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マナ☆命ねらわれ困惑!?

登場人物


紫月 マナ

命ねらわれ女の子


マナの命狙う人物

黒い瞳の涼しげな声の女性

 「貴殿の命は此処で終わる」


 静寂の青刃神社に涼しげな女性の声が響きわたり、杉林の闇の中から2つの黒き瞳がマナを睨みつけている。


紫月パパとの一戦を終えたそのままの装いのマナは思う。


(貴殿って……時代劇かよ……)

 そもそも貴殿とは男に対して使う言葉だし、あれ?でも私は本当は男だし良いのかな。でも今は女だからやっぱりオカシイ……?


 そんな事を考えていたマナに構わず、闇の中の謎の人物が行動を起こす。杉と杉の間を三角跳びで蹴り上げて高く跳躍した!なかなかの体術だ。そして上空から再びナイフを数本放つ!


 軽々と投刃を回避するマナ。しかし謎の人物はマナを狙い、なおも攻撃を仕掛ける!


「うわっ!危なっ」


 投げナイフを回避したマナに向かって、矢継ぎ早に二刀流の短刀で切りかかる謎の人物。なかなかに素早い斬撃であるが、マナはその攻撃も楽々と回避し続ける。


 マナの顔のすぐ横を通り抜ける短刀。動態視力の優れるマナの瞳にはスローモーションの様に刀身の刃紋が見える。マナは横目でその刀身を見て思う。


(本物の短刀だ……これって……)


 そして闇の中から姿を見せたその人物は……


 声質からもっと年上の女性かと思われたが、マナと同じくらいか、少し年上の女の子だった。ストレートの長い黒髪をポニーテールにし、口元は黒いフェイスマスクで覆われている。

 どこかの学校のブレザーとスカートを着用しているが、首元から見えるアンダーウェアは鎖で編まれた、いわゆる 鎖帷子(くさりかたびら)というやつを着用しているようだ。


 その姿を見てマナは思った。


(に、忍者かな……)


「この連撃もかわすか……予想以上の手練れだな」


 女の子忍者は攻撃を中断し、マナとの間合いをとり睨み合いとなった。


 女の子忍者は手甲を着用した両手に持つ短刀を構えたまま、マナを殺気籠もった瞳で睨みつけている。


 しかしマナは数日前にこの世界に戻ってきたばかりだし、忍者に命を狙われる理由は思い当たらない。そもそも忍者なんて本当に存在するのか?マナは特に構えもせず、女の子忍者を怪訝そうな表情で見つめていた。


「あのぉ……」

とマナが話し掛けた所で、女の子忍者は短刀での斬撃を再開した!


「なんで」ヒョイッ


「私を」ヒョイッ


「狙うの」ヒョヒョイッ


「カシラッ……?」ヒョイッ


 碧と黒のポニーテールがクルクルと円を描く。そして斬撃を回避しながら女の子忍者に質問したマナ。


「それは貴殿こそがよく知っている事だろう!」


(ええ……?なんの事だかさっぱり……)


 斬撃を繰り出しながらの女の子忍者の返答に混乱するマナであった。


「私はまだここで殺される訳にはいかない!」

「やられる前に貴殿を殺す!」


危機迫る瞳で叫ぶ女の子忍者。


(ええ……なんで私がこの人を殺さなきゃならないのかな?)


 女の子忍者は何やらマナに殺されるとでも思っているのか?マナは一切、手を出しては居ないし、そもそもこの女の子忍者とは全く面識も無い。


「くっ!ちょこまかと……!」


「ならば……!」


「【忍法蜘蛛糸縛り】!」


 後方に飛び退いた女の子忍者は、懐からピアノ線のような【蜘蛛糸】を複数取り出し、マナへと放った!5本の指で器用に操り、地面を這いながら波打つようにマナを追い詰める蜘蛛糸。


 蜘蛛糸がマナを縛り付けようとした瞬間、マナは上空へ高く跳躍し、蜘蛛糸を回避した。


(今、忍法って言ったよね。マジで忍者なの)

まだまだ余裕なマナであった。


「これもかわすか……ならば」

女の子忍者は更なる忍法を繰り出そうと言うのか。またしても懐に手を入れる。


しかしながら、いい加減うざったくなってきたマナ。


「忍法……ぐふぁっ!?」


 女の子忍者が懐から何かを取り出そうとしたその時、マナは一瞬にして間合いを詰め、女の子忍者のみぞおちに強烈な肘打ちを見舞った!

 くの字に身体を折り曲げて悶絶する女の子忍者。鎖帷子越しでもかなりのダメージを負ったようだ。


 そしてマナは、何気に回収していた蜘蛛糸で女の子忍者をグルグルに縛り上げた……


「一丁お上がりぃ」


闘いは終わった。


 石畳の上には蜘蛛糸に縛られ無念の表情で寝転がる女の子忍者の姿が。再び境内は静寂となり、マナはその姿を見下ろしながら、ふぅっ……と一息ついた。


「くっ……殺せ……!」


女の子忍者はマナを睨みながら悔しそうな声を発する。


「だから何で私がアナタを殺さないといけないのよ?」


「それが貴殿の仕事であろう!?」


(この人なんつう勘違いしてるのよ……)


 マナは、なんとなく紫月ママの妄想を思い出しながら女の子忍者の拘束を解いてあげた。

拘束を解かれた女の子忍者はシュタッと飛び退きマナを再度睨みつけた。


「何故私を助ける……!?」

「貴殿は私を狙う暗殺者ではないのか?」


女の子忍者の質問にマナは眼を瞑り、すうっと大きく息を吸い込み、


「私のっ!」


「何処が!」


「暗殺者に見えるってのよぉぉ!!」


 ってのよぉぉ……よぉぉ……ぉぉ……


 大声で叫んだマナの声が静寂だった境内に木霊する。



 しばらくの時が経ち、マナと女の子忍者は古びたお賽銭箱の前に座って会話している。


「申し訳ない……」


「街で見かけた貴殿の歩く姿が、余りにも隙が無かったものだから……」

「それに時折、獲物を狙うような目つきをしていたからつい……」

「私を狙う暗殺者と思ってしまったんだ……」


 先程とは違って、穏やかな瞳の女の子忍者が語る。ええ……私ってそんな目つきしてる事あるの……と思いつつも、だからといってこんなに可憐な私を暗殺者と間違えるなんてどうかしているわ。と思うマナであった。


「私は訳あって今、この街に潜伏しているのだ」

「詳しい話は出来ないが……」

「兎に角私はこの任務を達成しなければならないのだ!」


 何の任務だか解らないが女の子忍者にとっては重要な事の様だ。


「しかしながら、貴殿のその体術……」

「一体何処で修練を?」


「これは【紫月流格闘術】だよ。この辺りでは結構有名かもね」

マナは笑顔で答えた。その答えを聞いた女の子忍者は目を丸くして、


「紫月流!?あの紫月 獅子のか!?」


「あらっあなた獅子を知ってるの!?」

女の子忍者から出た意外な人物の名前にマナは驚いた。


「いや……知っているというか、その……」


「同じ学……いや……何でもない」

女の子忍者は何か言い掛けたがそのまま押し黙った。


「獅子は一応私の……兄貴?だよ」

「一応ね……」

マナは悠遠に追われる情けない姿の獅子を思い出しながら語った。獅子の顔を立てて兄貴という事にしてあげる優しいマナ。


「紫月獅子の妹か……道理で強い訳だ……」


女の子忍者は立ち上がり、その凛とした黒い瞳でマナの碧色の瞳を見据え、


「今日は色々とすまなかった……」

「私はそろそろ行かなくてはならない」

「もう二度と会うことも無いだろう……」


「それではサラバだ……!」


 女の子忍者はそう語ると杉並木を三角跳びし、深い杉林の中へ消え去っていった……


マナは笑顔でひらひらと手を振って女の子忍者を見送る。


(てか忍者って…………)


(本当に存在したんだ。びっくり)


(異世界人もびっくりだよ)


 再会のフラグめいた言葉を残して去っていった女の子忍者。マナは暫くの間、お賽銭箱の前に座ったまま、良く晴れた空を見上げて思う。


(何だかまた会えそうな気がするなぁ)






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