白いブラウスとプリーツスカート。そしてリボンネクタイ
登場人物
紫月 マナ
異世界帰りの元男の子 今は乙女
紫月 獅子
マナの真の姿 でも普通に存る
(今日から私の……)
(高校生活が始まるんだ……!)
10連休のゴールデンウイークも終わり、早朝の商店街はテンション低めな会社員や学生達がせわしなく歩いている。静かだった連休中とは違い、自動車の走る音も聞こえる。
二人並んで仲良く登校する高校生の男女。
やたらと逞しい男の子が小柄な可愛い女の子に話しかける。
「学校ではオニイチャン、って呼ぶってばよ?」
女の子は答える
「ヤダよ。気持ち悪い」
兄妹の様だが仲が良いのか悪いのかよく解らない。
時はちょっとさかのぼり、朝の7時。
紫月家の1階。玄関を入って広めのホールの正面の引き戸の部屋。6畳程の和室。元は物置代わりの部屋であったが、この連休中に綺麗に片付けられ、今はマナの部屋になっている。
マナの部屋。古い和鏡台に向かって座る小柄な乙女。碧色の綺麗な長い髪を何度もいじったり、緋い瞳をパチパチさせながら鏡と睨めっこしている。
マナの後ろ姿は白い長袖スクールブラウス。赤と黒を基調とした、ひざ上丈のプリーツスカート。校章の刺繍された紺色のハイソックス。どうやら高校に初登校するための準備をしているようだ。
まだ、物が少ないこの部屋には机、ベッド、鏡台、タンスしか置かれていない。飾り物も無い質素な部屋である。しかし、机の上には写真立てに写真が一枚飾られていた。
マナは緊張していた。女の子になって何年も経って居るし、女の子の装いだって今となっては当たり前の事である。
しかし改めて女の子として学校に通うなんて夢にも思っていなかった事なので非常に緊張しているのだった。
「上手くやれるかな…女の子として学校生活……」
「変なヤツだと思われないように……」
(あっ寝ぐせがまだちょっと残ってるような……)
鏡台と睨めっこを続けるマナ。
不意にガララッ!とマナ部屋の戸が開いた。
「おはよう!マナ!」
白い歯を見せて爽やかに笑う逞しい高校生、獅子である。相変わらず両肩に羽織った制服の中はタンクトップである。
「…ノックしてって何度も言ってるでしょ」
マナは振り向かず、鏡台を睨んだまま冷たく言った。
「はっはっはっ!悪い悪い」
(あっブラが透けて……ピンクかぁ)
獅子は頭を掻きながら悪びれずに謝る。なんかいやらし事考えながら。
「おっこれが制服かぁ」
獅子はベッドの上に置いてある制服の上着を見て言った。
「でもこの制服、ちょっと違うような……」
スカートと統一感のある黒に近い赤色のブレザーの上着だった。胸と左肩に校章が付いている。
「この制服はお母さんのお下がりだから」
「今のデザインとは少し違うのかもよ?」
マナが髪をいじりながら答えた。
「ふーんそうなのかぁ」
「てかお袋も同じ高校通ってたんだな…ん?」
獅子は机の上に置かれた写真に気づいた。
「なんだこの奇抜なカッコの女の子達の写真」
その写真には私服姿のマナと……
金髪で耳の長い女の子、魔法使いみたいなローブと帽子の女の子、修道女みたいな装いの女の子が並んで写っている。みんな満面の笑みだ。
「ああ、その娘達はね」
「この連休中に知り合ったんだ」
とマナが振り返り笑顔でに答えた。どうやら異世界の仲間では無いようだが。
マナは獅子に知り合った経緯をさらっとだけ話した。鏡を見て髪をいじりながら。
「ふーん、そんな事が」
「もう友達ができたのかぁ良かったな!」
獅子も笑顔で言った。
「でも連絡先も聞かなかったし、またあえるかどうか…」
「会えるさ!きっとな!」
不安げに話すマナに獅子が笑顔で答えた。
「ふたりともぉ~朝ご飯で~きた~わよぉ~」
間延びした叫び声が聞こえてきた。紫月ママの呼ぶ声である。
「おーす!今行くぜー」
「マナも早く来いよなー!」
そう言って獅子は居間へ向かって去っていった。
「ふう、しょうがない。私もいこ……」
いまいち決まらないような気がする髪型の、鏡の中の自分に背を向ける。机の上の写真に目がいく。
(この10日間、色々な事があったなぁ)
机の上に手を置き、目を閉じて物思いにふけるマナ。
(あんな事やこんな事……ああ、あんな事も)
(ふふっ)
マナは微笑みながらゴールデンウイーク初日の事から思い返すのだった………
もやもやもや~ん
と昭和のアニメの回想シーンのようにマナの連休の物語が次から始まる……
☆次章のお品書き☆
・新たなる男の娘登場?
・紫月ママの暗躍
・エルフ耳の娘とその仲間達
・マナを狙う暗殺者!?
・白峰 尚輝の華麗なる1日
・武人招来
等を予定しております
皆様よろしくお願いいたします☆




