誤解と勘違いによる古典的なコメディ
登場人物
紫月 マナ
ドキドキフワフワ乙女
紫月 獅子
マナが心配高校生格闘家
ゴールデンウィークももうすぐ終わりのあるお昼。
マナは特にすることも無く、自室のベッドに寝ころびながら、獅子の部屋から拝借したマンガ本を読んでいた。男の時に既に読んだ本だけど、マナにとっては数年ぶり。7つの玉を集める冒険物のこのコミックを夢中になって読んでいた。
ガラリ!と勢いよくマナの部屋の戸が開く。ノックしない人達にもう慣れたのか、さほど驚きもせずマナはマンガを読みながら、ちらっと戸の方へ瞳を向けた。
其処に立っていたのは、紫月 獅子である。しかし、その表情は、いつもの笑顔とは違いとても恨めしそう。
「あら獅子。帰ってきたんだ」
獅子大好き男の子から逃げ回っていた獅子。ずっと野宿していたのか、胴着はボロボロ。大分疲労困憊しているようだ。その姿を久し振りに見たマナの反応はとても素っ気無かった。
「マナ……お前に聞きたいことある……」
恨めしかつ真剣な表情の獅子。
「な、何よ。変な顔して……」
「変じゃ無ぁぁい!」
獅子が突然叫ぶとマナはちょっとビクッとした。
「何よっ!?いきなり怒鳴らないでよ!」
獅子はドカッとアグラをかき、畳の上に座る。そして言った。
「オマエ……尚輝と……」
「尚輝と……ヤッたのか……?」
獅子がちょっと青ざめた表情でマナに質問した。
(ヤった?)
(ああ、立ち会いの事ね)
マナはそう思い満面の笑みで答える。
「うん!ヤったよ!(闘い的な意味で)」
それを聞いた獅子の顔は驚きの表情に変わる。瞳と口は限界まで開き、冷や汗がダラダラと流れ落ちる。
「マジで……ヤったのか?マジで(性的な意味で)」
「だからヤったってば(闘い的な意味で)」
「尚輝って意外と良いカラダしてたし」
「結構頑張ってたよ」
「私もまあまあ楽しんだよ♪」
ニコニコ顔で返答するマナを見た獅子は頭の中でマナと直輝の楽しむ姿を想像した。そして次の瞬間、獅子は……
うぷっ……オロロロロロェェェ!
と顔を伏せて豪快に嘔吐した!
「うわっ!汚ッ!何で吐くの!?」
マナはベッドの上で後ずさりし、獅子のことを汚い物を観るような眼で蔑んだ。
「うう……汚いのは……お前のほうだろぉ!」
口を拭いながら涙目の獅子が叫ぶ。
「直輝なんかとヤるなんてどうかしてるぞ!(性的な意味で)」
「な、何でよ!アンタだってヤってるでしょ!(闘い的な意味で)」
「俺はそんな事はやってなぁい!(性的な意味で)」
「俺がっ俺が悠遠に追われている間にお前はッお前はぁ!」
獅子の悲壮感漂うその気迫に押し黙るマナ。
「……とにかくもう尚輝に近づく事は俺が許さん……!」
獅子の発言に流石にマナも反論する。
「はぁ!?何でお前の指図を受けなきゃならないんだよ!」
「誰とヤろうと私の勝手でしょ!」
獅子も更にいきりたつ。
「勝手じゃ無ぁぁい!」
「あのアホの尚輝とだけは止めてくれぇ!」
「アホはお前だ!このどアホー!」
マナも負けじと言い返す。
「うう……アイツのどこが良いんだ……アイツの……」
獅子はうなだれて涙目で言った。
「アンタと比べたら良いとこだらけよ!」
マナは先日とても楽しんだ尚輝との食事会を思い出して頬を赤らめながら語った。
「アンタと違って空気読めるしぃ」
「私の話を真剣にきてくれるしぃ」
「やさしくエスコートしてくれるしぃ」
「カッコいいしお金持ちだし……」
「やっやめろぉぉぉッ」
「そんな話は聞きたく無ァァァい!」
頬を赤らめながらニコニコ顔のマナの話を獅子は青ざめた表情で遮った。
「もう止めてくれぇ……俺の前でそんな顔でアイツを語るなぁ!」
「なっ何でよ……もう……」
「そんな事言われても何しようと私の自由なんだから!」
マナは獅子に背を向けて言った。
「……それに尚輝はもっと修練して私を満足させるって言ってたもん(闘い的な意味で)」
赤らめた表情でそんな事を言うマナを見て獅子はまた良からぬ場面を想像し吐き気を催す。
「なんならアンタともヤってあげようか?(闘い的な意味で)」
ニヤリと微笑み闘志のこもった瞳で獅子を睨みつけたマナであったが、獅子の眼には全く違う姿で映っていた。
ベッドの上に寝そべる、ロングTシャツを着たマナの下半身は裾で隠れては居るけれど下着しか履いて居ないのだろう。白いナマ足の太ももをチラチラ見せながら、悩ましげな瞳で男を誘惑する小悪魔の様に、獅子の眼には映っていた。
生唾をゴクリと飲み込み、マナを舐め回すように観る獅子。女の子の甘い香りが獅子の鼻腔をくすぐる。獅子の瞳はグラグラグルグルと揺れている。
(うう……マナが……もうひとりの俺が……)
(オカシくなっちまった……)
(それならば……それならばいっそのこと……)
(いや……ダメだ!この娘は俺……そして妹……!)
すんでの所で理性を保った獅子であったが、マナが脚を動かし、ピンク色のレースの下着がチラリと見えたとき、獅子の理性は爆発した!
(うう……うぁぁぁ!)
興奮した獅子が突然マナに覆い被さる!そしてそのままマナはベッドに押し倒された。
「えぇ!?な、何よ!」
獅子の太い指がマナの内ももに触れ、上の方へとスライドさせていく。ゾクゾクとマナの背筋に悪寒が走る。
「ひっ!ひぃぃぃ!」
そして獅子の指がマナの大切な部分に触れようとしたその時、
「ひぃッ!こっこのクソボケがぁぁぁ!!」
「どっっふぉぉぉ!!」
マナの渾身の前蹴りを腹部に食らった獅子は天井にぶつかり、べちゃっと自分の吐いた嘔吐物の上に顔面から突っ込んだ。
「はぁはぁ……こっこの……!」
「変態!変態!ヘンターイッ!」
汚物を見るような眼で嫌悪感を示し真っ赤になりながら、倒れ込む獅子のお尻を蹴り続けるマナであった。獅子はもう汚物そのものと化している様だけども。
マナにお尻を蹴られながら獅子は思う。
(うう……何故……何故こんな事に……)
(あっ……でもコレはコレでなんか……)
なんか新しい世界に目覚めそうな獅子であった……




