第五章 保存計画 その1
さぁ、いよいよ男子中学生キャラ初登場です!お楽しみに!
週の初めの月曜日、わたしは学校について、教室の自分の机の前に座ると、新しいノートを1冊出した。
その表紙に、《沼尻鉄道復活計画》と書き込んだ時だった。
「國分、おはよう、なに、これ?」
「なによ、翔悟、悪い?」
声をかけてきたのは、クラスメートの野口翔悟だ。わたしと同じ吹奏楽部に入っていて、演奏するたびに揺れながらアルトサックスを吹いている。
うらやましくなるくらいのイケメン。
私は、この前結成した保存会のことを話した。ただ、一つだけ、問題があるんだよねぇ。
「だけどねー、機関車のエンジンとかを整備する技術を持ってるのが、いないんだよねぇ。」
大きなため息をつく。
「だったら、うちに持ち込めばいいんじゃねぇ?」
へ?イマナントイイマシタカ?
「うちは、自工店だから、持ち込んでもらえば、整備できるよ。何ならその保存会にも入るよ。」
やぁったーーーー!整備場所&会員確保!
「ありがとう!じゃあ、部活が終わったら、亀が城まで来てくれない?相談するから。」
「うん、いいよ。」
それからの一日は、わたしの人生史上最高に調子が良かった。苦手な連立方程式がスラスラ解ける。数学担当の酒井先生が目を見張っていた。部活では、なかなか吹けなかったスタッカートが上手にふける。
「大和ちゃん、一体どうしたの?」
顧問の堀井先生が驚いている。なんか今日は絶好調だ。
今日は、早めに部活が終わった。翔悟と一緒に学校を出て、亀が城跡に向かう。
亀が城跡は、街の中にある会津藩の出城の跡だ。戊辰戦争で陥落して、今は石垣だけが残っている。そこが、集合場所。
カンカンと真美には、LINEでこのことを伝えといた。
陸上部も、今日は早めに終わったらしくて、カンカンは先に来ていた。その横には、真美もいる。
「遅くなってごめーん。全部こいつのせいだから。」
翔悟を指さす。
「ちょ、ちょっと待てよおまえ!それがついてきてやったものに対する言葉か!荷物も持ってやったのに!」
翔悟がわめいているけど気にしないことにする。
「じゃあ、相談しようか。機関車の整備は、たぶん心配ないと思う。と、いうわけで、翔悟、説明して。」
「OK,まず、おれの家は、自工屋なんだ。で、うちには、いろんな職人技を持った人たちがいる。エンジンを直すプロ、変速機を直すプロ、ブレーキ装置のプロ・・・。修理するのはディーゼル機関車なんだろ?さっき電話したら、うちはみーんな、『トラックみたいなものだべ?だったら大丈夫だ。』っていうからさ。どお?」
カンカンが口を挟む。
「ちょっと待って、あんたの家ってそんなに広いの?」
「おう、うちは昔はダンプとかも扱ってたからな、機関車1両と客車2両くらいはおけるスペースはあるんだ。」
カンカンがまた、口を挟む。
「あと、あんたの家ってどこにあるの?」
「猪苗代の・・・市街地。」
翔悟の答えを聞いたカンカンがため息をつく。
「あんたねぇ、機関車って重さが12トンもあるのよ。どうやって運ぶの?」
「・・・・・・。」
翔悟が黙り込む。
「町に補助金を申請したけど、断られたしねぇ。」
わたしのため息。
「あっ」
真美が声を上げた。
「どうしたの?」
わたしが声をかけると
「ううん、なんでもないの。それより、そろそろ解散しない?暗くなってきたし。」
たしかに、夕日はもう、西の方に沈みかけている。
カンカンは先に帰って、翔悟は真美と話してる。
「じゃあね。」
わたしはそう言って笑うと、亀が城から出て、夕暮れの街を歩きはじめた。
大和「大和とぉ!」
真美「真美の~!」
大和・真美『鉄道ラジオ~!』
♪汽車の窓から ハンケチ振れば~
―本番組は、野口自工、白木城運送、國分電器店、沼尻鉄道保存会の提供により、お送りします。―
大和「ねぇ、なんか今日は↑(こんなの)がついてるね。」
真美「わたしたちの番組初のスポンサーです!」
パチパチパチ(スタッフたちの拍手)
大和「そういえばさ、なんか目の前にマドレーヌが入った箱が置いてあるんだけど、中身食べていいかな?」
真美「いいんじゃない?いっしょに食べようか?」
―数十分後―
バーン!(スタジオの扉が開く)
作者「あ!!それ僕のぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
大和・真美『あ』
大和「これ、作者さんのだったんですか?」
作者「そうだよ。楽しみにしてたのに」
大和「意気消沈中の作者は放っておいて、いつもの話題に戻りましょう。今回は、リスナーの皆さんから質問の手紙が来ています。」
真美「福島県の春峰あさひさんからのお手紙です。『二人が復活させようとしているDC121のナンバーの意味を教えてください。』だそうです。」
大和「春峰さん、お手紙ありがとうございます!はい、この「DC121」の意味は、まず、Dが『ディーゼル』の意味です。その次のCは、『動輪が三対ある(ABCのC)』ですね。」
真美「12は形式名で、車両の重さが十二トンだから12です。その中でも一番目に作られたから1なんですね。」
大和「春峰さん、大丈夫でしたでしょうか?それでは、今回はここらへんで」
大和・真美『また次回!お会いしましょう!』