ロマンシング☆Manaオンライン2
登場人物
マナ・ノヴリース
高貴なる閃光の剣士(初心者)
アリエミア
絢爛麗美のエルフ白騎士
コーチカ
氷炎魔法極めしアークウィザード
オフィーリア
復活と治癒のハイプリーステス
ベアー
全てを守る重装戦士
街の外に出たマナと仲間達。外といっても【ロードオブレジェンド】というオンラインゲーム内での事である。
レンガ造りの外壁に囲まれた街の大門をくぐり抜けるとそこには草原が広がっており、蒼々とした草花が波打つように揺らいでいる。
「キーボードのここを押すと感情表現が表示されますよ~」
「このボタンを押すとジャンプなのよね~」
オフィーリアとコーチカがヘッドホンを通して色々教えてくれる。教わった通りに押してみると、画面の中のマナの頭にニッコリマーク吹き出しが現れた。
「わわっ面白い!」
喜んでピョンピョンジャンプしながらエモート吹き出しを出しまくるマナ。ニッコリマークだったり怒りマークだったり。
「こんな事も出来るのよー!」
とアリエミア達がマナの眼前に一列に並ぶと、一斉に土下座~土下座~っとひれ伏した。まるで大名行列に平伏す農民の如くだ。
「あっはっは!おもしろーい!」
マナもジェスチャーのやり方を教わって、土下座~っとひれ伏した。戦闘もそっちのけで行われる土下座合戦。このような戯れもオンラインゲーム特有の楽しみかたであろう。
ジェスチャー機能で踊ったり寝転がったりしながら草原をゆっくりと進んでいく楽しげな5人。だが平和な時間は長くは続かない。
どこからともなく現れた魔物達。土気色の肌に子供位の身長の醜い顔のバケモノ【ゴブリン】の登場である。5、6体のゴブリンが棍棒を振り回しながら襲ってきた!アリエミア達をスルーし何故かマナの方にばかり近寄ってくる。
「な、なんでコイツら私ばかりねらってくるのぉ!?」
逃げ回りながらマナは叫んだ。
「私達はレベルが高すぎるから襲われないのよ」
「大丈夫!一人で戦ってみなさいな!」
とアリエミアはイケイケーっと片腕を振り上げるジェスチャーでマナを応援した。
「頑張なのよね~」
「ダメージを受けたら私が回復してあげますよ~」
「おお……」(盾を振り上げる)
と仲間達もマナを応援する。
「……そっれじゃあ戦ってみようかな……!」
マナは逃げるのを止めて大剣を構えた!
(攻撃はこのボタンだっけ?)
ポチっとコントローラーのボタンを押すと画面の中のマナは大剣を勢い良く振り回した!しかし……
マナの振り回した大剣はゴブリンには全く当たらず、明後日の方向へ。その隙に近寄ってきたゴブリン達にたこ殴りにされるゲームの中のマナ。
「あっ……あああああっ!」
画面を食い入るように見つめながら焦るマナ。
オフィーリアの回復も間に合わず、一瞬にして戦闘不能になってしまうマナであった。
「大丈夫ですよぉ~【生命蘇生】~」
オフィーリアが魔法を唱えるとマナは蘇りむっくりと起き上がった。起き上がったマナにゴブリン達がまたしても攻撃を仕掛けようとしてくる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛ー!」
緋い瞳をひんむいて画面に釘付けになりコントローラーをガチャガチャ動かしなんとかしようとするマナであったが、
ち~ん……
そこには、ボロ雑巾のような姿で倒れ込むマナの分身。健闘虚しく再度戦闘不能となった……
「は~いリザレクション~」
オフィーリアが再度魔法をかけまたマナは蘇る。そしてまた……
蘇っては殴り倒されまた蘇されられる。無限地獄かイジメかコレは。
しかしマナは負けず嫌いだ。
「むきむっきぃ~!」
真剣にそして必死にコントローラーを操作するマナ。
持ち前の戦術センスも生かされてきたのか徐々に操作になれてきたようだ。ゴブリン達の攻撃を見事に回避し始めて、隙をついては攻撃を繰り返す。そして遂には全てのゴブリンを撃退したのであった。
「はぁはぁ……や、やった……!」
疲れ果てたマナはコントローラーを置いてチェアーにへたり込んだ。
「すごーい!初期レベルであれだけの数のゴブリンを殲滅するなんて……ゲームのセンス、あるんじゃない!?」
とオフィーリアが嬉しそうに激励する。
「コレでも飲んで落ち着くのよね~」
コーチカがドリンクバーからシュワシュワのドリンクを持ってきてくれた。
よく冷えたシュワシュワを飲んでふぅ~っと一息ついたマナ。そしてまたコントローラーを掴んで一言。
「もっと戦いたい!」
数十分後。そこには……
「ヒィヤッハァ!オラオラどうした!クソザコどもぉ!」
「俺の大剣が怖くて近寄れねぇってのかぁ!?」
「オラオラもっとかかってこいやぁ!」
ゴブリンをひたすら狩り続け、見違える程に強くなったマナ。興奮して性格が豹変したかのように男口調になり、逃げるゴブリンを追い回す。両の瞳はグルグル回り、邪悪な笑みを浮かべながら。
可憐な少女の豹変に驚き、ちょっと引き気味になるアリエミア達。何とかマナを落ち着かせようと、アリエミアが声を掛ける。
「マ、マナ・ノヴリース!ちょっとレベルも上がったし一旦街に戻って休憩しましょう!」
「あは、あはははは!…………はぇ?」
アリエミアの声を聞いて何とか正気に戻ったマナだったが、引き気味になっている仲間達を観て、自分の言動が恥ずかしくなり、真っ赤になってうつむいた。
「ご、ごめんなさい……ちょっと興奮しちゃって……」
ちょっと?とか思いつつもマナを落ち着かせようと話しかけながら街の方へと歩き始めてたアリエミア達。
その眼前に1体の巨大な魔物が現れた。体躯5メートルは有ろうかという巨大なサソリだ!
「あれはこの【草原エリア】のボスモンスター」
「【キングスコーピオン】よ!」
「マナが大量にザコを狩ったから出現したみたいね」
アリエミアが説明する。
「今のマナのレベルでは倒すことは不可能よ」
「私達なら楽勝だけど」
アリエミアが自慢気に語る。それを聞いたマナはまたしても身体の奥底から熱いモノが沸き上がるのを感じた。
戦闘民族の紫月家の血か、それともただの負けず嫌いか。マナは大剣を構え、サソリの前へと歩き出た。
「私がひとりで倒す!皆、手出し無用よ!」
「さ、流石に無茶だと思うけど……まあ頑張って頂戴」
アリエミアと仲間達は後方で待機して、マナの戦いを見守る事にした。
マナを視認した巨大サソリは容赦無く攻撃を仕掛けてくる。鈍いゴブリンとは違い、凄まじい速さで尻尾を振り回し叩き衝けてくる!
(速い!でもっ)
間一髪攻撃を回避し、隙をついて大剣で切りかかる!マナの攻撃は見事にサソリの背中にヒットしたが、殆どダメージを与えることが出来なかった。
「やっぱり無理なのよね~」
「私のMPはもう0なので蘇生は出来ませんよ~」
「おお……」
仲間達はマナの奮闘を固唾を飲んで見守った。
「レベル10以上のプレイヤーがパーティーを組んでやっとマトモに戦えるモンスターよ。」
「レベル5のマナひとりではさすがに……」
アリエミアはそう呟いたが、マナの闘志は衰えない。
巨大サソリは尚もマナに攻撃を仕掛け続ける。大鎌のような前脚で、巨体を生かした体当たりで!
しかし、マナにはサソリの熾烈な攻撃は一切当たらなかった。絶妙なタイミングで攻撃を回避し続けるマナ。そして要所要所で大剣を振るい、的確にダメージを与えていく。
碧色の髪がキラキラとなびき、戦場を動き回る。コントローラーを握るマナの姿とシンクロする。
「こいつの動きは……完全に見切った!」
マナの宣言通り、巨大サソリの攻撃は一切ヒットする事は無く、長い闘いの後、遂に力尽きその巨体は地に沈んだ。
「う、うそ!信じらんない」
「ノーダメージでしかもソロでボスを倒すなんて!」
(本当にこの娘、ゲーム初心者なの!?)
アリエミアはマナの操作技術に超驚嘆した。
「ふぅ~やったぜ!」
満足気にチェアーにもたれかかり、シュワシュワを飲むマナ。またちょっと男っぽくなっているね。
賞賛の嵐を送る仲間達。誉められてとても嬉しく感じるマナ。勝利と賞賛のカタルシスを感じ、初めてのオンラインゲームにドップリとハマってしまう予感。
一方アリエミアは眼を閉じ腕を組んで暫く思案する。そして目を開いてマナと仲間達に話しかけた。
「いける……」
「いけるわ……」
「マナ・ノヴリースのチカラと私達」
「5人のチカラを合わせれば……クリアできるかも」
「【インフェルノクエスト】を!!」
アリエミアの発言を聞いた仲間達がざわめき始める。
「さ、流石に無理だと思うのよね~」
「あ、あれば廃人向けのヤツですよぉ」
「おお……」
このゲームを結構やり込んでいる仲間達でも狼狽える程のクエスト……!?
(インフェルノクエスト……面白そうじゃん!)
マナの闘志は尚も燃え上がる。アリエミアは隣のチェアーに座るマナの顔を覗いた。マナもまたアリエミアの顔を見詰めてニヤリと微笑み頷いた。
「やったろうじゃない!」
「インフェルノクエストとやらをね!」
【ロードオブレジェンド】
今年5周年を迎える中堅オンラインゲーム。基本無料だよ。
このゲームに職業の概念は無く、習熟したスキルや魔法によって貰える称号が職業の変わりになっているよ。
例えば料理スキルを習熟すると、料理人の照合が貰えるよ。
後は二つ名を自由に付けることが出来るよ。マナの二つ名は【高貴なる閃光の剣士】アリエミアが勝手に設定したよ。もっと強くならないと名前負けしちゃうね。
生体認証システムを使った認証はとても便利だけれど、個人情報を密かに国に収集されているという黒いウワサも有るみたいだよ。




