク歩く紫月ママ。
「ついたわね~」
此処は先日、マナがオンラインゲームで遊んだお店のあるアーケード街のひとつ手前の【勾刀台】地区。街中でありながら、大規模な公園が整備されており、休日ともなれば、色々なイベントが催されている。
今日は休日という事もあり、沢山の人で賑わっていた。どうやらB級グルメのフェスが開催されているようだ。
しかし紫月ママの目的はB級グルメではない。賑やかな公園を真っ直ぐ抜けると其処には……
灰色のコンクリート造りの無味乾燥な13階建ての建物。【千代市役所】である。休日なので業務は行っていないはずであるが……紫月ママはテクテクと役所の中へ入っていった。
「うふふふ~マナちゃんの為にママはね……」




