第十九章 眠りを覚ます
いったん猪苗代に帰ったわたしたちは、工場内に置いてある機関車たちの眠りを覚ます作業にかかった。
「初めまして、郡山北工業高校の川瀬遥香です。よろしくお願いします」
新しい仲間も入ってだんだんにぎやかになっていく。しかも・・・・・・・・
キュイィィィィィィィィィィィィィン!
遥香さんが旋盤のハンドルを握ると、スイッチを入れた。
「この人、すげえな。」
遥香さんは、翔悟が舌を巻くほどの旋盤の達人だった。
機関車たちの眠りを覚ますのは並大抵のことじゃない。まずは、DC121から取り掛かることにした。
DC12を徹底的に分解して、細部を調べる。製造元の協三工業からもらってきた設計図と照らし合わせながらの作業だ。
エンジンは、野口自工の熟練技術者によって、たちどころによみがえった。
「行くよ!」
マスクと作業服、革手袋で完全武装した真美がスイッチを入れた。
ギュイィィィィィィィン!
車体外板は、グラインダーで塗装とサビを落とし、素肌の状況を確認する。
「翔悟!」
手招きして呼ぶと、修理道具を持った翔悟が急いでやってくる。
「ここ、穴空いてる。」
「この大きさは、パテ盛で何とかできるね。」
翔悟が穴が開いてる部分を金属用パテで埋める。
へぇ~、そんな風にやるんだ。知らなかったな。
やすり掛けで平滑を出した後、塗装して仕上げた。
前後の端梁は、静態保存時には黒塗りだったけど、現役時代の写真に合わせて、黒と黄色のゼブラ柄にする。
シューーーーーーーーッ
「まずは、黒の下塗り・・・・・・・・・・・ッと」
カンカンが専用の大きなエアブラシで黒の塗料を吹き付けていく。
「マスキング、マスキングやり放題♪」
真美がビニールとマスキングテープで黒のまま残すところを覆う。
「最後に!」
シューーーーーーーーッ
わたしがエアブラシで黄色を吹いていく。
「行くよ!」
ぱらっ
遥香さんがマスキングを外すと、そこには明瞭なゼブラ塗装が浮かび上がった。!
次に、ナンバープレート行くよ!
ナンバープレートは、盗難防止のためにも、作り直すことにした。
まず、現物をもとに、木型を作る。
「東京都大田区の・・・・・・・・・」
その木型を専門の業者に送って鋳出してもらう。
一か月後・・・・・・・・・・・
プレートができた。
鋳物のままの状態で送られてきたプレートを研削盤にかける。
キュイィィィィィィィィィィィィィン!
しばらくかけると、表面がツルツツピカピカなナンバープレートになった。
「この写真から推測するに・・・・・・・・・・梅小路のC56164のナンバー地色に近い赤だね・・・・・・・・・・・・」
写真を確認しながら塗料を混ぜ混ぜ。時々溶剤を足して、さらに混ぜ混ぜ。
「こんなもんかなっ。」
プレートの文字と縁取り以外の場所に、出来上がった塗料を塗る。
「あとはしばらく放置するだけっ!」
乾くまでおやつタ~イム!翔悟の家の台所を少し借りて、パンケーキ(ホットケーキじゃないからね。ここ重要!)を作ってみんなで食べる。
塗料が乾くのを確認して、ボール盤でプレートの四隅に穴をあけた。
これを2枚作る。
芭石一号も、大阪の「楠ボイラ」さんでボイラーを作ってもらってるから、それまでに他の部分を直さないとね。
ほんとに忙しくなってくるね~!
真美「真美と!」
大和「大和と!」
栞奈「栞奈の!」
三人『鉄道ラジオ番外編、鉄道クッキング~!!』
栞奈「って、なによこれ!」
真美「文字通り、わたしたちが鉄道に関連した料理を作っていくコーナーです!」
大和「本日は、真美のお母さん直伝の『豚のスネ肉機関車風』を作っていきたいと思います。」
真美「材料は、豚のスネ肉丸々一本、水適量、塩、コショウは好きなだけです」
栞奈「説明雑っ!」
大和「まずは、豚のスネ肉をSLの火室に放り込んで、通風機を作動させて、三十分待ちます。」
栞奈「何やってんのよ!」
真美「大丈夫、ちゃんと運用から外れてる機関車だから。」
栞奈「そういう問題じゃなくて・・・・・・・・・!」
三十分後・・・・・・
真美「さて、香ばしい煙の臭いと煤がついた豚肉を火室から取り出します。この時、必ず革手袋をはめるようにしましょう。」
大和「そしたら、豚肉についた煤を流水で洗い流しましょう。」
真美「包丁でこするようにするといいよ!」
栞奈(寸胴鍋を用意する。)
大和「カンカン、サンキュっ。豚肉を一口大に切り分けて、じっくり弱火で煮ます。最後に、塩コショウで味付けをしたら・・・・・・・・・」
パラパラパラッ
三人「『豚のスネ肉機関車風』完成~!」
真美「では、さっそく試食しましょう。」
大和「豚肉のおいしさと煙の香ばしさがスープに出てて、美味し~!」
栞奈「これは、いい味ね。」
真美「でしょ?いっぱい食べてね。」
大和「皆さん、いかがだったでしょうか?また次回お会いしましょう。それでは皆さん」
三人『さようなら~!!』
このような料理は、実際に中国の芭石鉄道の整備士さんたちが作って食べたりするらしいです。