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男の自分に恋人(男)疑惑で私困惑☆

登場人物


紫月 マナ

股関節ガクガク女の子


紫月 獅子れお

ビックリ青ざめ高校生格闘家


女の子?

獅子の○○!?

 「げげんげっ!」


 マナと獅子が早朝鍛錬から帰ってくると、外門の前に一人の女の子が佇んでいた。

 獅子はその女の子を見た瞬間、気まずそうな表情で声を上げた。その子は獅子の声に気付き、こちらに小走りで向かってきた。


「あっ獅子くぅーん!」

両手を振ってパタパタと走ってくる。


 長めの栗色ショートボブ、大きめのパーカーにデニムのショートパンツにスニーカー。ボーイッシュな感じの女の子。白くスラリとしたナマ足の内股で走ってくる。


 獅子の身体にぶつかって止った女の子。マナよりもちょっと高い位の身長のその子は、獅子の胸元辺りから顔を上げて獅子の顔を見詰めた。長い睫毛の大きい瞳。色白で中性的な顔立ち。男の子かな?


「もう!獅子くん、どこに行ってたの!?」

少年のような高い声。やっぱり女の子かな?長めの袖口からちょんと出た指を獅子の胸に当てている。


 マナも知らないこの女の子?。

(誰だろうこの子?まさか獅子に彼女!?でも……)

そう思ったマナであったが、対する獅子の表情は苦笑いでどこかぎこちない。


「いやぁ……ははは……ちょっと鍛錬にね」

「てか、何しにきたのかな?」

獅子が苦笑いしながら訪ねると、


「ひっどい獅子くん!」

「連休中はボクといっぱい遊ぶって約束したじゃない!」

女の子は頬をぷぅっと膨らませてぷんぷんしながら返答した。ボクっ子かな?


「いやぁ、ははは……そうだったっけ?」チラリ


 獅子は頭を掻きながら苦笑いで答えると、チラリとマナの方へと視線を向けた。まるで助けてと言わんばかりの困った表情で。


 女の子はその目線に気付き、マナの方を向いた。そしてマナの方へとツカツカ歩き出す。マナを見るその瞳は、獅子を見ていたときと違ってとても冷たい目をしている。


「あなたは誰?獅子くんの彼女?」

冷たい目で睨みつけながらマナに問いかける女の子。


(ああ、この子何か勘違いしているなぁ)

マナはそう思い、

「いや……私は獅子の……」

と言いかけた処で、


「人に名前を尋ねるときは先ずは自分からだよね」

女の子が被せるように言い、更につづけて喋る。


「ボクの名前は遠野(とおの) 悠遠(ゆおん)

「獅子くんとは高校の同級生で同じクラス」

「学校ではいつも一緒に行動している親友以上の関係だもん!」

背後で獅子が思いっきりブンブン首を横に振っているけども。


「そうなんだ。で私はね、獅子の……」

とマナが言いかけた処で悠遠はくるりと振り返り、獅子の方へと歩き出した。


「いも……うと……で……(聞けよ)」

悠遠にマナの声は届いていない。


悠遠は歩きながら獅子に向かって問いかける。口元は笑顔のようだけど、瞳は見開き三白眼になって……


「ふーん獅子くん、こんな可愛い彼女いたんだ。獅子くんは硬派だから女の子に興味なんか無いと思ってたのに。ボクとの約束忘れて彼女とデートしてたんだ。何?その顔、ボクのコト嫌いなの?ボクはこんなに獅子くんの事が好きなのに。獅子くんの事なら誰よりも知ってるよ。ねぇ僕じゃ駄目なの?何で?ボクが【男の子】だから?いつもボクのこと優しくしてくれるじゃない。あの優しさは全部嘘だったの?ねぇ獅子くん答えてよ!ねぇ!」


(なにこの子怖い)


(やっぱり男の子だったんだ)


マナはその様子を唖然としながら眺め思った。


 獅子は追い詰められた猫の様になって固まっている。青ざめて引きつった苦笑いに若干の涙目。その様相は声には出さないがヘルプヘルプミーと訴えかけている様であった。


(誤解を解いてあげなきゃ……)

マナはそう思い悠遠に話しかけようとしたが、その瞬間、幾つかの記憶がフラッシュバックした。


【自主規制】ポロリ


 強制肩車ダッシュ


(お前は全然【胸が無い】し)


(無いしぃ~)


「………………」


「えーと悠遠君だったカシラ?」

マナが悠遠の肩にポンと手を置き話しかけた。振り返りキッとマナを睨む悠遠。


「そんな怖い顔しないで~ワタクシの名前は紫月マナ」

「ワタクシは獅子の妹ですのョ」

なんかわざとらしいお嬢様言葉で話しかけるマナ。


「だからお兄様とは彼女とかそういう関係ではゴザイマセーン!」

悠遠の表情が緩む。

「そう……だったんだ」

獅子もホッとした表情になった。


「だからね……」

「アテクシに構わず二人で遊びにいっていらっしゃい!」

「も~う、こんな可愛い彼女をほっとくなんてお兄様ったらぁ!」

「二人ともお似合いッ!ベストカップル!」

「ワテクシとっても羨ましいですわ~!」


と満面の笑みで、可笑しなお嬢様言葉でまくし立てるマナ。


「そうかな。エヘヘ~」

うつむきながら照れる悠遠。


な、何言っちゃってんのォォオ!という表情の獅子。


「……でも獅子くんに妹っていたっけ?」

悠遠が問いかける。


「遠い所に行っていて、つい最近帰って来たんザマスのョ~」

マナが答えた。決して嘘はついていない。


「さあさワタクシに構わず楽しんでイラッシャイ」

マナが答えると、悠遠は獅子の腕に抱きつき、

「えへへ、妹さんのお墨付き貰っちゃったね」

頬を赤らめながら嬉しそうに言った。 

相変わらず青ざめた笑顔の獅子。


「あ、遊ぶったって、な何するんだよ」

獅子は青ざめたまま問いかけた。


「えっとね~」

「遊園地に行ったりぃ動物園に行ったりぃ水族館にも行きたいなぁ」

「二人でオシャレなカフェでランチしたりぃ恋愛映画観たりぃ夜景を観たりぃ……あとねぇ」

ニコニコしながら悠遠が答えた。


人はそれをデートと呼ぶ。


 獅子はまるでホラー映画のあらすじでも聞いているような表情だ。


「さ、行こ!獅子くん!」

悠遠は腕にすがりつき、ずるずると獅子を引っ張っていく。

「い、いや俺は修行が……」

(イヤだぁ!行きたくないぃ!)


「いってらっしゃいマシ~」

「お幸せに~」

マナは両手を振りながら満面の笑みで見送った。裏切りモノォ!とでも言いたそうな形相の獅子は商店街へと消えていったのであった。


(男の私、あんなのに付きまとわれるなんて。存外、女の子の姿のままで良かったのかも)

マナはしみじみと想った。


「ふぅーなんだかスッキリしたなぁ」

マナはこれから獅子はどうなってしまうんだろうとワクワクしながら家の玄関の戸を開いた。


 「あらあらマナちゃんご機嫌良さそうね~」

ニコニコ顔の紫月ママが玄関エントランスでマナの帰りを待っていた。


「ただいま、おかあさ……じゃなくてママ」

ママと言いなさいと強要されているマナ。


「朝ご飯出来てるわよ~って獅子ちゃんは?」

紫月ママがキョロキョロ見回しマナに尋ねた。


「獅子はね……大人の階段、上りに行っちゃった……」

マナは瞳を瞑りしみじみと答えた。


「ふ~ん。そうなんだ~」

よく解ってなさそうな紫月ママ。


「あっそうだ!マナちゃん、ご飯食べ終わったら~ママの部屋にきてね~」

「えっ何で?」

マナが尋ねると、紫月ママは、ウフフフないしょ~と言って二階にある自分の部屋へと行ってしまった。


(うう……何かイヤな予感が……)

マナは嫌な予感を感じながらも先ずは朝ご飯食べようと思い居間へと入っていった。


(ウフフフ~コレをマナちゃんに……アレしたりして)


(ウフ☆ウフフフ~)


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