第二十六章 転車台でも作りますか!
りんてつフェスの疲れも取れたころ。猪苗代町の小檜山鉄工所さんの工場にて・・・・・・・
「さて、今日は転車台の組み立てだよね!」
真美が工場内に積まれた資材の山を見てうれしそうに言った。
紺色の地に白木城運送の社名が刺繍された作業服を着ている。
鉄工所で作ってもらったのは、鋼製の板六枚、筋交いになるアングル材十二本、その他もろもろ。だ。
「これを、どうやって組み立てるの?」
カンカンが首をひねる。
「リベットと溶接だな。可動部分はボルト締め」
「あとはカシメも使うぞ」
小檜山鉄工所の社長さんでもある小檜山嘉教さんが言った。
「さて、今日は忙しくなるな。」
小檜山さんが後ろに控えている職員さんたちを見て言う。
「さて、今日のうちに桁までは終わしたいな」
「さて、始めますか。」
翔悟つぶやいた。
暖房が効かない工場の中。作業が始まる。
バチバチ、バチバチ・・・・・・・・・・・・・
鉄製のおっきな火鉢の中で赤々と燃えているのは石炭。
「よっこいしょ・・・・・・・・っと」
ガラ・・・・・・・
わたしが大きいトングを使って、石炭の間にリベットをうずめる。
リベットっていうのは、鉄製の鋲のこと。普通のは長さ三センチ、太さ五ミリくらいだけど、今回は、モノがモノだけに太さ三センチ、長さ十五センチもあるのを使っている。
「カンカン、はい!」
ガランガラン・・・・・
リベットが真っ赤に焼けたら、火ばさみで挟んで取り出し、近くの樋の上を転がして、ターンテーブル主桁の組み立て現場に送る。
「オーライ!オーライ!」
組み立て現場では、溶接用に革で作られたエプロンと手袋、ヘルメット、防護面で完全武装したカンカンがリベットを火ばさみでつまみあげて、上向きに鋼板の穴に差し込んだ。
「よいしょ!翔悟、いいよ!」
すかさず、同じように防備した真美が抑え金具で下から上にギュッとリベットを押し付けた。
「はいよ!」
翔悟が上から、専用の電動ハンマーを押し付ける。
ガガガガガガ!
すさまじい音と火花を立てて、リベットが打ち込まれた。
もう一つは、ここの工場長の嘉教さんと、その息子の嘉康さん以下工場の方が組み立てをしている。
こっちは、あっという間だ。もうすでに、形ができてきている。
近くには、直径三十センチくらいの鉄丸棒が無造作に置いてある。これは、あとで旋盤で削り出して車輪にするヤツね。
午後四時・・・・・・・・・・・・
「今日はここまでだね。」
真美が組みあがってきた桁を見ながら言う。
「そうね。そろそろ帰りましょう」
「だな。帰っぺ」
カンカンと翔悟がそれぞれ返す。
外に出ると、少し暗くなりかけた空に、白い月が出ている。明日はきっと晴れだ。
「じゃあね!」
真美がお迎えの車に乗って帰っていく。
「また明日」
カンカンも自転車に乗って帰っていった。
「俺はもう少しここに残るぜ」
翔悟はそう言って工場内に入っていく。
「わかった。じゃあね。」
わたしが言うと、翔悟は軽く右手を上げた。
「おう、じゃあな」
わたしは家に帰るため、近くのバス停に向かった。
今回の鉄道ラジオはお休みです!
楽しみにしていた皆さん、ごめんなさい。