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ロマンシング☆Manaオンライン

登場人物


マナ・ノヴリース

突っ込み疲れた異世界少女


アリエミア

付け耳エルフ女の子騎士


コーチカ

ワープ失敗魔法使い少女


オフィーリア

メガネっ娘回復役プリーステス


ベア

全てを受け流す大盾少年

「でね~あの時は本当に死んだと思ったのよ~」


 暖かな光を放つ太陽も西向きに傾いてきた午後一番。


 弧を描くような陣形【ムーンフォーム】?にチェンジしたアリエミアとその仲間達+マナは和気あいあいと会話をしながら、千代市の街中を歩き続けていた。

 すっかり打ち解けた様子の、マナと自称異世界の冒険者達。マナの語る異世界話に興味津々に耳を傾ける。


 勿論、マナは異世界話を本気で信じて貰おうと思っているわけではない。ノリノリで聞いてくれるのがちょっと楽しくなってきて、ついつい口の回りが捗ってしまうマナだった。(男だったことはボヤカシている。)


「それでそれで!魔界の王ってどういうヤツだったの?」

アリエミアが眼をキラキラさせてマナに質問する。


「うん。いいヤツだったよ。何回も助けてもらったし」

「でもあの人、水が弱点なんだよ~」

「水筒の水、引っ掛けてやったら悲鳴をあげて、のた打ち回ってんの笑」

序章でお世話になった魔界の王の失態を楽しげに語り、地に落とすマナ。


 楽しげに語るマナを観ながらアリエミアは思う。

(この娘……こんなに緻密な設定を妄想しているなんて)

(それに初めて見る顔だったし……まさか……!)

(この娘は……熟練の引きこもり(プロニート)!)

(たぶん心に問題を抱えて……家族とも軋轢が……)

(こういう娘は優しく接してあげなきゃ……優しく……)

勝手な勘違いにより哀れんだ表情でマナの話を聴くアリエミア。


(なんかこの人、失礼なこと考えてない?)

可哀想な人をみるような眼に変わったアリエミアを見て何となく直感するマナであった。


 楽しく会話しながら歩くと、長い距離でもあっという間に感じるものだ。まだまだマナ物語は途中であったが、いつの間にか目的地に着いたようだ。


 千代市の中心街にある大規模なアーケード通り。有名な百貨店や専門店が軒を連ねている。老若男女、沢山の人が歩いており休日を楽しんでいる。祝日ということもあり、所々でジャズの演奏など、イベントが催されている。


 その店々の並びに、地下へ降りる階段が。人がひとり通れる位の狭い階段だ。下は薄暗く、まるでどこまでも下り階段が続いているかのようだ。


「ここよ。さあ行きましょう」

「薄暗いから足元に気をつけてね」

アリエミアと仲間達が階段を降りていく。まるでダンジョン探索のような気分でマナも後をついて行く。


 地下2階分位降りたろうか?終点には、ガラスの押し扉があり、薄暗い照明が扉を照らしている。扉には看板が付いており、【あなざ~らいふ】とポップな文字で表記してある。


(アナザーライフ?他の命?もう一つの人生?)

何かのお店のようだが……アリエミアが扉を開けるとソコには……


 かなり広くて薄暗い室内に、間仕切りで仕切られたデスクが沢山並んでいる。そしてデスクチェアーに座ってモニターを見詰める沢山の人達が。何やらブツブツ画面に向かって話しかける人、カタカタとキータッチ音がそこら中から聞こえてくる。


「ここって……?」

マナがアリエミアに訪ねる。


「此処はね……」


「オンラインゲーム専門のネットカフェよ!」


 オンラインゲーム、つまりネットワークを介して複数人で遊ぶテレビゲームの事だ。


 首を傾げて?マークの表情を浮かべるマナ。マナはネットに疎かった。男の時は格闘技一筋だったし、女の子になってからはずっと異世界暮らしだったし。


「マナ・ノヴリース……まさかオンラインゲームを……知らないの!?」 

コクリとマナが頷く。


(うっそ……この娘、ニートなのに家で何して過ごしてるの……)

アリエミアはまたしても失礼な事を想いながらも、一から丁寧に説明を始めた。


「かくかくしかじかで~」

アリエミアの丁寧な説明により、何となく理解したマナ。


「つまり皆で協力してゲームで遊ぶ訳ね。結構面白そう」

(いつもの戦場ってそういうことか)

「でも私、お金持ってない……」


マナが残念そうに言うとアリエミアはふふんと微笑み、

「大丈夫よ!私この店、顔パスだから!」

と言って受付へ向かって歩き出した。

(顔パスって……何なんだろうこの人は!?)


「いらっしゃいませアリエミア様」

執事風の若い男性店員がアリエミアに声を掛けた。鎧姿のアリエミア達にも全く驚かず。

「五名様での御予約ですね」

「いつもの席でヨロシクね!」

「承知致しております。ごゆっくりお楽しみ下さい」

そんな店員とのやり取りが終わってアリエミアがマナ達の元へと戻ってきた。


「さあ、行きましょう!」

アリエミアはマナの手を引き、店の奥へと歩き出した。ゲームに夢中になるお客さん達を横目に見ながら奥へと進む。


 店一番奥の突き当たり。そこにある扉を開けると個室になっており、パソコンデスクが6台横並びに並んでいた。室温も適温。防音仕様で声をだしても大丈夫。特別室のようだ。

 マナとアリエミアと仲間達がチェアーに座る。マナもちょこんとチェアーに座ると後ろからアリエミアが顔を覗かせた。


「アナタは初心者だから私が教てあげるね」

「まずはIDの作成ね」

アリエミアがマナのデスクのキーボードをカタカタと操作する。


「さあ、ここに手のひらをかざして」

アリエミアが指を指す先、デスクの上に四角いガラスの板のような機械が置いてあり、パソコンと線で繋がっているようだ。


 マナは言われるがままにそのガラス板に手のひらを置くと、少しの間を経て【生体認証登録完了】とモニター画面に表示された。

「コレでこの機械に手をかざせばアナタのデータが何時でもロードされるわ!」

手相と指紋でIDを認証するシステムのようだ。


はえぇ~ふんふんスッゴい、とアリエミアの説明に相づちをうつマナ。


「さあいよいよゲームにログインよ!」

モニターに表示されているアイコンのひとつをカチィンとクリックするアリエミア。すると画面が変わり、


 【LORD of LEGENDS】


 というタイトルが表示された。


 ロードオブレジェンド。


 好きなようにキャラクターを作成し、そのキャラクターになりきってモンスターを討伐したりしてキャラクターを育てていく、ファンタジーアクションRPGのゲームだそうだ。


「最初はキャラクターの作成よ。私がアナタソックリに設定してあげる!」

「この作業が結構大事なんだから!」

アリエミアは画面とマナを交互に見比べながら画面に映るキャラクターの容姿を細かく変更していった。それはそれは真剣な表情で。


「おおーすごい。リアルな画像だねぇ」

マナは画面に映る3Dのキャラクターを観て関心する。


 結構な時間をかけて、ゲームの中のマナが完成した。碧色の長い頭髪、緋い大きな瞳。小柄な体格。色白の肌。そこには現実とほぼ変わらないマナがマナの目の前に映し出されていた。


「わぁ~私ソックリだ……でも……」

ソックリそのまんまの自分を観てマナはひとつだけ不満を漏らした。


「あ……あの、私のバストはもうちょっと大きいんじゃないかなぁ?」

マナの言葉を受けてアリエミアがマナのお胸と画面を交互に見比べて、


「いいえ、こんなもんよ」

と無情にも言い放った。

ショボーンとするマナにヘッドホンとインカムを装着させて、

「ここからはゲームの中でお話ししましょう!」

といってアリエミアは自分の席に着いた。


以下、ここからはゲーム内の会話である。


 ゲームをスタートしたマナは、どこかの街の中に佇んでいた。ヘッドホンからは操作方法を説明するアリエミアや仲間達の声が聞こえてくる。

 教わった通りにコントローラーのボタンを一生懸命押してみると、画面の中の自分が、ぎこちなく動き始めた。


「わわっ!動いた動いたっ」

 くるくると同じ所を走り回るマナ。ゲーム初心者のマナはそれだけでも楽しく感じた。走り回るマナの元に、どこからともなく4人のキャラが集まってきた。


 白くてカッコいい甲冑姿のエルフの女騎士。

 黒いローブとマントにトンガリハットの魔女っ娘。

 白い修道女風な装いのメガネっ娘。

 重厚な全身鎧を纏い大盾を持った大柄な戦士。


 これまた現実世界とソックリなアリエミアと仲間達だ。その装備品は現実の安っぽいコスプレ姿とは違って、かなりゴージャス。一方、マナの装いは只の布の服。しようがないよね、初心者だもの。


「皆、カッコいいなぁ~」

「私もそーいうの着けたいなぁ」

マナは、ついこの間まで居たあっちの世界の事を思い出す。マナは動きやすさと実戦を重視した、飾り気の無い装備であったから、カッコいい装備にちょっと憧れていたのだ。


「レベルを上げればアナタも装備デキるようになるわよ!」

「さぁ先ずは武器を選ばないとね!私についてきて!」


 言われるがままにアリエミアについて行くマナと仲間達。武器屋らしき建物に到着した。


「さてマナさんはどんな武器がお好みかしら?」

「初心者は双剣が使い易いなのよね~」

「弓なんかもカッコいいですよぉ~」

「おー……」(盾を掲げる)

アリエミアと仲間達がマナの武器談義に盛り上がる。飾られている武器を色々見回したマナはひとつの武器に眼が止まった。


「私、これがいい!」

マナが指を指した先に飾られた武器は、マナの背丈ほども有る大剣。

「大剣は確かに強くてカッコいいけど扱いが難しい武器よ」

アリエミアが言うと

「うん。でもコレがいい!」

マナの気持ちは決まっているようだ。


 マナは異世界でも本当は大剣を振るって戦いたかったのだ。しかしながら、ゲームとは違って、異世界とはいえ現実世界。華奢なマナにはマトモに扱うことが出来なくて、悔しい思いをしたのだった。


 アリエミアに大剣を買って貰い、装備したマナはテンションが上がりクルクル走りながら大剣を振り回す。

「NPCに攻撃しないようにね。衛兵がすっ飛んでくるわよ」


 高揚しまくるマナを引き連れて次は防具屋にやってきた一同。初心者でも装備できる、ちょっとカッコ良さげな革製の装備一式を買って貰い、更にテンションが上がるマナであった。


「これで準備は整ったわね!」

「さぁいよいよ真の魔物討伐に出発よ!」


「「おお~!」」

テンションの上がったマナも一緒に叫ぶ。


 さぁいよいよマナのオンラインゲームデビューがついに始まるのだった!

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