ロマンシング☆Mana2
登場人物
マナ・ノヴリース
異世界帰還女の子剣士
アリエミア
付け耳自称エルフ騎士女の子
魔法使い
なのよね~が口癖
女神官
メガネっ娘
全身鎧盾戦士
おーしか言わない
「なかなか現れないわね。魔物」
自称エルフの付け耳女の子騎士アリエミアは歩きながら辺りを見回して呟いた。
此処は剣も魔法も無い、何の変哲も無い地球の地方都市である。
(現れてたまりますか)
隣を歩くマナは心の中で突っ込みを入れる。
5人で十字の隊列【インペリアルフォーム】?を組み、千代市の街中を颯爽と歩く自称異世界からの冒険者達とサマードレス姿のマナ。異様な装いの彼女達だが、意外にも街を行き交う一般市民達の反応は薄い。
(うーんもっと変な目で観られると思ったけど)
(そうでもないなぁ。流石、自由都市千代)
鎧姿でも剣を持っていても補導も逮捕もされない自由都市【千代市】。千代良いとこ一度はおいで~
「マナ・ノヴリース、そう言えば他の仲間達を紹介してなかったわね」
(もうノヴリースはヤメテ……)
口に出して言おうかとも思ったけど楽しそうなアリエミアと仲間達を観てガマンするマナであった。
「この娘はコーチカ。魔法使いよ」
「人呼んで【炎氷のコーチカ】!」
トンガリハットのマナと同じ位小柄な女の子。黒髪ミドルヘアで眠たい目の飄々とした女の子だ。
「よろしくなのよね~」
どうやら、なのよね~が口癖のようだ。
「で、このメガネっ娘はオフィーリア。女神官よ」
「【慈悲の女神オフィーリア】!」
白い修道女のような装いでメガネをかけたロングヘアーの大人びた感じの女の子。服の上からでもわかる豊満なお胸と腰つき。
「回復役をやらせでもらってます~よろしくお願いしますね~」
おっとりとした女の子の様だ。
「そしてこのデカいのがホワイトベアー。略してベアよ」
「このパーティーの防御役をやっているわ!」
「通り名は【全てを受け流す男】よ!」
「ちなみにこの子はまだ12歳よ」
(ええっ!12って事は小学生、いや中学1年生かな)
ベアと呼ばれた全身鎧姿で大盾を構える大柄な少年。無表情なのかボ~っとしてるだけなのか寡黙な少年のようだ。
「おー……」
この子はおーしか喋れないのかあえて喋らないのか……
ベアの後ろ姿を斜め後方に位置するマナ。大盾の裏側が見える。
(ベニヤ板製だなコレ……)
「我がパーティーには前衛アタッカーが必要だったのよ」
「アナタが加わってくれて本当に嬉しいわ!」
アリエミアは嬉々とした表情で喋りながら軽やかに歩を進める。
(本当の戦いなら確かにそうだけども……ねぇ……)
本当に魔物が出るわけでもないし、前衛とかどうでもいいなじゃないと思うマナであった……
「そういえば、アナタにも通り名が必要ね」
腕を組んでうーむと考え始めるアリエミア。ふと、あっちの世界で、通り名めいた名前を付けられた事を思い出したマナ。
【物無くしのマナ】
マナの時空転移魔法が上手く扱えなかった時期に付けられた不名誉なあだ名だ。不必要な物まで転移させまくってしまった為に付けられたこのあだ名。マナはちょっと思い出し恥ずかしくなった。
「思いついたわ!」
「【高貴なる閃光の剣士】マナ・ノヴリースよ!」
高らかに発表するアリエミア。仲間達から歓声が上がる。
「とてもカッコイい名前なのよね~」
「流石、アリエミア様ですわ~」
「おお……!」
(ヤバい、ちょっとカッコいい……)
マナもそう思ってしまった。まあ【物無くしのマナ】よりはね。
「これでアナタも私達の真の仲間となったわね」
「改めてこれからもよろしくね」
微笑みながらマナを見つめ、片手を差し出すアリエミア。
「う、うん……こちらこそ……よろしく」
マナは照れくさそうにちょっと俯きながらアリエミアの手を握り返した。
(これって……友達が出来たって言えるのかな)
(変わった人達だけど……ちょっと嬉しいかも)
こっちの世界に戻って女の子としての初めての出会いにちょっと嬉しくなるマナであった。
「そんなこんなしてたら、魔物出現よ!」
アリエミアが叫び、仲間達が身構える!
(えっマジで!?)
「地獄のネコの集団ね!皆気をつけて!」
マナもヘルキャット達を見つめるが……
にゃーん。
空き地でマッタリする野良猫の集団。
「只の猫の集会じゃん……」
ファイヤーボール!とか2段切り!とか叫びながら攻撃したフリをするアリエミアと仲間達。猫達は眠たい目でアクビをしている。
「…………」
無言で立ち尽くすマナ。猫達は特に何もしてないのだが、アリエミア達はうわぁ!とかやられたぁ!とか言って何故か劣勢に立たされているようだ。
猫達は、なんだこの人間達は?みたいな表情でアリエミア達を眺め見ている。
アリエミアがマナの足元にごろごろ転がってきた。
「ううう……マナ・ノヴリース……アナタも闘いに参加して!」
「このままでは全滅しちゃう!お願いよぉ!」
苦痛に顔を歪める(演技の)アリエミア。
「……ふふっ」
余りにも馬鹿々々しいアリエミアの迫真の演技に、思わず吹き出してしまうマナであった。
「わかったわよ!私もやるわ!」
マナは空気剣をその右手に持って腰を落として構える。
そして異世界で培った剣技を披露した。
「ふっ!」(回転剣舞!)
「はぁっ!」(飛天斬!)
「せやっ!」(昇竜閃!)
碧色の髪がキラキラと振り乱れ、マナが技を繰り出す。まるで本物の剣を振るっているかの如く流れるような剣技。余りの迫力に、猫達も驚き蜘蛛の子散らすように逃げていった。
「す、凄い!」(本物の剣士みたい!)
アリエミアと仲間達は目を丸くして驚いた。
「マナ・ノヴリース、アナタのおかげで魔物を撃退する事が出来たわ!」
嬉しそうにマナ駆け寄るアリエミアと仲間達。
「いやぁ……はは……特に何もしてないけどね」
(猫達には悪いことしちゃったな)
「むむっあそこに居るのはゴブリン!」
(ええっ!今度はゴブリン!?)
アリエミアが路上を歩くハゲた小太りのオッサンを指差し叫んだ。
(只のオッサンじゃん。てか失礼だな!)
「おっ!アリエミアちゃんか。ゴブリンだよ~ゲヘヘ」
オッサンが太った体を揺らしながらアリエミアに向かって話かけた。
(オッサン知り合いかよ!ノリノリだし)
アリエミアの戯れに付き合う心優しいゴブリン(オッサン)を討伐した。アリエミアに足蹴にされ倒れ込むオッサンは何故か恍惚な表情を浮かべていた。アリエミア達は次の標的を求め歩き続ける。
「今日は魔物の数が少ないわね」
街中を歩き回って何匹かの魔物?を討伐したがアリエミアは満足していないようだ。魔物といっても、猫とか犬とかオッサンとか虫とかだけれども。
「あっ!そういえば八鬼山に巨大熊が出没したって今朝のニュースでやってたわね」
「巨大熊討伐に八鬼山に行きましょう!」
アリエミアが拳を振り上げ意気揚々とした表情で叫ぶが、魔法使いコーチカが慌てて割って入った。
「リーダ~、そのクエストは私達ではまだレベル不足で無理なのよね~」
(本気で危険なのはゴメンなのよね~)
「あらそうかしら……じゃあ今回はやめてきましょう」
ふぅ……と安心する仲間達。
「でもこのまま歩き回るのも飽きてきたわね」
「よし!【いつもの戦場】に移動しましょう!」
なんだかんだ言って結構楽しかったマナで有ったが歩き回るのに飽きたのも確か。でもいつもの戦場とは一体?
「コーチカよろしくお願い!」
「アイアイサ~なのよね」
アリエミアの指示を受けたコーチカが路面に杖で何かを描き始める。杖の先っぽがチョークになっているようだ。
大きなサークルに謎の記号。魔法陣のつもりだろうか?
「【ワープポータル】の魔法を使うのよね~皆入ってーなのよね」
(ワープ?マジで、いや無理なのは解ってるけど)
マナはそう思いつつも取りあえず仲間達と一緒に魔法陣に入った。
コーチカが杖を掲げてゴニョゴニョと何かを呟き始める。そして……
「ワープポータル発動!……ナノヨネ」
「…………」
「…………」
「…………」
「さぁ行きましょう」
しばらくの沈黙の後、アリエミアと仲間達は何事も無かったように歩き出した。
解ってはいたけれど突っ込まずにはいられない。
(結局歩いていくのかよ!)
マナは心の中で突っ込みつつ、仲間達と共に歩き出した。
いつもの戦場とやらへ…………!
【物無くしのマナ】
手に持っていた物がいつの間にかなくなっちゃう。そんな経験を何度も繰り返し、何となく時空転移魔法のチカラに気づくマナ。
お腹が空いたときに何か食べた~い!と念じてみたら、頭上から焼きそばが降ってきたこともあったみたいですよ。焼きたて熱々の☆




