ロマンシング☆Mana
登場人物
紫月 マナ
サマードレス逃走女の子
長耳の女の子騎士と仲間達
此処は名も無き火山地帯。噴煙立ち込めるこの荒涼とした大地に、鎧姿で大剣を構える碧髪の少女剣士。ご存知マナである。
対峙するのは、巨大な炎の竜。共に戦う仲間達は皆、傷つき、満身創痍である。
「マナ・ノヴリース!危ないッ」
片腕を抑え、跪く金髪エルフの女の子騎士が叫ぶ。炎竜はマナに向かって巨大な口から灼熱の炎を吐いた!
「くッ!」
マナは避ける事が間に合わず、大剣を盾にして防御しようとした。
「【精霊の護盾】!マナちゃんを守って下さい~」
後方にて杖を構える女神官のメガネっ娘がマナに向かって防御の魔法をかけた!
大地を這う轟炎がマナを襲うが、魔法防盾によって護られ、マナはダメージを受けずに済んだ。
「あらら~私のMPはこれで0です。後は……」
女神官のメガネっ娘も力尽き跪く。
「もう少し、もう少しで倒せそうなのに!」
エルフの女の子騎士が悔しそうに呟いた。火竜もかなりダメージを受けておりマナ達と同じく満身創痍の状態だ。
手負いの竜は狂乱してその鋭い爪を振り回す。一撃でも食らえば戦闘不能必至。マナはなんとか回避し続けて、反撃の機を伺う。
(攻撃が激しすぎて避けるだけで精一杯だわ……少しでもいいから隙が出来れば……)
何とか避け続けていたマナであったが、その足が止まってしまう。
「しまった!スタミナがっ!」
動きの止まったマナに炎竜の鋭い爪が襲いかかる!
ガキィィンッ!
金属音とともに大盾を構えた全身鎧姿の男戦士が炎竜の攻撃を受け止めた!大盾で受け止めた戦士はダメージを軽減しきれず崩れ落ちるように倒れた。しかしそのおかげで炎竜の動きが一瞬止まる。
「コレは勝機なのよね~!【氷の投槍】!やっちゃって~」
炎竜の背後から魔法使いの女の子が叫ぶ。女の子の杖から発現した氷の槍は、炎竜の後ろ脚にヒットし、炎竜は体制を崩し転倒した。
「今よッマナ・ノヴリース!【稲妻の剣】!」
エルフの騎士が腕を掲げてスキルを使用し、マナの大剣に稲妻が纏った!
「はぁぁッ!」
マナは稲妻纏った大剣を頭上高く掲げ跳躍した。
「コレで止めよッ【飛翔烈震斬】!」
……………………
時は戻り、商店街の一角にある駄菓子屋。外のベンチに座りマッタリしていたマナに一人の女の子が話しかけてきた。
その容姿と言動にマナは驚く。綺麗なロングの金髪、長い耳。緑と青のオッドアイの瞳。マントを羽織り剣を備え、まるで異世界から来た冒険者のような装い。スラリとした容姿で、マナよりも大人びた感じの女の子だ。(お胸も結構大きい)
「アナタもあっちの世界の住人のようね」
女の子はマナに向かって微笑み話しかけた。
「ま、まさかあなたもこちらの世界に転移してきたの!?」
マナはびっくりして立ち上がり女の子に問いかけた。
「そうよ。私の名前はエルフのアリエミア」
「人は私を【白麗のアリエミア】と呼ぶわ」
エルフの少女アリエミアは不敵に微笑みながら答えると、マナの顔まじまじと見ながら続けて言った。
「その碧色の髪、赤い瞳…」
「アナタは森の精霊ドリアードの一族かしら?」
マナはうーん?と思いながら答えた。
「いやぁ普通の人間族だと思いますけども…」
アリエミアはマナの顔をジッと見つめながら
「あら、そうなの。変わっているわね」
「ではあなたのクラスは何かしら?」
「ちなみに私は白騎士よ」
アリエミアは自慢げに答えた。
(クラス?うーん)
「私は強いて上げれば剣士?かな。魔法もちょっと使えたけど」
それを聞いたアリエミアは嬉々とした表情で
「魔法剣士なの!素晴らしいわ!是非私のパーティーに加わって欲しいわ!」
とマナの両手をぎゅっと掴みキラキラした瞳で言った。
「えっパーティー?な、何の為の…!?」
マナが怪訝そうに問いかけると
「勿論、魔物討伐の為のパーティーよ!」
アリエミアはふふんっと微笑みながら答えた。
(ま、魔物?こっちの世界にいる訳が…?)
(にしてもこの人、騎士の割には貧相な装備だなぁ)
マナはアリエミアの装いを見て思った。
(……ん?この耳?)
なんか違和感を感じたマナはそ~っとアリエミアの長い耳に手を伸ばし摘まんでみた。
……取れた。
取れた長い耳の内には普通の耳が隠れていた。アリエミアの長い耳は作り物の偽物だったのだ。よくよく見るとオッドアイの瞳もカラーコンタクトのようだ。
「あっちょっ!私の耳返しなさい!」
奪うようにして耳を取り返すアリエミア。白い目で見つめるマナ。
「いや、コレはその……呪いよ!呪いをかけられて耳が縮んじゃったの!」
「本当はエルフなのよっ!」
いそいそと耳をつけながら動揺するアリエミア。
マナが指を指して指摘する。
「その瞳もカラコンっすよね……」
「こここ、これはそのっ!あ、アナタだってその瞳カラコンじゃない!」
逆ギレするアリエミア。
「私のは地瞳です……」
マナが答えるとアリエミアは驚愕した表情でマナの瞳を食い入るように見詰めた。
「う、うそ!こんなに赤い瞳が……全然レンズの凸が無い……」
「そ、その碧髪の髪は!?」
「地毛です……」
アリエミア更に驚愕し、マナの頭皮をごそごそいじくり回す。
「う、うそ……こ、こんな……」
「私なんか月に3回も染め直すのに……」
(その金髪、染めてるんだ……)
「こ、こんな……」
「こんなコスプレする為に生まれてきたような女の子が存在するなんてっ!」
(こ、コスプレ……)
アリエミアは異世界から来たという設定の只のコスプレ女の子だったようだ。アリエミアという名前も本名ではなさそう。
「ま…負けたわ」
(何の勝負だよ)
両手両膝を地面に付いてガクッとうなだれるアリエミア。なにコレ?どうしよう。という表情でそれを見詰めるマナであった。
「リ~ダ~どうしたのよね~!?」
不意に女の子の声が聞こえる。マナが前を見るとそこには、
「ありり?ガックリーダーなのよね~」
トンガリ帽子を被って丈の短いローブに黒いマントを羽織り、水晶玉が先端に付いた杖を持ったセミロングの女の子。魔女っ子かな?
「あらあら~状態異常ですか?」
白い法衣を纏った修道女の装いのロングヘアーのメガネっ娘。
「おお……?」
全身鎧を装着し大盾を構え、首を傾げながらおお……?とだけ一言、無表情の大柄な男の子。
が立っていた。
リーダーというのはおそらく私の目の前でうなだれる自称エルフの白騎士の事であろう、とマナは思った。
うなだれていたアリエミアがすくっと立ち上がり髪を掻き上げながら一呼吸して口を開く。
「私としたことが余りの衝撃につい素に戻ってしまったわ」
「リーダーが復活したのよね~」
「ってその可愛い女の子は誰なのよね~?」
トンガリ帽子の女の子が後ろに佇むマナを観て言った。
「ああ、この娘はね」
マナが口を開く前にアリエミアが喋り始める。
「この娘は私達の最後の一人の仲間よ!」
「【定められし宿命】のね!」
アリエミアは嬉しそうに高らかと叫んだ。
「おお~!いかにも異世界ってカンジの娘なのよね~」
「あらあら~とっても可愛い女の子ですわね~」
「おお……?」
アリエミアの仲間達がワイワイ盛り上がる。
マナは無言で佇む。
(ああ…今度は勝手に宿命の仲間にされてしまった…)
(獅子には肩車で街中走り回され)
(ママには着せ替え人形にされ)
(今度はコスプレイヤーのパーティーに強制加入か…)
(なんて日だッ!!)
「そう言えばあなたの名前、まだ聞いて無かったわね」
突っ込む気力も失い呆然と佇むマナにアリエミアが尋ねた。
「え……?あ、ああ私は……」
「【マナ・ノヴリース】……あっ!」
マナは自分の名をマナ・ノヴリースと名乗ってしまった。ノヴリースは、マナがあっちの世界で名乗っていた名字だ。長年名乗っていたのでついつい口から出てしまったのだ。異世界感が更に増してしまったマナ。
アリエミアと仲間達は瞳をキラキラさせてマナ・ノヴリースの事を見詰める。
「マナ……マナ・ノヴリース!」
「素晴らしいわ!あなたこそ…あなたこそ私が求めてた理想の逸材よ!」
「是非っ!是非とも私達の仲間になってちょうだい!」
アリエミアがマナの両手をがっちり掴み、ブンブン振りながら懇願した。
「お願いしますなのよね~」
「可愛い女の子、大歓迎ですわ~」
「おお…!?」
アリエミアの仲間達も皆、期待を込めた瞳でマナを見つめている。
「う、うーん」
(このまま家に帰ってもまたママの着せ替え人形になるだけだし…)
(暇つぶしにはなるかな)
瞳を閉じてちょっとだけ思考したマナ。目を開き言葉を発した。
「わ、わかったよ。あなたのパーティーに入るよ」
その言葉を聞いたアリエミアと仲間達から喜びの歓声が上がった!
「とっても嬉しいわ!マナ・ノヴリース!」
「これからもよろしくね!」
アリエミアは満面の笑みでマナにハグした。こんなに歓迎されると、流石にちょっと嬉しくなるマナだった。
アリエミアは剣を鞘から抜き天へと掲げる。明らかにプラスチックぽい剣であったが。
「とうとうこれで【5人陣形】を敷く事が出来るわね!」
「さあ皆!5人陣形【インペリアルフォーム】展開よ!」
アリエミアが叫ぶと仲間達はシュバババッ!と動き出し、アリエミアを中心に十字に隊列を組んだ。先頭を大盾の男の子、後方に魔女っ子、片翼に修道女。もう片翼が開いている。
「さあ!マナ・ノヴリース!アナタは私の隣よ!」
(なんだコレ)
マナはそう思いながらも、アリエミアに言われるがまま配置に就いた。
「さあ魔物討伐の旅に出発よー!」
「おおー!!」
アリエミアが叫び、仲間達もそれに応える。
「お…おぉー」
(何だよ魔物討伐って…)
マナも取り合えずば同調する。そして此処、商店街の駄菓子屋前から、なんだがよく解らない冒険が始まるのであった…
【ノヴリース】は異世界にて、幼い姿のマナを拾い育ててくれた老夫婦の名字だよ。最初は粗野な男の子獅子だったけれどおばあさんの厳しい躾と優しいお爺さんの教育を受けて女の子らしく育ってマナとして成長したんだね☆




