第七章 真美の過去
さて!今回は、真美の過去が明らかになります。
真美は、顔を上げると言った。
「ねえ、わたしとね、この機関車たちの思い出があるんだけど、きいてくれる?」
わたしたちは、だまってうなずく。真美が話し始めた内容は、こんな感じだった。
わたし―真美の父親、怜音は、大の鉄道ファンだった。23歳の時、撮影旅行で訪れた中国、芭石鉄道で、怜音は、一人の女性とまみえた。それが当時、芭石鉄道の整備士をしていた真美の母親、舜李だった。
やがて二人は結婚し、娘の真美も産まれた。しかし、そんな生活も、長くは続かなかった。舜李が、工場内での一時停止を怠った機関車にはねられて、亡くなったのだ。
怜音は、一人娘の真美、舜李との思い出の品。そして、舜李をはねたことで廃車になった機関車とともに、日本に帰ってきたのだった。
故郷に帰った怜音は、父のやっていた運送会社を継ぎ、その事務所の一角に〔SⅬ展示館〕を建設、父が集めた2両の機関車、自分が中国から持ってきた機関車を収めたのだった。
「・・・・その時、わたしは小学5年生だった。それから一年間、日本の中国語学校で勉強して、中学は、普通の公立にしたの。」
そこまで一気に話すと、真美は何かを吹っ切ったような顔でほほ笑んだ。
「じゃあ、ちょっとうちのお父さんのとこに行こう。話があるんだって。」
真美のお父さんは、案外気さくで、話しやすい人だった。
「はじめまして、真美の父親の怜音です。沼尻鉄道保存会のみなさんですね?話は真美から聞いています。ゆっくりしていってください。」
真美のお父さんは、わたしたちが座ると同時に、元気な声でそう言った。
「あ、どうも、はじめまして。國分大和です。」
「はじめまして。木地小屋栞奈です。」
「こんにちは、野口翔悟です。」
みんながとりあえず自己紹介をする。それを見てから、真美のお父さんが、話を切り出した。
「みなさん、SL展示館は見てきましたか?」
「はい、見てきました。すばらしい保存状態ですね。」
わたしが代表して答える。
「実はですね、そのSLたちのことなんですよ。話というのは。」
「はあ、蒸気機関車のことで・・・。」
「当社で所有している蒸気機関車をあなた方に譲渡したいと思っているのですよ。」
『え!?ほんとですか!?』
みんなの声がハモる。真美のお父さんは、さらに続けた。
「車両の譲渡関連の手続きや輸送もこちらで行います。あと、社員のなかに、そちらの会に入会したいというものがいるんですが。いいでしょうか?」
マ、マジっすか・・・。真美のお父さん、太っ腹。
「はい、安全面からも大人の方がいたほうがいいです。
おねがいできますか?」
メンバーがまた、増えた。しかも4人も。
いぃやぁったぁーーーーー!!
大和「大和とぉ!」
真美「真美の~!」
大和・真美『鉄道ラジオ~!』
―この番組は、白木城運送、野口自工、國分電器店、沼尻鉄道保存会、猪苗代町の提供で、お送りいたします。―
大和「さぁ、始まりました。毎度おなじみメインパーソナリティーの國分大和です!」
真美「同じく、白木城真美でっす!」
バーン!「作者が入ってくる。」
作者「ぜぇぜぇ・・・・・・まったく、大和長官を追っかけたら、体力消耗した。水くれない?」
大和、自分の顔を指さす。
作者「違う違う。戦艦『大和』の艦魂さん。」
真美「なんかあったんですか?」
作者「いや・・・・ちょっとね。」
大和「体力がほぼ限界の作者は置いといて、わたしたちだけで進めようか。」
真美「それがベスト。」
大和「今回は、『磐越西線』について語ろうと思います!」
真美「磐越西線というと、わたしたちのフィールドじゃないですか!」
大和「磐越西線は、福島県中央の経済都市『郡山』から白虎隊で有名な『会津若松』、蔵の街『喜多方』などを通って、新潟県の『新津』に至る路線です!」
真美「最近では、若松と新津の間を走る「SLばんえつ物語」でも有名だね。C57180の勇姿は、ほんとうに被写体として最適!」
大和「でも、開業時にはいろいろなことでもめたんだよね・・・・・・・」
作者「そうだよ。始発駅の場所で郡山と福島と須賀川と白河と本宮と二本松が取り合ったもん。」
真美「結局それを制した郡山は、今となっては東北有数の経済都市になったね!」
大和「さらに、最初は喜多方ではなく、会津坂下のほうを通って新潟方面に向かう予定で、途中までは、今の只見線と同じようなルートの予定だったそうです。」
真美「喜多方市民はすっごい激怒して、誘致運動を始めたんだよ。」
大和「なんと、当時計画を進めていた『岩越鉄道株式会社』(岩代と越後を結ぶという意味)の株を市民総出で買って、有力株主になってルートを変えさせちゃったんだよ!喜多方市民…すごい!」
真美「そして、喜多方から先は、山や川が多く、トンネルや鉄橋の材料のレンガを作る工場が喜多方にできました。だから、今も喜多方にはレンガ造りの蔵が多いそうです!」
大和「そろそろ尺が足りなくなってきました。それではこの辺で」
大和・真美『さようなら~!』